2-31(回想) 『名探偵うさみの事件簿 2推理目』
はぁ〜い! 私はうさみ。
見習い錬金術士ミミリのぬいぐるみよ。
見た目は、可愛い可愛いうさぎのぬいぐるみなんだけど、実は凄腕の魔法使い兼画伯。そして……なんとおぉぉ〜! 名探偵でもあるのよねん。
このご時世、ダブルワークなんて普通でしょ? 働かざる者、食うべからず〜ってね。ぬいぐるみだって例外じゃないわ。私はすでにトリプルワークしてるってわけ。ふぅ。デキるうさぎはつらいわぁ。
といっても、まだ私の絵画は売りに出したことがないのよねん。ホラ、いきなり超新星が現れたら、創作界隈のパワーバランスを崩しかねないでしょう? 私ってば、そういう配慮もできちゃうのよねん。ふふふん。
そうそう! 前回書いた本があまりに評判が良かったからミミリにもう一冊新しい本をもらったの。今回も早速表紙に似顔絵を描いてみたわ。ミミうさ探検隊とくまゴロー先生、ピロン、それにぷるぷるもね。
またまたあまりに出来が良かったから、私自身ピョンッと飛び上がって驚いたくらいよ。ゼラは恐らく腰を抜かすでしょうね。後で見せてみるわね!
……ゼラってば、私ほどじゃないけど絵の心得が少しあるみたいなのよ。この間も私が書いた絵を見て、足の長さは揃えたほうがいいかもしれないな、とか言うのよ⁉︎ まったく盲点だったわ。こういうところが侮れないのよね、ゼラは。
そう、この本の使い道なんだけどね、前回に引き続き、私なりに冒険を振り返ったものを記していくわ。記録を残すことで、冒険を振り返りやすくしたり、冒険で得た気付き、疑問点なんかも残していけたらな、と思ってね。
そ・れ・に!
ただの、メモじゃないわよん!
可愛くて知的なスーパー魔法使い、うさみさんの頭脳を活かした、冒険の記録よ?
その名も、『名探偵うさみの事件簿 2推理目』〜!
……今私の著者を読んでいるそこのキミッ! 拍手、もちろんしてるわよね?
あ、そうそう。この本を書くにあたって、私は家から持ってきたアルヒ女教師の黒縁眼鏡のスペアを着けているわ。やっぱり形から入らなきゃ締まらないってものよね。
この本を読んでくれている貴方のために、巻末に私の知的でセクシーな眼鏡姿を描いておいてあげるわね。画伯うさみの出血大サービスよん? 男性諸君には刺激が強いかもしれないわねぇ。罪深いうさぎでごめんなさいねっ。
では早速、審判の関所での冒険を振り返ってみるわ。
見た目はうさぎ、中身は乙女な名探偵うさみの推理力、とくとご覧あれ〜!
《登場人物》
◎ミミリ
見習い錬金術士だというのに、くまゴロー先生も舌を巻くほどの錬成を魅せてくれたわ。さすが私の持ち主ね。著しい成長だと思うわ。
セーラー服や体操服もとても似合っていたわね。私も思わず見惚れちゃったわん。可愛いのよねぇ。
・錬金術士ルートのクリア報酬として、スズツリー=ソウタからの引き継ぎ書ともいえる本をもらっているわ。今は魔力が足りないみたいだけど、もう少し力をつけたら真実が見えてくるんじゃないのかしら。
◎アルヒ
ピロンのお姉さん的存在だということが判明したわ。私はアルヒのお姉さん的存在だから、さしずめアルヒは次女ってところね。もちろん長女は私よん。
◎ゼラ
雷属性を使いこなせるようになっていて、とても強くなっていたわ。それになんと、くまゴロー先生の見立てによると様々な武器を扱うことができる才能を秘めているかもしれないらしいわ。くまゴロー先生を疑うわけではないけれど、本当かしら。だってミミリを見ては何かへ祈りを捧げているのよ? どう考えても変態でしょう? 困った子よ。
・錬金術士ルートのクリア報酬として、武器専用の【マジックバッグ】を貰ったわ。
・やっぱり暗くて狭いところが苦手そうなの。どうにかしてあげたいくらいなのよね。
◎ピロン
スズツリー=ソウタに作られた、審判の関所の案内人でポップアップよ。感情によってポップアップの色や字体を変えるわ。……んまぁ〜高飛車な性格してるのよ。私の妹分とはいえ、怒りを抑えられない時もあるほどよ。だってホラ、ピーッピッピ! とか笑われてごらんなさい? たちまち怒りが込み上げてくるでしょう? ……まぁ、それでいて憎めないのよね。悪い子じゃないわ(私のポジションを狙っていないという点において)。
◎スズツリー=ソウタ
アルヒとポチだけでなく、審判の関所においてもご主人様的存在だったみたい。少し明らかになった部分もあったけれど、未だ謎に包まれているわね。
・友人だと思っていた人間に裏切られて人間不信になってしまった時期があるらしいわ。その頃審判の関所を作ったみたいね。
・実力のある錬金術士が現れるのを待っているらしいの。それに足る実力があるのかを測るための本はミミリが持っているわ。
◎雷竜
雷属性の頂点、黄金色の鱗のドラゴン。ミミリからはライちゃんって呼ばれてるわね。くまゴロー先生たちが一目置くくらいの存在らしいわ。私はただの腹黒黄猫だと思っているけど。私のポジションを虎視眈々と狙う不届者は皆等しくワルだから、そのような認識も当然の報いね。
◎ミミリの両親
魔法使いの母と騎士の父。審判の関所を初めて訪れた時はミミリがお腹にいたみたい。騎士の父はとても身体能力が高いみたいよ。
・ミミリをアルヒに託して旅に出た理由は明らかにならなかったわ。
・「審判の関所」は、実力で突破したみたいね。つまりは、アルヒがかつて言っていた、名を馳せるほどの実力者っていうことになるわね。
◎くまゴロー先生
別名、「哀愁漂う一匹狼、くま・ザ・ワイルド」よ。逞しい手足、紳士的な心配りに、清廉なお姿。全てにおいて完璧よッ! 私の憧れの人。そうそう、絵心まであるのよ? 私と肩を並べるほどの画力なの。まさに、お似合いの2人でしょ? お別れの時抱きしめあったけど、多分ぬいぐるみではないことを察したわ。でも彼が何であったって私の気持ちは変わらない。また会える日を心待ちにしているの。
◎うさみ
大トリは私! スーパー魔法使いでもあり画伯でもある名探偵のうさぎのぬいぐるみよ。……ねぇ、気づいちゃった? くまゴロー先生と私、仲良しだから紹介順が前後なのよ? わかる? 私の乙女心。いじらしいでしょう? 可愛いらしさに惚れないでよね?
《主要な用語》
◎審判の関所
私たちが住む家を囲む山陵と、まだ見ぬ世界へと繋ぐ唯一のダンジョン。スズツリー=ソウタが監修したっていうことが明らかになったわね。
卒業試験よりも、道徳の時間のほうがダンジョンのメインイベントっていう感じがしたわ。私たちが審判の関所を越えるに値する倫理観を持ち合わせているかを測られていたの。つまりは、アルヒたちに会うに足る人間かどうかってことよ? どこまで過保護なのかしら。まぁ、アルヒほどの美少女だと心配になる気持ちもわかるけどねぇ。
《これまでにわかった事柄の時系列》
※わかりやすく前回分とまとめているわよ!
・スズツリー=ソウタ200歳。アルヒを作る。
↓
・心無い者に、錬金術の本や【アンティーク・オイル】を含む錬成アイテムを盗まれる。(犯人はアルヒたちの友人だったみたいね)
↓
・スズツリー=ソウタ、家の周りの川に「大賢者の涙」の成分を付与する。
・スズツリー=ソウタ、審判の関所を作る。(おそらく大賢者の涙と同時期ではないかしら)
↓
・スズツリー=ソウタ、雷竜にアルヒたちを託し、行方不明に。(この時から現在までに100年経過しているわ)
↓
・スズツリー=ソウタを探すため、アルヒとポチはしばしの別れ。(しばしと言っても100年間よ?)
↓
・ミミリの両親、この地にやってくる。この時点でミミリは母親のお腹の中にいたわ。
↓
・幼いミミリをアルヒに託し、ミミリの両親が旅に出る。
・うさみの生命活動開始‼︎(拍手〜!)
↓
・ミミリの両親、ゼラの窮地を救い、いくつかのアイテムを託して頼み事をする。
↓
・ミミリ13歳、ゼラ15歳の時、ゼラがこの地へやってくる。
↓
・ポチとアルヒの再会。
↓
・ミミうさ探検隊、プレ冒険をする。
↓
・旅立ち。
↓
・審判の関所クリア!←今ココ!
どう? 前回より明らかになってきたわね。でも、まだまだわからないことだらけだわ。
《主要なアイテム》
◎マジックバッグ(武器専用)
錬金術士ルートのクリア報酬として、ゼラが貰った錬成アイテムよ。かなりの変わり者みたい。仮契約時にゼラの血を求めてきたわ。口も悪いみたいよ。
ゼラは仮契約後、早速からくりパペットのドロップアイテムとして手に入れた斧2本をしまっていたわ。しまうのもたいへんだったみたいだけど。さすがにまた血は要求されなかったみたいだけど、ブツブツケンカしていたわ。……ちなみに、マジックバッグの声はゼラにしか聞こえないから、はたから見てるとただの独り言なのよ。そういった意味でもゼラがかなり心配になるアイテムよ。
◎雷様のブレスレット
ミミリの右手首に着けられた華奢な黄金色のブレスレット。雷竜からのプレゼントってこともあってかなりのチートアイテムみたい。けど、そうは上手くいかないみたいで、使用後真っ赤な猫のチャームが透明になってしまっていたそうよ。おそらく一定期間休ませないと再び使用できないのでしょうね。時間が経った今は、猫の足元が再び赤く染まってきたそうよ。
◎蒼の刃広斧
卒業試験のボスモンスター、からくりパペットが持っていた斧の1つよ。振るうと地面から背の高い霜柱を出すことができるみたい。雷属性のみ習得しているゼラが扱えるかどうかは不明だわ。ただ、柄を握ることはできたみたい。雷電石は触るとたちまち感電するだけに、アイテムって不思議だなぁと思わされるわ。
◎紅の刃広斧
からくりパペットが持っていたもう1つの斧。からくりパペットは紅柱という火柱をあげて闘っていたわ。今思い返しても、とても強い相手だったわね。それに敵ながら見事だったわ。尊敬してしまうほどよ。ゼラがこの斧を扱えるのかはこちらも不明だけど、使うのだとしたら、からくりパペットの闘志を引き継いで欲しいと強く願うわ。それが、からくりパペットの生命を奪った、私たちの最善の弔いでもあると思うの。
《まとめ》
審判の関所での出来事も経て、少しずつではあるけれど謎が明らかになってきた部分があったわね。
けれどその大部分は未だ闇の中。この謎を解き明かすべく、私たちは冒険を続けていくわ。もちろん、冒険を楽しみながらね?
まぁ、この、名探偵うさみさんがいれば難事件も迷宮入りさせずにバッチリ解決よん!うさみさんに、任せなさ〜い!
……ここだけの話。
くまゴロー先生とのお別れは、実はちょっぴり悲しかったわ。危なく泣いてしまうかと思ったもの。でも乙女の意地で涙は見せないよう頑張ったの。だって、憧れの人の記憶に残る私の最後の顔は、可愛らしい笑顔であってほしいじゃない?
私は、絶対に再び審判の関所を訪れるわ。くまゴロー先生はもちろんのこと、ピロンやぷるぷるにだって会いたいもの。
だから私、頑張るの。
もちろん、全力で自分の冒険を楽しみながらね?
……待っててね、アルヒ。私はいつだって貴方を想っているわ。そして、ポチも、もちろんアユムもね。
ま、まぁ、アユムは私のポジションを悪意なく狙う油断ならない仔猫だけれど、教育次第で目上の者を立てられる猫に成長するかもしれないしねん。……なぁんてね、冗談よ。アユムは可愛い猫よ。……悔しくなんて、ないんだからねっ!
ねぇ、アルヒ?
私は、審判の関所でたくさんのことを学んだわ。それはね、ミミリたちを守るには、もっともっと、力をつけなければならないってこと。
錬成アイテム、【生命のオーブ】を軸に生きるぬいぐるみの私にどこまでできるかわからないけれど。なんだってやってやるわ!
……だってホラ、このご時世でしょ?
ぬいぐるみだって、トリプルワークは当たり前なのよ。努力を重ねて、ええと、お仕事4つってなんて言うのかしら。とにかく、4ワークくらいになったとしても、へっちゃらだって言わないと。働かざる者食うべからずだからねん。
だからアルヒ、安心してねっ!
私はミミリたちも守ってみせるし、もちろん私自身も守ってみせるのよん。
だって私は可愛い可愛いうさぎのぬいぐるみであり、魔法使いであり、画伯であり、名探偵であり!
――そして何より、ミミリのぬいぐるみであり。大切な貴方の家族なのだから。
この本が、私たちの冒険の謎を解く、一助となることを願って。
ミミリのぬいぐるみ うさみ
本話をもって、第2章が完結となります。
皆さま、ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました。
第2章完結に伴い、一度完結設定をさせていただき、第3章執筆のためしばらくお休みをいただきます。
第3章は、いよいよ、ミミリたちがまだ見ぬ地で冒険をスタートさせます。そして、サブタイトル回収章でもあります。
第3章再開までしばらくお時間をちょうだいいたしますが、変わらぬご支援のほど、よろしくお願いいたします。
第3章の開始は、5月中旬を目標としています。
よろしくお願いいたします。
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最後までお読みくださりありがとうございました。
第2章お疲れ様!
第3章楽しみだよ!
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うさみち




