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7-11 抜いてもキャー! 抜かれてもキャー! マンドラゴラの収穫


 ーーポロン!

『次のステージこそ、光輝くあの方向です。


 どうぞ第3ステージへ向かってください』


「行こう!」

「ええ」 「ああ」


 まばゆい光のトンネルを抜けた先は、晴れた空に照らされた畑だった。それも畝ごとに、青々とした葉が鈴なりになっている。


「えっと、ポロンちゃん。私、第3ステージは戦闘かと思っていたんだけど……。大根掘ってぶり大根とか作ればいいのかな」

「えーっ、おでんがいいわぁ。ゼラもそうよね?」

「お、俺は、ぶ……」


 ーーポロン!

 ゼラの言葉はポロンによってかき消された。


『貴方のパーティーは第3ステージ到着により『マンドラゴラの悲鳴畑』へ転移されました。全モンスター討伐終了まで、この空間から抜け出すことはできません。


 至急、下記概要を確認してください。


 《概要》

 ▶︎マンドラゴラはB級モンスターです。気を抜かずに全て抜いてください。マンドラゴラは抜かれることにより生命活動を停止します。


 《ポロンのワンポイントアドバイス》

 ▶︎抜いて力尽きるマンドラゴラもいれば、力強い根で攻撃してくるマンドラゴラもいます。中には何か持っているものも……。


 《モンスター数》

 ▶︎悲鳴系モンスター マンドラゴラ 50体

 討伐難易度は高めです。特に悲鳴は三半規管をも刺激します。油断せずに闘いましょう』



「まず、俺が抜くよ」

「待って、耳栓しなきゃ! 脱脂綿に【ミール液】を染み込ませてっと。はい、ゼラくん。そして私も。うさみはどうする?」

「湿った綿でしょおおおお! つけない代わりに、私は耳をぱたんするわ。ぱたんとね!」


「なんで誇らしげなんだよ……(小声)」


「何よゼラ。うさぎが羨ましいわけぇ?」

「羨ましさの基準がわからねぇ! てか、ぱたーんしてても俺の小声聞こえんじゃん。大丈夫なのか?」

「大丈夫、耳の上から手でも押さえておくわ」

「抜く気ねえじゃん……。ま、いっか!」


「いくぞおおおー! ミミリ、うさみ、耳塞げ〜ッ」


 ゼラは畝を跨いで力一杯引き抜いて……


「ギャアアアアアアアアアアアアアア」


 ……するとあたり一面マンドラゴラの叫び声で満ち溢れる。


 ーーグラグラグラグラ……。


 地鳴りまで起き始めた。まだ抜いていない、地中のマンドラゴラが悲鳴に呼応し連鎖して叫び狂っているようだ。


「うう。耳、痛いね。めまいがしてクラクラする。だけど、私も抜いてみるっ!」

「待てミミリ! 攻撃してくるやつもいるんだろ? 俺が全部抜くから、サポート頼むよ」

「ゼラくんにばっかり、危ないことさせられないよ。よーしっ! うーーーーーーんしょっ!」


「ギャアアアアアア、……はい」

「はい? え、あ、ありがとう。

 ゼラくん、私100エニーもらった」

「は?」


 100エニー渡したマンドラゴラは、ゆっくり眠るかのように生命活動を停止した。


『惚れられたんでしょうね。ミミリ。貴方はやはりモンスターと仲良くなれる、テイマーの才能があるようです』


「マンドラゴラになんか負けられねぇ! 俺も、抜くぞぉぉ!」

「ギャアアアアアア……はい」

 ーーシュポン! シャカシャカシャカシャカ! シャアアアアア!

 ゼラはマンドラゴラが開ける前によく振ったシャンパンで水浸しになった。


「え?」

『間違いありません。ゼラはからかわれていますね。それはマンドラゴラのびっくりパーティー用シャンパンですよ。ポッポッポッ』

「笑うなよポロン」

「ひゃーっはっはっは」

「うさみまで笑うな! ってか仕事しろ!」

『笑ってしまいましたが案外いいものなんですよ。マンドラゴラの祝福は万病に効くと言われていますから』


 ーー万病に効く? お薬の錬成に使えるかも!


「よーし! 抜くぞおおおお!」

「だからミミリ、俺が抜くからっ」


「えーいっ!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアア」

「きゃああああ!」

「ミミリッ!」


 ーーぱたーんぺたーんぱたーんぺたーんなぜなぜ。ぐふふふふ。


「やめてっ、そんな触り方しないでええ」

「こんのっエロマンドラゴラがぁぁ! 雷刃剣(らいじんけん)!」


 ミミリにセクハラをしたマンドラゴラはゼラによって両断された。


「ミミリん、大丈夫?」

「うん、なぜなぜーって、触り方がやらしかっただけだから。なんかニタリと笑ってたのもやだったけど」


 ーープチンッ。

 ゼラの堪忍袋の緒が切れた。


「コノヤローやってやろうじゃねえの!」

「ミミリ、うさみ、マジで手出し無用だから。俺、マジキレてるから」

「は、はい。ゼラくん、怒ってるね」

「しょうがないのよ、思春期だから」


「思春期言うなあぁぁぁ!」


 ゼラとマンドラゴラの攻防は、夕方まで続いた。

 マンドラゴラは、すぐに力尽きるもの、祝福を与えようとするもの、お金を奪おうとするもの、ナタを隠し持っていて足を切り落とそうとするものなど、様々だった。

 あの場面でゼラがキレていなかったら、ミミリはナタを避けられず大怪我していたかもしれない。ゼラの瞬発力があるからこそ、大事に至らなかったのだ。


「ふう、全部、抜いたぜ」


 ゼラは、

 •マンドラゴラ

 •マンドラゴラのシャンパン

 •マンドラゴラのナタ

 •マンドラゴラの危険な根

 を手に入れた。


『おめでとうございます。


 第3ステージ、無事にクリアしましたね。


 次のステージにあたってどうするか決めてください。


 ▶︎休みますか?


  休みませんか?』


「それはもちろん……」


 ゼラが答えるまでもなく、第3ステージはいい匂いが漂っていた。


「ゼラくーん。ぶりマンドラゴラとマンドラゴラおでんできたよー!」


「ポロン……言ってもいいか?」

『なんでしょうか』

「俺、今までマンドラゴラと闘ってたじゃん。至近距離でいっぱいさ……」

『ええ、いちばん活躍されてましたよ』

「さすがにマンドラゴラは……食欲わかねぇ」


「こーら! ゼラ! 好き嫌いしないでこっちきなさーい」

「はい……」


 ーーなんでミミリもうさみも平気なんだ?


『ゼラ、心中お察しします』

「ありがとう」


 ーーポップアップに相談して、励まされる俺って一体……。



 ゼラの思考は置いておいて、マンドラゴラの料理は相当おいしかったらしい。ただ1点だけ、見た目を除けば。まるで年老いたおじいさんのような顔つきのマンドラゴラが、厳かに眠っているように見えるのだ。


「なんか、生きたマンドラゴラをそのまま食べてる気がしちゃうねぇ」


 能天気なミミリが言うほど、それは顕著だったという。


 それもそのはず。

 マンドラゴラは、大根ではないのだからーー。






ゼラが激おこの回でした。

シリアスな展開が続いたため、ゆるふわ部分を取り入れたいなと思い書いた回になります。

気に入っていただけましたら幸いです。


このお話を気に入っていただけましたら、ブックマークとご評価☆☆☆☆☆をよろしくお願いします。


皆様の応援が、作者のパワーです!

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