7-9 『天翔る竜の雷豪』
『さぁ、みなさん準備はいいですか?
第2.5ステージに移行します。
……ロード中です。
……ロード中です。
そのまま動かずにお待ちください』
「2.5? どんなステージなんだろう」
「動かないようにーってことはまた床が抜けたりして……ううう。吐きそうだわ」
「想像で吐くなようさみ、ホラ」
ゼラはうさみの背中をトントンとさすりがなら……思い出してしまった。
ーーそうだ! 俺ッーー‼︎
そう。思い出したのだ。ミミリのパンツを、見たことを……!
ーー頼むこのままなかったことにしてくれ!
俺にはまだ、やり残したことがあるんだ!
「うさみ? ツライところは他にないか? 抱っこしてやろうか?」
やたらとうさみに甘いゼラ。
これが逆効果だということに、本人は気が付きもしない。
「何かおかしいと思ったのよね。やたらとベタ甘で。思い出したわよ! ゼーラー!」
「やっだからあれは不可抗力であって、ミミリのパンツを……。…………ハッ!」
「私の、パンツぅ〜?」
ゼラには見えた。
ミミリの背後に、轟く雷鳴を。轟く雷豪を。
ーー詰んだ。俺、詰んだわ……。
ゼラが天に祈りを捧げ目を閉じたその時、第2.5ステージへと移行した。
「わぁ、これが第2.5ステージ?」
「逆にびっくりだわ」
「(どうやら俺は生きているようだ……と目を開けると、)アザレアの工房そのものじゃないか!」
そう。そこは、見覚えしかないミミリの錬成工房だった。アザレアで建ててもらい、川下の町へ引っ越し、今は【マジックバッグ】の中にあるはずの、ミミリの工房だ。
ーーポロン!
『お待たせいたしました。
こちらが第2.5ステージです。
これから、とある本をミミリに託します。
本に載っているアイテムを作り、第3ステージで存分に活かしてください。』
「ただ、錬成すればいいだけなの?」
『はい。
品質が悪いものや、粗悪品を作れば第3ステージはクリアできず、命を落とすことになるでしょう。
この本の錬成難易度は高レベルです。
どうか、ご武運をーー。』
「わかったよ。ありがとう、ポロンちゃん」
『(ミミリ、頑張ってください……)』
ミミリの前に一冊の本がポン、と現れた。
煌めく金のような、黄のような。
雷電石に似た雰囲気の本だった。
「ええと、タイトルは……『天翔る竜の雷豪』。読んでみるね」
ミミリは本に目を通し始めた……!
『未来の錬金術師へ
まずは礼を。俺の意思を継いでここまで来てくれたんだろう? 本当にありがとう。 ここにいるっていうことは、【酸素山菜ボンベ】も作れたのかな? 上出来じゃないか。
未来の錬金術士くん、君が男なのか女の子なのかわからないけれど、この本のアイテムを作れるようになったら、君は立派な錬金術士だ。もう、『見習い』なんてことはなくなるぜ。俺が保証する。
俺は盗まれてしまった各本や、アイテムを集めたりしながら、各地を旅をしている。いろんな地を巡ったさ。中には魔法使いや、錬金術士が住みにくい土地もあったな……。本当に、色々あったよ。
けれど、俺は思うんだ。
人はそれぞれ、生い立ちも違えば、思想だって異なる。それぞれの正義が胸に刻まれているんだ。
だから完全に理解を求めるのは難しいとも言えるな。馴れ合うことが無理な場合もあってことだな。
話は逸れたけど。
どうかこの本のレシピを作って、第3、4ステージへと到達してほしい。
第4ステージのボスは強いぞ。
くまと同じくらいかな。あぁ、審判の関所のな。もしかしたら、まだ会ったことはないかもしれないな。そしたらすまん。優しいくまだぜ。教師とか向いてると俺は思うんだ。
話は何度もズレたけれど、俺が言いたいことはただ1つ。
未来の錬金術士、どうか俺……いや、俺たちに力を貸してほしい。アルヒを助けてほしいんだ。
後生だから……。
いつか会えたら、まだ君が知らないレシピを引き継いでやるよ。一緒に楽しもう、錬金術ってヤツを。
この本が、君の役に立つことを願って……。
そして。
願わくば、錬金術の知識が後世へ語り継がれることを祈って。
はじまりの錬金術士
スズツリー=ソウタ』
……だって。次のページから、レシピが載っているみたい」
「どう? ミミリ、作れそう?」
「やってみないと、わからないかも。でも、スズツリー=ソウタさんが作った【しびれ粉】が載ってる! 足りなかったレシピがやっとわかったよ」
【睡眠蝶のしびれ粉 最高品質 麻痺(大) 追加効果:対象の身体の自由をめまいや麻痺などで奪う。大量に摂取した場合深い眠りにつくことがあるが、生命を奪うには至らない】
これは雷竜を眠らせるために作ったんだが、人間が使うとこりゃ死ぬな。耐性がない限り。
間違っても使うんじゃないぞ? 俺の目算だと、おそらく雷竜でも100年は眠っているはず。100年間のうちに決着をつけて。戻るんだ俺は。アルヒの元へ!
・睡眠蝶の鱗粉 ×5
・ポイズンサハギンの毒←new!×1
・麻痺蜘蛛の成分←new!×2
・ポイズンサハギンのヒレ←new!×1
・睡眠蝶の針←new!×1/2
【天翔る竜の雷豪 電撃(大)】
これはかなり効くぞ。なんせ錬金素材アイテムがほぼアイツから獲るヤツだから。笑
アイツの一撃はハンパねぇ。俺はこれを自分で試した時失神するかと思ったからな。これは危険だ、本当に。
アッ、必要な素材として雷竜の鱗や爪があるから、俺が適当に毟っといたよ。その辺の引き出し漁ってくれ。爪も切っといてやったから一緒に入れといたぞ。ご心配なく。いつもアイツはつべこべ煩いが、寝てる間は静かだったぜ〜! ま、起きたらうるさいだろうけど、100年も経ちゃ鱗も爪も元に戻んだろ、多分。
・雷竜の鱗 ×5
・【雷電石の粉末】×3
・雷竜の爪 ×1
・ミール液 ×3
新しいレシピは2つだね」
「どう? ミミりん作れそう?」
「うん! 1つは、私が作って命名した、【ライちゃんの雷】だったよ。だからあと1つ。……多分、作れると思う」
「すごいなミミリ。もう『見習い』じゃなくなるのか」
ゼラの言葉に、ミミリは顔をぷるぷるっと震わせる。
「ううん。誰が何と言おうと、それが例え、『はじまりの錬金術士』のソウタさんだろうと。アルヒを助けるまで。パパとママに会うまで。私はずっと、見習いだよ」
ミミリは、気合を入れて練金釜へと向かい合う。
「よし! 錬成するよ! まずは換気からだね!」
ーーね? アルヒ。換気するって、約束したもんね。もう少しのところまで来たから、必ず、待ってて……!
頑なに見習いであろうとするミミリ。これはミミリの責任感の表れです。全てうまくいくまでは、一人前でない、というのがミミリの考えです(*´ω`*)頑張れ! ミミリ!
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