表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

201/210

7-8 大蛇討伐ミッション 後編

「うっ、くっ……」


 ミミリが怪我をしていた腕を抑えて苦しみ始めた。


「そう……だった。毒蛇……」


 ーーそう。ミミリには毒耐性がないのだ。


「ミミリ、解毒剤もってるよな? 早く飲むんだ」

「うん」


 ミミリは【マジックバッグ】の中から【解毒剤】を出して飲んだ。すぐに癒えるわけではないらしいが、そのうち効いてくるらしいので、とりあえずは大丈夫だろう。


 ここでミミリはポソッと言う。

「やっぱり私も、三冠王(酒乱、泣き上戸、毒舌)のデイジーさんに毒付いて欲しかったなぁ。毒耐性、欲しかったもん」 

「いや、あれはーー」


 やられたからこそ、わかる痛みがある。

 ゼラの頭の中で、ツライ()()()のことがフラッシュバックするーー。


 ーー回想ーー


「どうすんのよ。押しも弱けりゃコシも弱い、コシも弱けりゃスケコマシッて。ミミリちゃんを横取りされてもいいわけ? アンタの冒険者の等級はBでなくてHね」

「H?」

「ヘタレのHよ」

「――――――――!」


 ーー回想おわりーー


「えっちのH、じゃなかっただけマシか」

「えっ? ゼラくん、なんて言ったの?」

「……触れないでくれ……」

「えええええっ」


「さあ、アンタたち、おしゃべりはそのへんにして。倒すわよ、ヤツを」

「うん、ごめん。そうだね!」

「ああ……」


「守護雷神の庇護! とりあえず私とミミリはドームの中にいるわ。雷を帯びたドームだから、突っ込んできても数秒はダメージを与えられるでしょう」

「そうしてくれ!

 俺はーー試したいことがあるんだ!」


 ーー俺には一定程度の確信がある。

 その根拠となるのが、蛇頭のメデューサでとの戦闘だ。ヤツの髪の毛のような蛇は無限じゃなかった。つまりは有限。やられた分だけニョキニョキと生えてきたわけじゃなかったんだ。

 ということはーー!


「お前も、一回しか脱皮できないんじゃねえの?」


 ゼラは父の形見の短剣を構え、電を帯びさせる。

そして、足に魔力(MP)を集めーー


雷刃剣(らいじんけん)!」


 ーー大蛇に一太刀を浴びせると、プシャアア、と切られた場所から紫色の血が吹いた。


「うっわ、グロいわね。なんて言ったらダメね。お互いに命を懸けた闘いだもの。失礼だったわ」


 ーーあれ? 何だかさっきより剣の通りがいいかもしれない。ゼラくんの雷属性のおかげかもしれないけれど。


 ミミリは不思議に思った。


「もしかして、抜け殻になって防御力ダウンしてる?」


 ミミリの問いに確信を持って答えたのはゼラだ。


「ああ、かなり柔らかくなっている! 今ならいけるはず、だけど……うおっ!」


 ゼラはすんでのところで避けた。

 ゼラと大蛇の攻防は続く。

 

 ーーそうか!

 ミミリは気がついた。


「防御力は下がるけど、攻撃力は増すんだね! 重たい抜け殻を脱いで、軽くなった分、スピードも増してる」

「そう、みたいっ、だな!」


 ゼラは器用に避けながらも一太刀、また一太刀と雷刃剣をお見舞いしていく。


 ーー私に何か、できることーー。

 そうだ!


「うさみ、そこで待ってて!」

「ちょっ、ミミリ⁉︎」


 ミミリは【マジックバッグ】から出したバケツを頭から被った。


 そして手には【絶縁の軍手(グローブ)】と雷のロッドを。


「ミミリ、行っきまーす!」

「ええっ、ちょっと、ミミリ! こっちは危なっ」


 ゼラの心配をよそに、大蛇()ミミリを避けようとする。ミミリはそれを利用して、なんとか蛇をゼラの方へと追いやっていく。おまけに、雷のロッドで背後から叩きながら。


「えーいっ!」

「ーー! そうか! 大賢者の涙を浴びたのね!」

「そう。だから私、きっと大丈夫!」


「プシャアアアア」


 大蛇の命も残りわずか。

 こうなったら、ミミリの番だ。


「うさみ! しがらみの(くさび)、ちょうだいっ!」

「わかったわ。いくわよー! ーーしがらみの(くさび)ッ」


 なす術もなく、大蛇は無数の蔦によって吊り上げられた。まるで、また火炙りでもされそうな格好だ。でも今度は、抜け殻なんかじゃない。本物の大蛇がここにいる。

 大蛇は口を開けた状態でなんとかもがこうとする。だが動けば動くほどに蔦は絡み、自滅状態に。


 このチャンスを、ゼラとミミリは見逃さない。


「うおおおー! 雷刃剣(らいじんけん)!」

「いっくよー! 【瞑想の湖の結晶 雷電バージョン(ミニ)】」


 ーーーードオオオオオオン!


 トドメになったのは、ミミリの錬成アイテム。口の中に放り込まれたのでは、勝ち目がない。

 大蛇は無惨にも、力尽きた。

 だが、不思議なことに……、外見から見ると、錬成アイテムによる痛みはなさそうに見える。これは、一体……?


 ミミリたちは、

 ・蛇の抜け殻

 ・蛇の毒牙

 ・蛇の肉

 を手に入れた!



 ーーポロン!

 『おめでとうございます。ミミリたち。


 第二関門、『暴虐の大蛇』無事にクリアですね。


 あと二回戦あります。


 休んでいかれることをオススメしますが、


 どうされますか?』


「ありがとな、ポロン。もちろん休んでくさ。それに、見てくれ、あっちを」


 ーーポロン?


 ポロンはゼラの指差す方を見てみた。

 すると、なんとミミリは、蛇の蒲焼きを作ろうとしていた。


 『すみません。あまりの衝撃に絶句しました。


  ポップアップ、失格です』


「気にすんなよ。俺も驚いてる。だから多分、錬成アイテムで微調整したんだ。うまい倒し方を。ぐちゃぐちゃになったんじゃ、蒲焼きは作れないからな。あの時は、まさか食うとは思わなかったけど。って……ミミリー! 毒抜きしてくれよ、【解毒剤】でっ」


 ミミリの動きはピタリと止まる。


「あ、あははー。忘れてた。これじゃあみんな食べたら死んでるところだったね。失敗失敗。でも、耐性のあるゼラくんなら生き残れたかなぁ?」


 ゼラ、うさみ、ポロンーー絶句。


「ふはっ! ミミリには敵わないよ。さ、うさみ、ドロップアイテム拾おうぜ? 


 ………………。


 わかった。いい。俺がやる。

 ヤラセテイタダキマス」


 うさみはミミリから椅子を出してもらい、すっかりコーヒータイムを楽しんでいた。しかも、短い足を組み、背もたれにもたれかかりながら。なんのサングラスまでかけているではないか。


 『なんて優雅なんでしょう。()鹿()ンスうさぎですね(皮肉)』


「奴隷1号! 2号の分まで頑張るのよっ」

「ハイハイ。はぁー。ポロン、俺の気持ち、わかってくれるか?」


 『胸中お察しします。これからなるべく、ゼラをサポートしていきますね』

「ははっ。ありがとな。助かるよ」


 ◇


 ミミリは、甘く香ばしいタレをつけて大蛇の蒲焼きを作った。……もちろん今は、毒を抜いている。


「さぁ! 食べよう! いっただっきまーす!」

「やだぁん。美味しそうじゃない」

「うさみ、リゾート気分は捨ててくれ。一応、敵地だここは」


 うさみはゼラをねめつける。


「そんなこと言ったって、敵地で蒲焼き食べるお馬鹿さんがどこにいるわけ? ここにいるでしょーが! いーの! バカンスだってなんだって。本気で闘い、本気で食せ、強者ども、よ。ね? わかった?」

「ワカリマシタ……」

「ふふふ。いっぱいあるからいっぱい食べてね。今炊き立てのご飯も出すから、そしたら蒲焼き丼にしようっ」

「フー! ビューティフォー!」

「イタダキ、マス……」

『……可哀想に……』


 ゼラは慣れてはいるものの、ポップアップのポロンにまで心配される自分が、ひどくいたたまれなかった。



 ーーはぁ。よかった。アスワンさんを呼ばないで。これじゃあ人間を誤解されかねないや。


蒲焼きにして食べてしまうとは……!

恐ろしい食欲! そして度胸!

ミミリもうさみもこういうことに関してはぽややんとしてるので、ゼラに同情するポロンの気持ちもわかりますね!笑


このお話が気に入っていただけましたら、ブックマーク、ご評価☆☆☆☆☆をよろしくお願いします。


皆様の応援が、作者のパワーです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ