表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/210

6-6 山菜取りの前の手厳しい天罰。 自業自得よ!


「このお肉、美味し〜い……でもなんだか、どんどん身体が痺れるような、眠たいような……」


 釣れた大物――上半身は人間と同じ体型で水色のTシャツを纏い、下半身は虹色の鱗。まつ毛が長く、胸がありくびれがある。髪の毛には貝殻の飾りをつけていて、どこからどう見ても、美少女だ。


「きゃあっ! 大変! 【解毒剤】飲んでください……! ……そうか、麻痺蜘蛛の成分と睡眠蝶(スリープフライ)の針が……」


 ミミリは抱き起こし、【解毒剤】を飲ませた。すると、人魚は安心したかのようにすやすやと眠り始めた。ミミリのことを、


「お姫様……」


 と言って……。


 ◇


「どゆことこれ?」


 うさみ、バルディ、コブシ、サザンカが来た時にはこの調子だった。わけがわからないが、とりあえずそのまましておくわけにはいかず、工房に運ぶことにした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「んんん〜! よく寝ました! あれ? おはよう……ございま……


 ……………………………………。


 ……………………本当に人間〜⁉︎」


 人魚はとても驚いた様子で、ミミリのベッドの端の端の方まで退がっていった。様子を見るに、人間を見る機会は少ないのだろう。


「ごめんなさい! 私が人魚さんのことを釣っちゃったんです」

「あ、お姫様……先程は助けていただきありがとうございました」

「ええっ⁉︎ お姫様? 私はミミリって言います。貴方のお名前は?」

「私は、ディーテです」


 ディーテは、言いながら髪を耳にかける。強いウェーブがかかった髪に、水色の貝殻と小さな黄色の星型アクセサリーを側頭部へつけた可愛い少女。人間の年齢でいえば、歳の頃は18くらい。バルディとそんなに変わらないように見える。


「で、聞きたいのだけれど。私はうさみ。ミミリのぬいぐるみよ」

「ぬい、ぐるみ……?」

「可愛いですね」

「ありがとう〜! ……じゃなくって、どうしてあんなに人間の街の近くにいたの?」

「それは……」


 まぁまぁ、と言いながらゼラはホットミンティーとはちみつパンケーキをサイドテーブルに置いた。


「お口に合うかわからないけど、どうぞ」

「わぁ! 人間の食事! 美味しそう。ありがとうございます」


 ディーテは食べながら説明を始める。


「実は、最近海がよく荒れているんです」

「知ってるわ」

「それは、人魚の天敵である、サハギンが居城に攻めてくるからなんです。それで戦争のようになり、海の王である父が怒りを……」

「え?」

「ええと、サハギンが」

「そこじゃなくて、海の王である父? ってことは……」


 ディーテはにっこりと小首を傾げて笑う。


「はい。私の父は海の王、海竜。私は人魚姫のディーテです」

「「「「えええええええ」」」」


「みなさまそんなに驚かれて。大したことじゃあありませんわ。ミミリもお姫様ですものね」

「いいえっ! 私は見習い錬金術士です」

「錬金……術士?」

「そうなんです。ディーテさんが釣れちゃったのも、私が錬金術で作った釣り竿を使ったからで……」


「錬金術……士」


 ディーテは、はちみつパンケーキを食べながら美味しそうに、けれど不思議そうに呟いた。


「たしかに、巧みに釣られちゃいましたけど。私、()()()()()()んです。人間に助けを求めたくて」

「助け?」

「はい。どうか人魚世界を救ってくれないでしょうか」

「随分、壮大な話ね」


 ディーテの話によるとこうだ。

 ポイズンサハギンなどを従えるサハギンと人魚は古来より敵対関係にあるらしい。最近では特にひどく、互いに決めた境界線を超えてサハギンが漁に来たり、人魚を連れ去って(もてあそ)ぼうとするらしい。

 次第に海竜の怒りが増して海が荒れ、ディーテはいてもたってもいられず人間界に助けを求めに来たはいいものの……。家出のようになってしまい、ますます海竜が怒り狂い海が大シケになっている、と。


「サハギンに攫われたと思ってるんじゃない?」

「いえ、それはありません。ちゃんと置き手紙をしてきましたから」


「「手紙で家出……」」


 ミミリとゼラは、ちらりとうさみを見た。昔うさみは、同じことをしてみんなを心配させたことがあるのだ。うさみは見られていることに気づいてはいるものの、()えて気づかないフリをしている。


「あの……疑うわけじゃないんだけれど、どちらかの闘いに人間が(くみ)するとなると、それ相応の代償を背負うものなのよ。だから、安易に助けてあげるとは言えないものなのよね。サザンカはどう思う?」


 うさみは、サザンカに話を振る。


「うさみの言うように、人魚とサハギンの話についてはどちらか一方に(くみ)するのは危険だ。後世まで根深く引きずる可能性がある。

 だがしかし、我々人間は、幾度となくポイズンサハギンに襲われて、甚大な被害を受けている。闘う理由は充分にある」

「じゃあ……!」


 ディーテが嬉しそうな声を上げたところで、止めるようにコブシが一言。


「でもさ、どうやって海に潜るんだ?」

「…………………………あ…………………………」


「人間は、海で呼吸できないのですか?」


 嘘でしょ? と言わんばかりのディーテ。

 人々の目は、自然と見習い錬金術士のミミリに集まり……。


「え、私?」

「作れないかな、ミミリ。海の中で呼吸ができる錬成アイテム」

「うう〜ん。今私が知ってる錬金素材アイテムを使うのなら無理かな」


 うさみはホッと胸を撫で下ろした。

 なぜなら海に入るということは……!


「そそそそそそそそそそそれに海に入るってこの とはびしゃびしゃになるってことよ?」

「それは守護神の庇護でなんとかならないか?」 「……はぁ、それもそうね。半円のドームを球体にして覆えばいいんだわ」


 と、アッサリ解決。


「じゃあ、あと、ミミリの問題ね!」

「えええ……」

「その話だが、子供の頃、酸素山菜というものを咥えながら海に潜って遊んだものだな……。1分程度しか持たないが」


「酸素……山菜……。できるかわからないけど、試してみたいです。採集できる場所へ、案内してもらえますか?」

「ああ、わかった。ここから少し離れた場所の小高い丘にある」


 ここで、思いもよらなかった者が声を上げた。ディーテだ。


「私も行くわ」


「でも、ディーテさんはヒレのままだと……」

「乾かせば足になるのよ。もう乾いてるわ。だから……服を貸してくれる? あと、下着も」


「「「――――!」」」


 ゼラ、バルディ、コブシは顔を真っ赤にしミミリの部屋を退室した。

 退室しない者が1人……。サザンカだ。


「なんと、人魚とは興味深い」


 腕を組んで眺めるサザンカ。

 さすがにディーテも恥ずかしがっている。


 そんな時には、天罰は当然下るというもの。

 うさみは顔を真っ赤にして怒っている。


「デリカシーのない男はいくらイケメンでもダメよ! 風神の障壁ッ! かなり強い押し出しバージョンッ!」

「うおおおおおおおおおおおお」


 うさみによって、部屋の外ではなく窓から工房の外へ追い出されてしまった。しかも二階から。


 まぁ、サザンカのことだから生きてはいるだろう。確認はしていないけれども……。



「これは、手厳しいぬいぐるみだな。興味深い」


 サザンカは生きていた。

 なんと、二階の窓から華麗に着地を決めたらしい。


「魔法か……。興味深い」


 懲りたんだか懲りていないんだか。

 サザンカはまたなにかやらかしそうだ。




サザンカさんは凛々しいようで天然ですね。

でも、覗き(?)はセクハラです。

そこはうさみの一撃を食らっても仕方ないですね。懲りてなさそうですけれど……。


ーー☆☆☆ーーーーーー

本日はお知らせがあります!


見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

https://ncode.syosetu.com/n1094hm/

のシリーズ番外編、


『魔法使いうさみと異世界を繋ぐ魔法の手紙 第二弾』を投稿しました!

ncode.syosetu.com/n5354ii/


なんとなんと、あの作家さんたちとのスペシャルコラボですっ!


作家さんはこちら

神崎ライさん(@rai1737)

まりんあくあさん(@marine_aqure)


コラボイベント第ニ弾です☆★

☆神崎ライさんのご作品はこちら☆

https://ncode.syosetu.com/N3370HF/


☆まりんあくあさんのご作品はこちら☆

ncode.syosetu.com/n0156hr/


応援よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんと、人魚さんはお姫様でしたか! 異種族の争いに首を突っ込むのは確かに考えものですが、人間も被害があるんですよね。そして、ミミリちゃんがお姫様というのも気になります。 なんかますますゼラ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ