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第3話 旅行のメンバー

 メモ帳を片手に入ってくる茶髪の男は技術部整備班長、島田正人技術准尉だった。


 いつものようにダルそうな足取りでアメリアに近づいてくる。


「クラウゼ少佐。技術部の参加希望者決まりましたけど」 


 アメリアは彼の手からすぐにその手帳をひったくると少しがっかりしたようにため息をついた。


「ふうん、ずいぶんとまあ……参加人数少ないのね。つまんないの」


「クラゲを舐めてるからだ、クラゲを」


 ため息をつくアメリアをかなめが冷やかしながら視線を誠に向ける。


「おめえはアタシの『ペット』だから、強制参加な」


「はい……」


 カウラの言葉からすれば新入りの誠に拒否権は無いので、そう言うしかなかった。しかし、『特殊』な上司とは言え美人が多い実働部隊なので誠はごく自然と嬉しそうな顔をすることができた。 


「それより隊長は行かないのか?って言うまでもないか」 


 アメリアの手にある参加者名簿に目をやりながらカウラはそう言った。


 この『特殊な部隊』の主である、部隊長・嵯峨惟基特務大佐。一見、25歳すぎに見えるが実は46歳の中年『駄目人間』がこんなめんどくさいイベントに出るわけがないことは、入隊後半月余りの誠にもよくわかった。


「ああ、隊長っすか?何でも第二小隊の増設の打ち合わせで手が離せないとかで……まあ、あの人小遣い3万円だから参加費払えないでしょうけどね」 


 島田はカウラにそう言うと苦笑いを浮かべた。


「それじゃあ……サラ!小夏ちゃんに連絡した?」


 アメリアは名簿を手を伸ばしてきたかなめに手渡した。


「うん!ちゃんと予定空けてもらってるわよ!」 


 ピンクのセミロングの髪をかき上げながらサラは元気にそう答えた。


 彼女と水色のショートヘアーのパーラ・グリファン中尉、それに紺色の髪のアメリア、エメラルドグリーンの髪のカウラは、人造戦闘用人間『ラスト・バタリオン』と呼ばれる存在だった。


 彼女達は普通に生まれた人間と区別をつけるために、地球人では自然には生まれないような髪や瞳の色をしていた。


 本来は戦うためだけに作られた定めを持つサラだが、すっかり人間社会に慣れすぎて、普通の人間よりよっぽど人間臭い雰囲気をまとうようになっていた。


「小夏ちゃんもくるんですね」


 誠はそう言って一人手持ち無沙汰にしているパーラに声をかけた。


「そうね……7月の軟式野球部の合宿にも来てたしね」


 彼女の言葉でいかにこの『特殊な部隊』が、年中イベントだけをやっている暇人の集団であるかが誠にも分かった。


 そして実働部隊の夜の拠点となっている焼鳥屋『月島屋』の看板娘、家村小夏と女将の家村春子の二人もこういうイベントには欠かせない存在なんだと誠はこの会話から理解することができた。


「これで、小夏ちゃんと春子さんが来て……バスは一台で済むけど……」


 アメリアはそう言いながら誠を見つめる。


 全員の視線が誠に向いていた。


 誠はひどい乗り物酔いをする癖があった。戦闘用人型兵器『アサルト・モジュール』パイロットであるにもかかわらずである。


「例の強い酔い止めを飲めば……大丈夫ですよ……たぶん……」


 明らかにうんざりするような視線を投げてくる全員を見ながら、誠にはそう言うことしかできなかった。

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