家族団欒 2
しばらくリビングで寛いでいると、インターホンがなった。どうやら、ピザが届いたようだ。
玄関で母親とピザ屋の配達員らしき若い女性の話し声が聞こえた。
間もなくすると、母がリビングに入って来た。手にはピザが入っているであろう箱を2つ持っていた。
「さぁ、ご飯にするわよ」
母はそう言うと、テーブルの真ん中にそっと置いた。
2人掛けソファーの前に母と藍衣が座り、2人から見て右手に優希。左手に伊吹が座っている。
ソファーはテーブルよりも高いため、食事の時は全員正座で食べる。
以前、食事用のテーブルと椅子を買おうと話をしていたが、いつの間にか霧へと化していた。
買ったピザは、ボスカイオーラ(Boscaiola)と呼ばれるもので、キノコを贅沢に使ったピザだ。きのこの他にもツナやトマトも使われている。
ボスカイオーラとは、イタリア語で木こりという意味がある。きのこなどの森で採れた食材を使用していることからこの名が付けられたと聞く。
もう1つは、クアトロフォルマッジ(Quattro formaggi)。これは、スライスチーズやカマンベールチーズ、ピザ用チーズなど様々な種類のチーズが使用されており、チーズ好きには持ってこいの品である。
好みによっては、蜂蜜をかけてもいいらしいが、伊吹一家はそのまま食べる。
頂きます、母がそう言うと続けて3人がいただきますと言った。
最初に食べたのは、クアトロフォルマッジ。伊吹は大のチーズ好きなので、ピザを頼む時には欠かさずこれを注文している。口の中に溶けるように入ってくるチーズがとても美味しい。最初はカマンベールチーズがピザに使用されているのが少し驚いたが、今ではカマンベールチーズも欠かせない逸品だ。
次に食べたボスカイオーラは、伊吹の好みなのではなく、父が好きだったものだ。これが父の形見だと言う訳では無いが、『ピザ』という単語を聞くだけで、父の死を思い出してしまう。
父は、とても優しい人だった。仕事が忙しいにも関わらず、週に1度は顔を見せてくれた。長い休みが取れたときには、春なら花見。夏は海かプール。秋には美味しい食べ物を食べに行って、冬はクリスマスをくれた。
家族の誕生日には、無理にでも時間を作って一緒に食卓を囲っていた。その日は、遅くまで家族みんなで話してたっけ……。
遺族皆、父が大好きだった。世間もすごく悲しんでいたが、結局は他人だ。残された遺族の悲哀の気持ちが分かるものか。分かってたまるか。上面な言葉で、想いで悲しんで、よく知りもしない父の死を嘆くな。
その時の俺は、酷くそう思った。
大切な人だった。大好きだった。だから、もう2度の自分の前から大切な人が居なくなるのがとてつもなく嫌だった。
だから、少し嬉しかったんだ。父と同じように死ねることが。そして、
──これ以上、大切な人の死を目の当たりにしなくていいのだから。
展開を考えるのが、大変で大変で……それ以上に愉しくて。
頭で考えた構成を文章にしてみると、新しいことに気づいて、文章書き換えて。
……楽しい。