家族団欒 1
家に着くと、弟と妹が玄関で出迎えてくれた。
「おかえり、お兄ちゃん……それで大丈夫だった?」
藍衣は地元の中高一貫校に通っている。現在中等部3年だ。
体格は、中学生の女子平均身長とほぼ変わらないくらいで、胸はどちらかと言うと小さい方だろう。女子だと認識できる程度にはある。
しかし、そんな見た目だからこそ、清楚感溢れる黒髪の良さが滲み出ている。髪型はショート。お気に入りらしい。
自慢の妹だ。
「ただいま、藍衣。それと、優希もただいま。」
伊吹がそう言うと、
「……おかえり、兄ちゃん」
と、多少反抗的ではあるが、伊吹を心配した口調で答えた。
優希は伊吹の弟で藍衣と同じ学校に通っている。現在中等部1年だ。“根は優しいタイプの少しヤンチャな少年”だ。身長もクラスの中では大きい方で、顔は性格とは反して爽やか系イケメンだ。勉強はまずまず、と言ったところだが身体能力が中1とは思えない程高く、陸上部に所属している。
伊吹は自分との違いに時々苛立ちを覚える。
だが、2人とも自慢の存在だ。
「さぁ、おしゃべりはリビングでどうぞ。」
母は、行った行った!と伊吹たちをリビングに追いやった。
リビングは、17畳とかなり広い。部屋には、48インチの一昔前のテレビ(今でも割と使えている)と対称に2人掛けソファーと1人用のシンプルなソファーが1つずつ置いてある。どちらも1級品でとても肌触りがいい。ソファーをベットとして利用することも出来そうなほどだった。
ソファーに囲まれるようにして、表面がガラス張りの下部に収納スペースのあるテーブルが置かれている。
他にもキッチンには、あるメーカーの最近の冷蔵庫がある。自動製氷機能の他に肉や魚の乾燥を抑え保存が可能なスペースや、野菜の瑞々しさと栄養素を守ることの出来るスペースがある。カーテンを捲れば、ベランダもある。土地面積は友達とBBQや花火が出来そうなくらい広い。隣にすぐ家があるので、しようとは思わない。
そんな豪邸のような家に住んでいるのは、伊吹・優希・藍衣、3人の父親であり、そして静枝の最愛の夫。祐一のお陰と言えるだろう。
祐一はテレビに出るほどの有名な音楽家で、数々の名曲を生み出してきた。
時には専門学校の特別講師として呼ばれたり、また時には映画のエンディング曲を作曲したりしていた。
息子としては、恵まれた家庭に生まれて凄腕の父親を持った自分たちは十分に幸せと言えるはずだった。
幸せの日々は、どうしてこうも続かないのだろうか。
父親は、1ヵ月前に亡くなった。病名は伊吹と同じ病気である。医者は「(病気の原因は)父親である祐一の遺伝によるものではないか」と言っていた。しかし、父親は生まれた時から患っていた訳ではなく、父が25の時─つまり、伊吹が生まれてまだ間もない頃だ─に発症した。つまり、息子である伊吹にも発症する可能性は極めて低かった。
だが残念なことに、それは伊吹にも発症した。医者に病名を告げられ、余命宣告を受けた時、少しだけ機微たる喜びがあった。
伊吹にとって父親は大切な人であると同時に、1人の偉大な人間なのだ。だからこそ、自分がそんな父親と同じ死に方ができるのだからこんなにも誇れることはないと思った。それに、
俺には、趣味も夢もなければ、未来のことは愚か近い将来すらも考えずに生きているだけの、臆病者なのだから。
小説を書くっていうのは、とても大変なんですね。色々構成を考えなくちゃいけないし、キャラ設定も大事だし、頭の中がパンクしそうになります。
……でも、諦めずに頑張ります。