ネガティブすぎてヤバい
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ネガティブ。それは、後ろ向きな言動や思考を意味する。会話の際に、「どうせ」とか「自分なんて」って言う人はきっと周りにいるはずである。
世の中、全ての人がポジティブなわけない。
この俺、幽谷 一也も、自他ともに認めるネガティブな人間である。
人間ならば、時々ネガティブに陥ってしまうことはある。失敗が続いたりするときは、どうしてもネガティブにはなるはずである。
しかし、俺はそんなチャチなネガティブじゃない。周りをドン引きさせるレベルでネガティブなのだ。
そうだな……例えば…。
「お、それ俺も見てる!面白いよな」
「え、ほんと!?あれさ、主人公めっちゃ可愛いよね!」
どうやら最近流行っているドラマの話をしていた女子グループに、男子たちがその会話に混じった。
何故、彼らは話を振られてもいないのに会話に混ざることが出来るんだろうか。女子グループから何か言われることを考えなかったのか。
もし、「あ、うん。そうだね」って返されたらその日が俺の命日になる。
とまぁ、極度のネガティブ思考である。そんなネガティブな人間にも、数少ない人脈はあるのだ。
「いつもみたいにまーたネガティブなこと考えてたろ?」
気さくに俺に話しかけてきたこの女子。茶髪のショートで制服を着崩し、男子が喜びそうな二つのメロン。
数少ない俺の話し相手の、鵜久森 鶫が俺の席にやってきた。
「…いや、周りがポジティブ過ぎるんだよ。大体会話するときに許可とかいらねーのかよ」
「会話するときに許可を得てたら面倒っしょ」
マジか。小中の時に気軽に話しかけたら「は?何急に。なんで話しかけてきたの?」って言われたぞ。
てっきり会話するときに許可とかいるんじゃないのかと割とマジで思ってたぞ。
「それよりさ!数学の宿題、見せてくれよ!」
鵜久森は笑顔でそう言う。だが、きっと内心はこうだろう。
「見せてくんなかったらお前の居場所ねーから」
……終わった。俺の学園生活終了したよ。鵜久森は終始笑顔だが、その笑顔が俺をより恐怖のどん底に突き落とす。
「…頼むから次からは自分でやってくれよ」
「おっ、サンキュー!やっぱ頼りになるなぁ、一也は」
頼るというより、きっとパシるの間違いだろう。この女、いつもこうだ。
頼んでもないのに休み時間に話しかけてくるし、毎度毎度宿題見せろと笑顔で脅すし、放課後になれば俺を連れ回して夜遅くまで帰らせてくれなかったときがある。遅く帰ったときどんだけ妹に怒られたか。
「…帰りたい。早退しようかな」
「早退したらアタシが一也の家行くからな」
どうやら俺の安らぎの場は鵜久森によって消されるようだ。終わった。
「一也、今日の放課後…」
「空いてないから勝手に行ってくれ」
「よし空いてるな」
「え、人の話聞いてた?」
空いてないって言ってんのに勝手に空いてることにされたんだけど。この子は会話のキャッチボールできない系女子なわけ?
「だって、いっつも空いてないって言うじゃんか。どうせ暇だろ?」
「いや暇だけど。確かにいつも一人だから暇だけど」
「またネガティブ……。それに、アタシがいるんだから一人じゃないだろ?」
「なにそれカッコいい」
なに俺もしかしてこいつのヒロイン?なんでこんなカッコいいことサラッと言えるのこの子。
「話逸れたけど、今日も付き合ってもらうからさ。分かった?」
どうやら意地でも連れて行きたいらしい。行かなければ、俺の居場所が消えてしまう。
俺は溜息をついて、渋々答えた。
「…へいよ。荷物持ちくらいにはなりますよ」
「さっすが一也!じゃあまた放課後な」
そう言って、彼女は自分の席に戻っていった。俺は次の数学の教科書を出して、机に伏せる。
これが俺の、幽谷一也の学校生活である。