人は右側に進むと死ぬ
たぶん、教わったことはない。
周りが始めからそうであるから、そうなっている。
「どうして、車や電車は一般的に、進行方向の左側だと思う?」
最近、自動車学校でその理由を知った山本灯。
身近なあるあるを自慢気に、友達に伝える。
「うーん。確かにそーなっているけど、詳しい理由は分からないね」
「左側に寄れば対向車と離れるが、右側に寄れば対向車とぶつかりやすくなる。そーいう理由だろ」
「あっ、パピィ。鋭い」
車を運転するパピィ・ポピンズと、しない福道春香の差が出たぐらい。
なんとなくの疑問が解決するというのは、少し賢くなった感じもする。
「これは自転車や歩行者にも言える事で、右側を走っていると人にぶつかりやすいわけよ。右側を走っていて、車にぶつかると。そりゃ相手が悪いわけだけど、こっちにも多少の責任があるんだって」
「へーっ、そーなんだ」
人身事故にも色々とある。
「信号を渡る際にほとんどの人が右を見て、左を見て、そして、また右を見て進むじゃない。あれって、渡ってくる車が歩行者の右からやってくるからなわけよ」
「車が左から来る事はまずないから、左側の警戒が疎かになる」
「そーそー。だから、右側から走ってくる自転車が危ないってわけ」
「ふむ。子供ができたら、ちゃんとその辺を教えてやるべきだな。みんなが守れば交通事故を防ぎやすいというわけか」
意外と真面目なお話だった事に、福道とパピィも驚いている。
「というわけでさ。逆の見方をすると、私達は右側を歩いていれば人とぶつかる事ができる。これって、よくある男女の恋愛に発展する、ベタ展開じゃない?食パン咥えて曲がり角まで走る、あれあれ」
「ベタというか古い」
「灯の今の話を聞くと、あれから始まる恋愛は危険な事をやっている事になるな。大した事ではないけれどな。食パンを咥えているのも含めると、マナーが成っていないアピールにもなってしまうわけか」
「どっちが悪いと思う?」
「何を言っている?それは男に決まってるだろ。ぶつかっておいて、何様だと言ってやるべきだ。イケメンか金持ちだったら、お付き合いで許してやる。それ以外は怒鳴ってやる」
「酷い」
右側を走る事を止めたからといって、傘を持っていたり、スマホ運転は危険ですからね。