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落ちた傘

作者: 空超未来一

 私の借りている部屋は一人暮らしにしては少し大きすぎる。詳しい間取りは教えられないが、三人が住んでも不自由はないだろう。

 最初はのびのびと生活してこれた。

 けれど時間が経つうちに段々寂しくなってくる。

 最近になると私以外の誰かがいるみたいで気味が悪かった。

 そうして、ついにその日がやってくる。


 あいにくにもその日は雨だった。仕事も終わり、駅前からバスに乗ってうちの周辺まで戻ってくる。傘をさしながら歩い帰ると、家に着いた時にはすでに夜の十二時を回っていた。

 本来ならもう寝ている時間だ。

 鍵のつまみを横にして施錠してから、ドアノブに濡れたままの傘をかけておいた。こうでもしないといつまでたっても乾かない。


「…………はあ」


 真っ暗な部屋の中は相変わらず不気味だ。そこに見えない誰かがいるようで明かりをつけるのが怖い。

 たじろっていても仕方ないので電気をつけて奥に入る。


 郵便物を確認していると見慣れない紙があった。どうもここらへんで不審者が出ているらしい。

 私は常に施錠を心がけている。どちからといえば家にいる悪霊のほうが恐ろしいものだ。


 さっさとシャワーを浴び、一時を回らない程度で就寝した。


 ふと目が覚めた。時計を見てもまだ一時間しかたっていない。いつもと違い、眠りが浅かったからか。それとも虫の知らせというやつか。

 私は布団の中で妙な緊張感に襲われた。息もできないような、まるで金縛りのようだった。

 ヤバイ、と思ったそのとき。


 ガタンッ!!


 玄関のほうから何かの落ちる物音がした。

 身体がぐっと身体が強張る。

 こんなことは初めてだったので私は朝が来るまで布団の中で祈ることしかできなかった。

 しかし幸いにも、それ以降は何事もなかった。

 日が昇り、私は布団から出て物音をしたほうを確かめに行った。

 するとドアノブにかかっていた傘が落ちているのを目にした。


「なんだ、傘が落ちただけだったのか」


 あれだけ怖がっていたのが恥ずかしいくらいだ。

 ほっとして私は胸を下ろす。


 そこで私は鍵のつまみが縦になっているのに気づいた。


 ――――その瞬間、全身から血の気が引き、すぐさまその部屋から引っ越した。

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