7話 幸せの最後
十二月二十五日 夜 十八時三十分
楽しみだった香織とのデートを終え、遥斗は表情を緩ませながら帰宅した。
(ついに!ついにキスまでしちゃったよ俺!香織の照れた顔可愛かったなぁ…)
一つ大人の階段を登った遥斗は、香織からプレゼントされた可愛らしい刺繍の入った帽子を眺め、香織の事を考えながら部屋で余韻に浸っていた。
今日は日曜日と言うこともあり、遥斗の誕生日を祝うためキッチンでは、母と姉がいつもより豪華な夕飯とケーキを用意していた。
遥斗は姉に呼ばれ一階のリビングへ向かい、家族に誕生日を祝われながら、ニヤけた表情で豪華な料理に舌鼓を打った。
「…彼女とのデートが楽しかったのは分かるけど、ちょっとそのふざけた表情何とかならないの?」
「遥斗も大人になっちゃって、お母さんなんだか寂しいわぁ」
「〜♪」
そして一通り食事を終え、食後に誕生日のケーキを食べていると、姉が丁寧に包装された小さな箱を渡してきた。
「はい、誕生日おめでとう。これ、お母さんと私からよ」
「おぉ、有難く頂くよ。じゃあ、早速」
包装を解き箱を開けると、中にはシルバーのチェーンに白と黒のリングが二つ掛けられたネックレスがあった。
遥斗は早速それを手に取り首にかけた。
「なかなか似合うじゃない?あれこれ考えた甲斐があったわ」
「うんうん、いつもより男前に見えるわよ?」
「なんか照れるな…二人ともありがとう」
「遥斗のプレゼントがまさかのお母さんと被っちゃってね、二人して指輪買ってきちゃったもんだから、折角だしチェーンも買ってネックレスにしようってなったの」
「急ごしらえだけど似合っててよかったわ。ね?お姉ちゃん」
「ありがとう、大切にするよ」
そうして家族と幸せな瞬間を共有し、誕生日を満喫した遥斗は、そろそろ部屋に戻ろうと立ち上がった。
…ブォォ……ブォォォ……ブォォォォォ!
遥斗は外から聞こえる妙な音に気が付き思わず動きを止め、全身から汗が吹き出るのを感じていた。
聞き覚えるのある音は断続的に、そして、徐々にハッキリとした物になって行く。
「あら?なんだか騒がしいわね。何かしらこの音?」
そう言い母はリビングの窓を開け外を覗いた。
その時、何かが母の首元を通ったように見えた。
「…え?」
気がつくと、母の頭がコロコロと遥斗の足元に転がっていた。