4話 順風満帆
結局午前の授業は、直樹の話しが気になり聞き流して終わっていた。
そして昼休み、遥斗はいつもの中庭へ向かい姉の手作り弁当を広げた。
「遥斗くん?どうしたの?」
「…ん?あぁ、香織か」
いつの間にか隣に座り顔を覗き込む同級生の女の子、園田香織は、三ヶ月ほど前に遥斗に告白し、付き合い出した遥斗の人生初の彼女だ。
少し茶色がかった髪を肩辺りで揃え、小さな顔に通った鼻と、少し垂れ気味のぱっちりとした目の可愛らしい顔立ちをしていた。
「なんか深刻な顔してたよ?大丈夫?」
「あぁ、実は少し気になる事があってだな…」
「気になる事?」
遥斗は彼女に直紀から聞いた話を事細かに話した。
「へぇ、まさかあの遥斗くんがそんな話を気にするなんて以外だね。滅亡の予言かぁ」
「俺でも何でこんなに引っかかるのか良く分かんなくてさ。ついに直紀の話を聞いてく内にそっち方面に毒されてきたのか…」
「あははっ、私が妬くくらい二人は仲良しだもんね!」
幼馴染だからしょうがないだろう!と笑いながらそんな会話をし、遥斗は幾らか癒されていた。
すると突然、彼女は神妙な顔つきになった。
「香織?」
「その予言が現実になっちゃったらさ、せっかく付き合い出してまだ三ヶ月しか経ってないのに、近いうちに私達死んじゃうのかな…?」
「どうせ現実になることなんて無いんだし、そんなに気にする事ないって。な?俺ももう気にならなくなったし!」
「うん、でも…もしだよ?もし、明日世界が滅亡しますってなったら遥斗くんは…どうする?」
「うーん…俺なら、何がなんでも生き残る悪あがきを全力でする…かな?家族や直紀、香織と生き残るためにね。本当に悪あがきかもしれないけど」
遥斗は本心からそう答えた。
「じゃあ私は、遥斗くんが生き残れるように全力で悪あがきに協力する!遥斗くんが居ない世界なんて私は死んでもごめんだもん!」
そんなセリフに遥斗は彼女を思わず抱きしめた。
「遥斗くん、痛い…」
「あぁ、すまん…」
「ううん、なんか照れちゃうね」
遥斗の顔は彼女と同じように真っ赤になっていた。