2話 幼馴染
少し余裕を持って校門をくぐった遥斗は自分の教室へ向かった。
席に着き、鞄から教科書を取り出していると、少し興奮した様子で声を掛けてきた男がいた。
「おはようはるちゃん!昨日のテレビ見た!?」
「…朝から元気だなお前は」
彼は幼稚園からの腐れ縁、飯田直紀、遥斗の事を"はるちゃん"と呼ぶ幼馴染だ。
言わゆるオカルトマニアと言う奴で、その童顔と黒髪のマッシュルームヘアを合わせた可愛らしい雰囲気に似つかないオタク気質な男だ。
「見てないけど、どーせまた陰謀がーとかUMAがーとかってやつだろ?」
「そう!そのまたって奴だよ!アポカリプティックサウンドがまた鳴ったんだ!」
「あぽか…なんて?」
「アポカリプティックサウンド!黙示録のラッパだよ!」
そう言い端末から動画サイトを開いた彼は、外国の風景が写る映像を見せてきた。映像は頻りに上下左右をキョロキョロしていて、まるで何かを探しているような動きをしている。
何の変哲もない街並み。
そして少し落ち着きのない撮影者。
そう思い見ていると突然彼が端末から映像の音量を上げだした。
それと同時に何の変哲もない映像に違和感が生まれた。
音楽と言うにはあまりに単調で、しかし確かな旋律を奏でるラッパの様な音が映像から流れている。
その音はとても低く、腹の底に響いてくるような何とも言えない嫌な感じがした。
「…これは?」
「今全世界で確認されている音でその出処や原因は全く分かってないんだ。でもまるでラッパや角笛のような音だろう?だから一部オカルトマニアの人達から黙示録のラッパ、言わゆるアポカリプティックサウンドって呼ばれてるんだ」
「そうなのか。で…」
ーーそれが鳴るとどうなるんだ?
そう聞こうとした瞬間始業のチャイムが鳴った。
「あ、続きは休み時間にでも話すよ!」
そう言い彼は自分の席へ戻った。