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非合理的日常のススメ

さて、時は流れ五月も終わりに差し掛かっている。 あっという間の二ヶ月、意識しない時間はまるで水の如く流れてしまう。唯一意識している時間といえば、休みの日と部活の時だろうか。

時は夕方、長ったらしい部活も終わり。西日に照らされた廊下を職員室に向けて歩き進む。

もちろん目的は鍵を返す事。経緯を話す気にはなれないが、仕方なく話そう。よくありがちな全世界ダウンロード数No.1の『じゃんけん』によって決められる鍵の返却者。それに見事選出されてしまった。一人負けでな!

「それにしても浅野君はじゃんけん弱いなぁ」

隣には片瀬先輩が笑いながら俺をからかっている。それに対して俺は俺なりの理論を伝える。

「じゃんけんなんて運ゲーじゃないですか」

間違いはない。ほぼあのゲームは確率ゲームだ。

「うん、確かに間違いは無いね」

人がいないせいか片瀬先輩のお淑やかな笑い声は廊下によく響いている。

西日が眩しいが外に視線を送ると運動部がグラウンド整備をし始めている。これこそ青春であろう、だが経験した事ないから分からないが。

そんな俺の残念な部分をサラっと暴露した所で職員室に鍵を返す。

「さぁ帰ろう!」

「あっ、うん、はい…」

おかしいだろう、あなたの自宅は横浜の方だろうに。俺の自宅とは全くもって逆だろう。

そんな疑問を脳の片隅に添えつつ、学校の最寄りの駅まで「さわやかウォーキング!」なんてほど外はさわやかではない。梅雨シーズンに差し掛かる為か心なしか湿り気がある気がする。

「もう慣れてきたかな?」

「はい、若干心配なところはありますが…」

「まぁ、新人だし多少はね」

最寄りの駅までの数分、いつもならすぐにでも着いてしまうのだが、いつもより長く感じる。ゆっくり歩いているからだろうか、それとも…。

「そういえば、浅野君は球技大会何出るの?」

「は?」

初耳だ、今初めて聞いた。

「あれ?もしかして聞いてない?」

「えぇ、担任が無能なもので…」

今頃職員室にいるアイツはくしゃみでもしているだろう。ふん、無様だな。

そんな愚痴の後に球技大会について話しておこう。六月に近づいたこの頃に行われる球技大会。種目は男子はサッカー・野球のどちらか、女子はバレー・バスケのどちらかである。インドアだった俺には向かない行事だが参加必須なので俺に参加を云々の選択肢はない、あるとしたら種目ぐらいだろうか。

まぁ、俺は野球なんて小さい球を細い棒で打ち飛ばすようなスキルプレイは嫌いだ。もちろんみんながよくやるであろうサッカーにでも参加するとしよう。

「とりあえずサッカーにでもしようかと」

「ほうほう、それは楽しみですな」

片瀬先輩は小悪魔の様な笑みを浮かべている。大体この人といて分かったことを一つ言うなら、この様な笑顔を見せた時は大概下らない事を考えた合図だと分かった。中学から極めておいた人間観察スキルが働いた様だ。

【浅野祐太郎(人間)の人間観察スキルがAからEXに上がった】

ほれほれ作者よ、ジャンルを戻せ。これは異世界モノでも転生モノでも無いぞ。

「なんか変なこと考えてませんか?」

「イヤーナンデモナイヨー」

隠すのは下手な様だ。人の事言えるかどうかは分からんが。

さて、いつもより長い時間を掛けてやっとの思いで駅前に着いた。夕方のせいか駅前のスーパーの前には多くの主婦や子連れの親子が見られる。時間帯も絡んでいるせいかこの駅を最寄りとしている個性豊かな制服を着た学生が改札口から出ている。

「それじゃあ、お疲れ様でした」

「うん、お疲れ様。球技大会楽しみにしてるね」

「あまり期待しないでください」

当たり前だ。球技大会なんて運動しないフレンズからしたら拷問みたいなものだ。過去の黒歴史話をするとしよう、あれは中三の冬、試験が終わってみんなが幸せや苦しみ、複雑な心境にあった頃だ。

あの時、俺たち隠キャ組は運動出来る意味わからん種族により綺麗に分かれ、俺はサッカーになっていた。

さていざ試合開始、前半は普通だったのだが、後半戦になると俺は違う意味で才能を開花させた。その才能とは…【三十秒に一回滑り】だ!

説明すると、俺の靴の裏は削れたせいか非常に滑りやすい。それが影響したせいかボールを取ろうとするとスライディングの如く滑ってしまうのだ。このせいで卒業までいじられたものだ。つらたん…つらたにえん…球技は嫌いだ!

そんな過去の黒歴史を読者に撒き散らしたところで、話を今にでも戻すとしよう。いつまでも過去の話をする気にはなれない。

先輩とは別れ、俺はいつも見慣れた景色を見ながら電車を待つ。ホームから見る東側の空は暗くなり、西側も暗くなりつつある。時刻は帰宅ラッシュとピッタリ。そこそこ混雑した電車に乗るのは辛いものだ。はぁ、最近ネットやニュースなんぞでよく聞く『通勤ライナー』なるものにでも乗ってゆっくり座って帰りたいものだ。

まぁ、そんな事が叶うなんてあり得ないが。

気付けば電車が目の前を高速で通過している、無論急行電車だ。これだから急行通過駅は……いや、これ以上言うのはやめよう。色んな方面からの検閲によりこの文章が削除されてしまう。最近では世間の目が非常に痛い。ふとした発言が大炎上なんぞ日常茶飯事だ。

それが行った数分後、ノロノロと乗る電車がやって来た。比較空いている車内には学生服を着た人、スーツ姿のサラリーマン、私服姿の男女。様々な人々を目にする。

電車に揺られる事数十分、俺の最寄りに戻れた。

今更感があるが俺の地元がどんな感じかを簡単にでも話すとしよう。駅前には大型商業施設、駅前を発着するバスは充実しているが難点を言えば暇つぶしに不向きである。

キルタイムを無くすには向いていない、隣の発展した駅で潰した方が圧倒的に良い。駅から自宅までは自転車で十五分、毎日見ている慣れた景色だ。追記するとすればどこもかしこも暗い道だ。

自宅に戻り、俺はまっすぐ部屋へ向かい、制服のままベッドに横たわる。

言っておくが俺は隠れオタクである。部屋も完全にアニオタ仕様、アニメのフィギュア、壁掛けポスター等々、完全に自分色に染めている。それ故に悩みが一つある、それは新規で買ったフィギュアなどの置き場所だ。現状余剰スペースはない、それ故に置き場所に困り勉強机の上置かれている。

こういう状況になった事がある人よ、俺と仲間だな。

そんな読者を巻き込んだ茶番を挟み。俺はプライベートタイムに入るとしよう。ここからは作者の力も働かないぞ、なんてったって––––。


翌日、俺は毎日恒例の通勤ラッシュに巻き込まれていた。近年では都知事によって時差Bizなんぞ言うものが提唱されているが学生にそれは通じない。この地獄でどれだけの運動量を消費しているだろうか…考えたくもない。

結局通勤ラッシュならぬ痛勤ラッシュを乗り越えた先には、毎日見慣れた駅名標がまず最初に視界に入った。

改札を抜け学校に向かう途中、同じ制服を着た学生を目にする。ある者はコンビニで買い物、またある者は男女で仲良く登校。俺はいつもどおり一人で音楽を聴きながら登校する。

一人で? いや。俺は自分の予想が裏切られたのを感じた。

「おはよう!」

俺がイヤホンに手を掛け、耳にはめようとした時。俺の真後ろから軽快な足音が聞こえた。

もちろんだが、足音の正体は片瀬先輩だった。

「部活以外で会うのは初めてかもね!」

確かに会うことはまず無い…なんてったって俺の登校時間が遅いからな。

「そういえばそうですね。いつも先輩ってこの時間でしたっけ?」

「違うよ〜、いつもはもっと早いんだけど、寝坊しちゃってね…」

「あぁ…まさかアニメでも観てたんじゃ――。」

俺が言っている途中、先輩は慌てた様子で俺の口元を両手で塞ぐ。しかも酸欠で死んでしまいそうなレベルで。

「分かってるでしょ?」

「ごめんなさい、口が滑りました…」

意識してないとこう言うことになりそうだな…気をつけないと…。

その後、俺たちは部活の話をしながら登校する、高校に入ってから初めてだった。それからは何も考えずボケ〜っとした状態で授業を受け。放課後、小テストを済ませてから部室に向かう。教室を出て、階段を降りて、連絡通路を通って、自販機でお茶を買って、階段を上がってすぐの部室へと向かう。もちろん中にはいつも通り先輩達が待機していた。いつも通り? 違うな。初めて見る人がいるぞ。

すぐに部長が紹介してくれた。

「あぁ、浅野君!紹介するね、顧問の岩下先生だよ」

「おぉ、君が今年入部した一年か!」

彼は岩下教諭、専門科目は現代文・古典、文学科目に特化した先生だ。噂では有名大学出身で一年から三年まで教えられるハイスペック教師だと。まぁ、噂に聞いてるだけでこうやって見るのは初めてだ。

「浅野祐太郎です、よろしくお願いします」

軽く挨拶を済ませると、岩下教諭は急いでいたのか、足早に部室を後にした。何しに来たのかは後で先輩に問い詰めるとして。俺はいつも通り使い慣れた相棒のマシンを使って執筆する…のだが、なによりも明日のことが心配だ。なんてったって明日は球技大会。中学の時のような黒歴史は生みたくない、それが今の願いだ。

そんな心の声を逃さず拾ったかの様に、金田先輩が話しかけてきた。

「どうしたんだい?なんか心配事でもあるの?」

「あっ…まぁ…明日の球技大会の事で少し…」

この先輩、前々から思っていたが、勘が鋭い気がする。心の中を見透かして見ているのか?な訳はない。気のせいだろう…。

「球技大会か、僕も結構辛かったんだ」

「なにがですか?」

「みんな下手クソ過ぎてね☆」

この人ウザい、キライ、変人、腹立つ。なんて文芸部らしくない語彙力で俺の心を表現した。

「なんの話ししてるの?」

割って入ってきたのは片瀬先輩、すごく気になってるらしく『しいたけ目』がスゴい…。

だが金田先輩は話していた内容を隠し、別の話題を振った。その時俺の中で一つの可能性が生まれた。出来る、この先輩を手玉に取れるぞ。って、悪魔のささやきが…。

そんな脳内に悪魔が襲来した俺とは正反対のオール天使の片瀬先輩が思い出したかの様に俺に先程のしいたけ目で話しかけてきた。

「ねぇ!コンクールに応募してみない?」

その言葉に俺は疑問を感じた、なぜ入部して大体一ヶ月ちょいしか経ってない俺をここで誘っているのか分からない。そこで俺は先輩にまんま思った事を聞いてみた。

「どうしてです?俺なんかまだ新人ですよ?そんな俺に出来る事なんですか?」

「う〜ん…少し難しいかも…」

先輩は少しながら豊かな胸の下に腕を組みながらそう言った。先輩は少し間を空けてから俺にこう言った。

「確かに難しいかもだけど、応募したら編集者さん達がコメントくれるんだよ!それも一人一人丁寧にね!」

「それなら、少し考えてみます」

 少し考えさせてくれ。事がいきなりすぎて状況が掴めん。

 そんなこんなでコンクールの件は一旦保留、さて執筆を始めるとしよう。

 初めてかれこれ数時間、今日は調子が良かったお陰かすらすらと内容が出来上がっていったように思えた。

 それからは、ジャン負けして鍵を返却し足早に撤収する。窓の外は曇っていて太陽がだいたいどの辺りか一切不明だ。昔の日とからしたらたまったもんじゃないよな、なんてったって大体の時間を表すものがないのだから。

 そんなことは今いいとして、駅までの道中、もの凄く退屈だ。いつもは景色などを楽しんだり、下らないことを考えるのだが今日はそうとはいかない。同も気が乗らないのだ。

 だが電車の中となるとそうでもなくなってくる。広告を見てみたり、液晶ディスプレイに映されるニュースを見たりなど、案外することは有ったりする。スマホを使えば一発のこの時代にこの様に旧式の方法で時間を潰す俺は非合理的かもしれないが。それもまたいいと思う、人間合理的動いてばかりではつまらない、時には非合理的に動いてみれば新たな発見があるかもしれない。

 そう思っていると早速新しいことを発見した。

『九州と四国の各気象台が梅雨入りしたと発表。』

 こうやって見つけられる。

他にも、『スタジオジブリの食べるを描く』と言うイベントの開催予告広告も見かけられた。

こうやってネットなどで調べるのが合理的かと思われるが、検索やそれらを探すのが大変だ。ならばこうやって中吊り広告などで知るのが簡単な上に楽だ。

 読者の皆にもこれはおススメする。一度はやってみてもらいたいほどだ。

 そうやって新たな発見をした俺は自宅の最寄り駅に戻ってきた。相変わらず通勤客と学生客でごった返す階段付近を抜け改札を目指す。バスロータリーには毎日見かけるが演説する政治家、もしくはティッシュ配りの人の二択が交互でスタンバイしている。今日はどちらが居るかを予想してみる、それもまた楽しみなものだ。

自宅に帰宅し、俺は先日も言ったように部屋へ直行する。

直行?いや、今日はそれを妨げる刺客がいたことを追記しよう。

「おっ、我が弟よ!」

「あ、姉貴…」

俺はその状況を理解するまでフリーズした事は言うまでもない。

「どうして居るんだよ」

「どうしてって、留学から帰ってきたんだよ」

そう言えばそんな理由でヨーロッパとかそこら辺に行くって言ってたか。

浅野夏奈、某有名大学の学生。年齢は二十歳、スタイルの良い女性で初見の人からしたらモデルと見間違うのではないかと思う程だ。とでも言わないと姉貴にしばかれる。特技は空手、当時の県大会で県内優勝だったという記録もある程の腕の持ち主だ。姉貴に目をつけられたら最期だと思え。

そんな、姉貴の紹介を雑に済ませ。俺は荷物を置くのと着替えに自分の部屋に向かう。

着替えてから一家団欒の場リビングへと向かう。服装はグレーのスウェット、いつもどおりの部屋着スタイル。今日からはいつもより賑やかになるだろう。

「ねぇ、明日は球技大会だよね」

「そうだが、その情報はどのルートから入手したんだ」

「特殊なルートがあるんだよ、キミには知らないね」

 どんな闇ルートだというんだ。ま、まぁ、それらは置いておいて、今日は夕飯を食って、風呂入ってすぐにでも寝るとしよう。明日のエネルギー分をチャージしなければ明日倒れてしまう。

第四章です。

次回は21:00の投稿です。

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