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アキバヘ行こう!

さて、魔の三日間が終わり。今日は部活の無い休日。読者のほとんどはゆったりのんびりしたり、友人と過ごしたり、しなければならない事をする…等々、過ごし方は人それぞれだろう。俺は先の三つには分類されない。なんだって今は一人で『アキバ』に居るのだから。

「ふぅ、久々だな!」

今は朝の十時前、大概この辺りの店はこの時間に開き始める。まずは大御所ア●メイトに足を運ぶ。

初めにも言った気がするが、俺は隠れオタクだ。それに伴ってキャラも多少変化する。

ア●メイトでは真っ先に同人誌売り場へGO!これもアキバに来るときはいつも行なっている事だ。入店して階段を上がりいつもの同人誌コーナーへ直行する。

「えっと…」

求める同人誌を探し棚を順々と見ていく。

「おっ!あったあった!」

「あった!」

ん?俺の求めている同人誌に俺を含め二つの腕が…しかも左手、左手は俺の肩にがっちり固定されているはず…しかも肌が綺麗…女性か?

ゆっくりその腕の持ち主を見るために右へ視線を変える。

「あれ?浅野君?」

俺を呼ぶ声、見覚えのあるその姿。データベースと照合した結果完全に片瀬先輩と一致。

 あまりにも驚きを隠せず俺は素のリアクションを出す。

「先輩!」

驚きはあるが、事の重大さがイマイチ分かってない俺。それは先輩も同じだろう。

まぁ、落ち着こう…落ち着かなければ冷静な判断が出来ない。

「先輩は何故ここに?」

「えっと…おつかい!はじめてのおつかい!」

な訳あるかい、と俺は先輩にもう一度聞く。

「ホントですか?」

「いいえ…欲しい同人誌を買いに来ました…」

素直でよろしい。

「浅野君は?」

「俺も欲しい同人誌を買いに来たんです」

「もしかして浅野君って…俗に言う隠れオタク?」

「まぁ、その類に入りますね…」

はぁ…ついにバレてしまった…。バレたくなかった事選手権トップスリーに入るであろう事実。今ここに解き放たれてしまった。だがここで怯む俺じゃない。先輩に俺は先ほどされた質問で迎え撃つ。

「そう言う先輩もじゃないんですか?」

「た、確かにそうかもです…」

結論、二人とも隠れオタクである。

「浅野君!」

「なんです?」

「この事は誰にも話さないでね!」

俺は少し間を空けてから、先輩に同じ様なお願いを頼む。

「じゃあ…俺の事も話さないでください」

「もちろん!」

そんな訳で二人だけのヒミツが生まれた。その後だが、求めていた同人誌の在庫は一つだけ。もちろん紳士的な俺は片瀬先輩にその本を譲った。

「それはそうと、意外ですね。先輩にこんな一面があるなんて」

「意外って、人のこと言えるのかしら?」

 先輩の手元には同人誌が入った青い袋が歩くたびにゆらゆら揺れているのが見えた。他にももう一箇所ほどあるのだが触れたら俺の負けだと思うのであえてオブラートに包む。

そういわれてから考えてみると、「確かにそれはそうだな」。なんて思ってしまう、ビジュアル的には真面目君でしかない。周りにもそう言われる経験は数多くあったが。オタクと言われた記憶はほぼ無いに等しい。

「でも!こうやって同じ趣味持った人が居て良かった!」

「それは良かったですね」

「あれ?棒読みじゃん!」

ソ、ソゲンコトナカトデスヨ。

「そうだ!この後さ一緒に行きたいところがあるんだけど!」

「だからなんです?」

 俺の悪い癖が出てしまう、基本的に焦らすのを好む俺氏。悪い癖だと直そうとしているのだが癖とは一度ついてしまうとなかなか止めようとするのが難しい。

「もう!鈍いなぁ」

そう言って先輩は半ば強引に俺の手を引く。

「一緒に行きたいって言ってるじゃん!」

少し怒っているようだ。まぁ、俺の悪い癖の起こした事だがな。

その後は、先輩のとてもナイスな意見により、二人でひたすらにアニメショップ等を巡った。

正直に言うとすごく楽しかった。いつもは一人で回るのだから自分のペースで回れるが、一人だと退屈だ。だからこそ今日の事は新鮮で、なおかつ話しながら回れる、それだけでもう幸せだった。

気付けば夕方。楽しい時間はあっという間だ。

「それじゃあ帰りましょうか、時間もあれですし」

「そうだね」

駅へと戻る。先輩の最寄りは横浜方面、俺の最寄りは…表現し辛い、あそこは何も無いからな、頑張って表現するなら多摩川の少し上流側だろう。西東京の方までとは行かないが多摩川ら辺だという事しか言えない。どちらかと言うと、言っても多くの方々には分からないような場所しかないから言いにくいのだ。とりあえず言えるのは一緒には帰れない。途中までなら出来るがたかが数分の時間だ。

それもあり、今日は現地で解散することにした。

「今日は…ありがとうございました。」

「こちらこそ、急に誘っちゃって…」

確かにホント急だったな。

「いや、いい経験でした。楽しかったですよ」

「じゃあ!また…誘っても良いかな?」

「ええ、いつでもどうぞ」

まぁ、少し疲れたけど…こういうのもアリかもしれない。そう思えた瞬間だった。

その後は互いに自宅へと帰還し。明日の学校へと備える。明日からはまたいつも通りの日常へ戻れる…のだが、今日の事があったからどうなることやら。先輩、俺との約束守ってくださいよ。

あれから時は流れ二週間後、また先輩からの誘いが来た。この二週間の間色んな事があったが全て挙げる気にはなれない、ピックアップして話そう。

○一日目(月):察したとおり、先輩からの扱いが雑になった気が。

○六日目(土):部長からの意味不明なイタズラにより立場が上下逆転。

○七日目(日):ソシャゲのイベントの攻略。

○八日目(月):試験前により部活休止期間開始。

○十一日目(木):試験一日目。

○十三日目(土):試験終了。

○十四日目(日):今日。

とまぁ、こんな感じだろうか。山場である試験を越えてフリータイム!さぁ、アキバへレッツゴー!

待ち合わせはアキバの駅前に十時。着くには九時過ぎに出なければならない。毎度思うが都心行きの電車は休日でも混んでいる。乗り換え駅までの時間退屈だ。

そういえば、隠れオタクである必要性について話していなかったな。せっかくだし、時間潰しのためにも話すとしよう。

あれは中学生の時の話だ。



当時の俺は、オタク感全開の男子中学生だった。

よく見かけるだろう、鞄とかにキーホルダーとか付けてるアレ。俺のカバンはまさにあの状態だった。

勿論クラスの友人からはそのような事は否定されず、むしろ皆それをネタにいじっていた。皆から「オタ」なんて気軽に呼んでもらって、友人も多かった。一緒にアキバに行ったり、イベントに行く友人もいた。

けど…三年の文化祭の時に、あの出来事が起こった。制服や体格的に女子高生、ふと俺とすれ違った時に、かなりの声量で隣にいた友人だろうか、その人とこのような話をしていた。

「あれ見た?」「見た見た、ウケるわw」「オタクってヤツ?」「キモ〜いww」

一見、アキバの大っきなお友達を敵に回す発言にしかみえない。俺はこの言葉によって変わった。オタクである事を隠し、隠れオタクとして活動する、そう決めた。



そんな過去があったから、高校ではオタクである事を隠している。

気付けば乗換駅の渋谷だ、渋谷は苦手だ。若者の街、109、原宿、ギャル…あばばばば…。

俺は急ぎ足で若者の街渋谷を後にし、一路新宿周りでアキバへのアクセスを行う。

都会の電車内はどこを見てもサラリーマンか休日を満喫する家族、外国人観光客、リア充で満ち溢れている。一瞬ここが日本国であるか悩んでしまうほどだ。日本も変わったよ、若者言葉なる意味不明な言語が現れたり、ブラック企業やパワハラに怯えるサラリーマン。俺もいつしか、ブラック企業やらパワハラに怯える時が来るのか…、そう考えるだけで心が辛い。

そんな現代社会の問題と個人的な問題について思いつつ、またしても二度目の乗換だ。新宿駅、東京の五大ターミナル駅だ(個人的な意見です)。その広さ故に多くの初見さんを殺しにかかる初見殺しの新宿駅、そう呼ばれている(勝手な妄想です)。

それらを乗り越え、やっとアキバへ入国出来る。長かった…疲れた…。

だが、ここからさらに俺に追い打ちをかけてきた。

いざ、待ち合わせ場所にやってきた。けど、詳細は決まってなかったからラジオ会館の出口で待ってるが…一向に現れない…すでに待ち合わせ時間を過ぎている。そんな時先輩からの電話がきた。

『ねぇ!ここ何処!』

「知りませんよ…」

そりゃそうだ、電話越しにあなたの居場所が分かるわけがない。

「何処にいるんですか?」

『えっとね、アキバの駅前…』

「周りに何が見えます?」

『えっとね…ヨドヤバシカメラ…』

えっと?反対だよな?

「先輩、それ反対側です…」

『えぇ!助けてよ、私死んじゃう!』

そんなんで死んでたらこの世の中あちこち死体だらけだぞ…。

「それじゃあ、そっち向かいますから!動かないでくださいよ!」

『うん…待ってる…』

はぁ、迷子の娘を探す父親ってこんな感じなのだろうか…。

俺は急ぎ足で先輩の居る反対側、もといヨドヤバシカメラのある方へ向かう。次からは一人で来させちゃダメだな…絶対に一人にしたら大変だ…っていうより面倒だ。

幸い、数分で目的地に着き、合流出来た。

はぁ…疲れた…。

「ごめんねw」

「はぁ…はぁ…次からは一緒に行きましょう…二度目は起こしたくないので…」

「そうしてもらえると嬉しい!」

「意見が一致しましたね…ではそうしましょう……」

初回から息が上がってからのスタートって、こんな始まり方で良いのか…。

いざ、電気街口へと戻って来た俺たち一向。アニ●イトからのスタートかと思いきや少し手前のゲームセンターに連れ込まれる俺。

「あれ?こっちに用ですか?」

「うん!」

連れて行かれるままに先輩について行くとプリクラコーナーへ。

「先輩?そっちはプリクラコーナーですけど…」

「良いの!今日はこっちにも用があるの!」

どんな用だよ…。

「なんでプリクラなんですか?」

「そ、それは……うぅ…その…えーと…っと…」

さっきまでの勢いは何処へ…。

「友達と自然に距離を縮めるにはプリクラが良いって…ネットに書いてあったから…」

「それ、俺に言っちゃったら意味無いじゃないですか…」

 間違いない、だがプリクラなんて撮った事無い俺からしたらただのブラックボックスだ。

そんなブラックボックスもといプリクラでめちゃくちゃ写真を撮った訳だが、ここはゲーセン。アーケードゲームなどで対戦したりプライスゲームなどで、大いに盛り上がった。

それからはアニメショップ巡り!の前に食事タイム、無難に近くにあったファミレスにて済ませる事にした。他にもあるのだが…レベルが高い。メイド喫茶とかハードル高過ぎませんか?アキバデビュー三年目だが未だに入国はした事はない。気になるんだが、いざ入国となるとなぁ…。絶対に俺の書くラノベでメイド喫茶は登場させないぞ!でもプライベートでは行くかもだぞ!

「どうしたの?」

「い、いえ…なんでも」

「それにしても楽しかったね!ゲーセンであんなに楽しめるとは思ってなかったよw」

「俺も楽しかったですよ、まさかあんなに夢中になれるとはw」

そのせいか、先輩の隣にはぬいぐるみが一つ。俺の隣にはフィギュアが一つ。二つとも俺が取ったものだ。

「まさか浅野君がここまで上手とはねw これからも色んなもの取ってもらおうかな?」

「出来る範囲で頑張ります…」

流石にあそこでは本気になりすぎた。自粛しなければな…。

まぁ、その後は六時間ぶっ通しでのアニメショップ巡り、もちろん戦利品輸送は俺担当、両手いっぱいになる程にお互い買い込んだ。

「結構買い込みましたね」

「そうだね…財布の中が一気に軽くなったよw」

 そりゃそうだろう。俺なんか交通費分しか残ってないよ…。

「それじゃあ、これが先輩の戦利品です」

 そう言って色んなアニメグッズが詰まっている袋をいくつか渡す。

「うわっ…流石にものが多いと大変だね」

 確かに荷物の数が多いわりに物が小さいな…。

「じゃあ、これ使ってください」

 先ほど見つけた百円均一で紙袋を渡す。

「え?良いの?」

「良いですよ、こうなるかな?って思って買ったので」

「ありがとう!」

 手間のかかる人だ…。

「まぁ、こっちの方が良いでしょう」

「うん!断然こっちの方が良いよ!」

 確かにさっきよりも数は少なくまとまり、だいぶ楽そうだ。俺も同じように紙袋にまとめる。

「それじゃあまた明日ね♪」

「はい、また明日」

 分かれた後すぐに、先輩に追い打ちを掛けられた。

「明日原稿チェックするからね!」

 それを聞いた俺は慌てて百八十度回転し早歩きで先輩の方へ戻る。

「う、嘘ですよね?」

「ウソだよw 安心して、金曜日に確認するから」

「良かった…それじゃあ今度こそ…」

「じゃあね☆」

 はぁ…原稿出来てないから危なかった…。

 一波乱も二波乱も起こった秋葉原。オタクである事を隠し、休日は一人でいる事を好んでいたが。先輩と出会ってからは、今までのように一人ではなく誰かと一緒に行ける。それだけで嬉しかった。

 これからも、一緒に行けるといいな…。

 帰りの電車の車内、先輩と撮ったプリクラを見ながらそんな事を思った。

「先輩と出会えて良かった」

 そう思えた楽しい日曜日であり、記憶に残り続けるであろう特別な日となった。

第三章です。

次回は20:00の投稿です。

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