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虚空の竜騎士  作者: 上原太樹
8/15

打算によって集う者達

前回、次の舞台は東南アジアですと言いましたが、

前章と次章の中間になる小話ができてしまったので投稿いたします。

申し訳ありません。

本日中に正式な次章も投稿いたします。

 第31特殊航空戦術部隊は最後の攻撃が終了して帰投した。もう彼らに要求されるような任務は無くなった。また、戦果を望むことが出来るほどの戦力が残されていなかった。基地まで帰投できたのは新風やボリス、マーベックなど地上戦時に行動を共にした者達とヨウ三兄弟と他数人のみだ。撃墜したパイロットのほとんどは乗機と共に砂漠の砂の1つとなったようだが何人かはしばらくして救助された。


 駐機場で各々がヘルメットなど放りだし対Gスーツを着崩して激戦の疲れを取っていた。そんな中でもヘリコプターの周りをせわしなく人が動く。敵味方問わず負傷兵や救助されたパイロットが降ろされていく。少し前に飛んできたヘリには負傷兵が乗っていてすぐさま医務室に運び込まれたが今回は救助された敵のパイロット(捕虜)と味方のパイロットのようだ。完全武装したイスラエル兵士に囲まれて次々と降ろされていく。

 そんな姿も渡辺にとっては貴重な被写体だ。何せ彼は戦闘機に同乗すること要求したが基地司令や広報担当から許可が下りず、パイロット数人にも求めたが単座機であったり素人の同行を拒否したりと散々な結果となった。この前の基地防衛線のように近くで戦闘を行ってくれれば望遠レンズなどで撮ることが出来るが、今回のように敵基地まで行かれてしまうとどうあがいても戦闘の様子を取ることが出来ないのでとても残念。同じ戦場カメラマンとは違うものが取りたくて空軍の取材をしたのだが戦闘を写真にできる機会があまりにも少なかったのが残念だった。そのおかげで、とんでもないスクープを仕入れられてしまったのだが・・・

 降ろされていく捕虜の中には珍しく女性の姿があった。近年ではイスラム圏でも女性の社会進出が盛んになっている。今まで男性しかいなかった業界にも女性の姿が見られるようになってきた。それでも、軍隊の後方勤務ではなく前線勤務、補給・通信・医療関係ではなく戦闘関係に女性がいるのには驚きを隠せなかった。また、この捕虜の女性に向けられる目線は非常に多かった。

 その捕虜の女性はヘリから降りるとすぐさま多くの人の視線を感じたが彼女にとってもう慣れたことだった。どこに行っても注目の的にされる。それだけのことであった。周囲を見渡すとイラン空軍でも配備されている戦闘機が何機も見られたが珍しい戦闘機もあった。ミラージュF1に似ているがエアインテイクの形状など細かいところが異なっている。何よりこの砂漠地帯と言うのに砂漠迷彩ではなく緑色を主体にしたまだら模様の森林迷彩に塗装されている。彼女はこの支援戦闘機を過去2回しか見たことがない。一度目は日本に留学した時、二度目は作戦空域に移動中に離陸した基地を攻撃した敵機の追撃に参加した時でその支援戦闘機に撃墜された。自分を撃墜した戦闘機が所属している部隊の基地に連れてこられたことに驚いてしまった。そして、自分を撃墜した機のすぐそばにしゃがみ込んで空を眺めている男性に見覚えがあった。

「リュウ様~!」

 女性は大きな声を張り上げたが目当ての男性は無反応。何度か声を上げたが周囲にいたイスラエル兵によって無理やり引きずられて他の捕虜と同じように独房に押し込まれてしまった。


 食堂には様々な料理と数種類の酒が並びイスラエルの国旗も掲げられた。正式に戦争が終結し勝ちは決まったので祝勝会の準備が急ピッチで行われた。料理も酒も平和な日常でさえあまり見ない贅沢なものが次々と並んでいた。ほどなくして、一通り仕事の片付いたパイロットや整備兵たちがぞろぞろと入って来た。全員そろうと司令の挨拶で祝勝会が始まった。

 祝勝会が始まったとはいえ大して話すことなどない。適当に好きな酒をもらって乾杯して生きていることを祝いつつ新たな戦場の情報を交換する。そうでなければひたすら食ったり飲んだり。


(酒臭くて参ったな・・・)

 新風は最初の乾杯こそ居たが少し料理をつまむとすぐさま食堂を出て自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込んだ。彼だって生きていることはうれしい事であるが、本心からそのことを喜ぶことが出来なかった。

 この戦争のおかげでかなりの金額を送金することが出来たがそんなお金もすぐに消えていく。しばらくは余裕があるがあまり長くは待てない。新たな戦場を探してまた人を殺さなければ自分だけでなく家族まで生きてはいけない。非常に大きな重圧と十字架を背負いながら死の危険と常に隣り合わせの戦場に舞い上がるのは過酷と言う言葉で足りないぐらい過酷な事であり、まさしく身を粉にして精神さえもすり減らして大金を稼いでいる。パーティーで和気あいあいなどと言う気分にもなれない。ついでに彼は下戸。それも飲まなくてもアルコールの臭いで気分が悪くなるほど。酒に弱い体質どころか酒を完全に拒絶する体質なのである。

(う~、アルコールで気持ち悪い・・・頭痛い・・・)


「シャンパンおいしぃ~・・・って、リュウはどこ行っちゃったのよ!」

「乾杯の時にいたのは見たけど、そう言えば見ていないね。キム、リュウ見なかった?」

「さっき料理の辺りをウロウロしていました。」

 クリスティーナが早足で料理の並べられたテーブルに向かう。新風の姿が見えたと思った時には転倒してしまい持っていたシャンパンを頭からかぶってしまった。グラスが割れなかったのは幸運だが起き上った時にはもう新風の姿はなかった。

「ぷっはぁ~、勝利の後の酒は格別だ。何度やってもいい。」

「何度も経験できるようなことではないがな。」

「最高最高。」

「勝利の美酒は良いぜ。」

 素直に勝利の美酒を味わっている人もいれば勝利の美酒を存分に味わえず浮くような気分になれない人もいる。そんな人の集団の1つがヨウ三兄弟。勝利には貢献したがスコアは良くなかった。


 翌日。二日酔いで死んでいる奴がちらほら見られるがほとんどは通常業務についている。

 仕事と言っても大半は出撃準備ではない。機体をばらして輸送機や輸送車に積み込むか長距離飛行前の大がかりな整備を行っている。今まで命懸けの戦場を共に飛翔した愛機との別れを惜しむ者がいる一方新たな戦場に舞い上がる準備を行う者もいる。

 新風は自身の乗機を整備していた。ハンガーに入れたいところだがF-1の順番はまだ先のため自分で簡易整備を進める。機体全体についている砂を洗い流し、可動部分や操縦席内に入り込んだ砂も丁寧時取り除く。洗浄が済むと基地の電源につないで各システムを順番に起動して動作確認を行う。

「リュウ、自力でやられちゃうとこっちの仕事が減っちまう。たんまり稼いだんだから金を落としてくれよ。」

「・・・」

「やれやれ・・・」

「・・・」

「あ~・・・新しい戦闘機の件だが当分難しいぞ。全く、寄りにも寄ってアメリカ海―――」

「あ~、いたいた!リュウ、ちょっと話―――」

「・・・よくコケるねぇ~。」

「イタタ。う~ん、何でだろう?」

「・・・」

「・・・」

 ラノスは俺に聞くなよと突っ込もうと思ったが冗談でとぼけているようにも見えない様子に呆れるほかなかった。新風は何も気にすることなく淡々とシステムチェックを進め操縦席から降りてきた。降りてきたがすぐさまタイヤのところに行き空気圧を確かめる。

「そうじゃなくて、リュウ!ちょっと話があるの、一緒に来て!ついでにラノスも。」

「俺はついでかよ。散々まけてやったのに!」

「売価が高すぎるから値下げは当たり前よ。」

「なんだその言いぐさは!次から売ってやらないぞ!」

「それはやめてよ~。信頼できる死の商人なんてそうそういないのよ~。」

「言い方が気に入らねぇが、売ってやってもいいぞ。ただし、値段は割増だ。」

「そんなのやめてよ。お金が入る傍から消えちゃうお仕事しているから~。」

「だったら口のきき方を考えろ。」

「女性には優しく~。」

「この業界に男も女もあるか!」

 この間も新風はラノスとクリスティーナの話に耳を傾けることなく淡々とタイヤの空気圧やブレーキが正常か調べる。異常は見られなかったので汚れが残っている所をウエス出拭き始めた。

「遅いなあと思ったら案の定だな。」

「・・・ごめん。」

「リュウとボリス話がある。都合がよくなったら食堂に来てくれ。」

「何の話だよ。」

「互いに儲けるための話だよ。」

「なら行こう。」

「・・・」

「リュウも来てくれよ。食堂にいる。」

「なぁに首にひもを括り付けてでも連れてさ。」

「・・・(行かないわけにいかなくなったな。)」


 乾拭きを打ち切ってとラノスと共に食堂に入った。そこには十人ほどの人だかりがあった。傭兵生活に入ってから何かと顔を合わせることの多いパイロットたちでもあった。

「それじゃあ始めるとするか。」

 ボリスの話は傭兵による組織的な武装集団の設立の話であった。組織的な武装集団と聞くとどことなく宗教がらみの危険で異常な集団を連想してしまうでしょうが、本件はむしろ軍隊が行う活動を民間の会社が行う民間軍事会社PMCの設立の話である。現実の世界でも民間軍事企業は存在している。会社によって活動内容は様々だが中には危険な紛争地帯に社員を派遣している会社も存在する。

 もともとこの話を最初に持ち出したのはボリスではなくマーベックであった。理由は腕のいいパイロットがこんなにいるから別の戦場で敵味方に分かれたくないのが理由らしい。本音は新風やアレクサンドルなど優秀は戦闘機乗りとやり合って殺されたくないからだ。要するに自分が死にたくないのだ。それに、優秀な戦闘機乗りが集まればできることは自然と多くなるほか連携を取ることで被撃墜率も下げられる。組織を作る以上どうしても個人としての儲けは減るが生還して新たな戦場に行った方が最終的にはより多く儲けることができる。さらに武器商人のラノスも巻き込んでしまえば商売道具の供給ルートも確保できる。資金提供を要求されそうであるが、通常では入手困難な商売道具ばかりなので専門の購入手段を持つ人材も必要不可欠である。ラノスの側からも悪い話ではない。資金の提供先と安定的に受けられるほか商品を買ってくれる消費者を同時に確保できる。誰にとっても悪い話ではない。

 先に集まっていたメンバーはすでに同意していた。ラノスは部隊として得られた報酬から資金として提供する割合を上げることで同意したが新風はすぐには同意しなかった。

 新風にとっても魅力あるものではあったが自分の利益が大きく減ることを承諾することが出来なかった。彼の場合今回の戦争で得られた利益の半分を本国に送ってしまったほか残りはラノスに新しい戦闘機発注のための前金として支払ってしまっている。この戦争でかなり儲けていた新風でも傭兵団を設立するための資金を出せるほど余力はなく、今後も大金を確保し続ける理由から同意できない。

 このことを告げた新風は重い空気が流れる食堂を後にしようとするが、ラノスが傭兵団にはいるなら戦闘機の前金を減らしてその分を傭兵団設立資金にすると提案すると本人の了承もなく周囲が賛同して結成式と称してお酒がふるまわれた。食堂を後にしようとしていた新風はすぐさま捕まえられるが酒が出た途端拘束を振りほどいて食堂から飛び出した。

「全く、傭兵団最初のメンバー何だから結成式ぐらい付き合えってんだ。」

「人間性を疑う!」

「組織的な行動の問えない奴等入れる方が間違っている。追い出すべきじゃないか?」

「え~!」

「・・・」

「何かわけがあるだろうさ。」

(ありゃ、下戸だな。)

(それもかなりの重症・・・)


 食堂から逃げ出した新風だが特別やるようなことがないため自室でベッドに転がった。傭兵になってから訓練に戦闘だけでなく整備まで自分でやらなければならなくなってしまったので昼間からゆっくりできることなそうそうなかった。その久々の休暇を昼寝でつぶそうとすると基地内放送で呼び出された。

 新風が呼び出された場所は独房監視室であった。新風が到着すると困惑した司令や下士官たちがいた。

「来たか。」

「新風竜、ただ今出頭しました。」

「すまんが第12容している捕虜がお前と話したいと言ってこちらの話を聞かない。話を聞いてこい。」

「了解しました。」

「こちらです。」

 案内された先では手錠の付けられた女性がパイプ椅子に座っていた。

「リュウ様!」

「・・・」

「リュウ様、サインください!!」

「・・・面会終了。」

 顔色一つ変えることなくボソっと喋って席を立ち扉に向かう。同行している下士官や警備兵は唖然としてしまう。

「ま、待ってくださいリュウ様~!」

「・・・」

「リュウ様~。」

「このまま面談を終了されるとこちらも困るのだが・・・」

「・・・」

「・・・」

「はぁ・・・」

「・・・」

「あの・・・」

「要件。」

「イ、イラン・イスラム共和国空軍しょ、所属のナ、ナハール・テヘラニィ少尉ですぅ・・・お、お久しぶりですぅリュウ様・・・」

「要件。」

「は、はい・・・リュウ様のお供をさせてください!」

「いらない。」

「そんなこと言わないでほしいですぅ~。」

 この後は延々とナハールが故郷に戻りたくない理由を語った。要約するとせっかく戦闘機パイロットになれたのに帰国したら軍を辞めさせられて嫁に出されるそうだ。よくありそうな話で特別珍しい事ではないが本人はそれが嫌ならしい。この話の間、新風には興味がないらしく席を立とうとするとナハールは聞いてほしいと泣き叫んで懇願した。要件を確認した司令に判断をゆだねるとしてようやく解放された。現状を聞いていた司令や下士官たちはナハールの我が儘に呆れるほかなかった。


 ようやく解放された新風は再び自室に戻ろうとすると、今度は軽く酔ったマーベックに捕まって食堂に連れてこられてしまった。

「結成の祝いだから飲め!」

「・・・飲めない。」

「お祝いなのよ飲みなさいよ。」

「飲めない体質か?」

「・・・ああ。」

「そう言う事は行ってくれなきゃ困るわ!」

「うんだ、うんだ。」

「はぁ・・・」

「キム、こういうヤツは下戸つうんだ。無理やり飲ませると最悪死ぬぞ。」

「は、はい・・・」

「ま、リュウが飲めない体質と分かったから酒を薦めるなよ。それよりラノスら重要な話がある。」

「傭兵団を結成したのは良いがこの人数だと今までより装備を統一してくれねぇと仕入れる方が大変だ。そんで全員の意見を聞きてえ。」

「それならアメリカ製にしようぜ!」

「なんだと!こういうのはフランス製だろ!」

「何言っていらっしゃるの?ロシア製が一番よ。」

「この連中ならまずこうなるよな。」

「予想通り過ぎて止めてほしいんだけど。」

「参ったねぇ。」

「喧嘩は良い事ないぞ~。」

「勘弁してほしいぜ・・・」

「え、えっと・・・」

「・・・」

「とりあえず、NATO仕様かロシア仕様か決めましょう!」

 この辺りも出身国の影響が意外と強く出ている。アメリカ・フランス・ロシアと言ったら兵器輸出大国の一角を占め多くの市場に兵器を供給している。当然、条件さえ整えばライセンス生産も承認している。後有名な兵器輸出大国と言えばドイツと中国で注目されている兵器輸出国はスウェーデン・ノルウェー・イスラエル・南アフリカ・シンガポール・日本などが考えられる。要するに、独自の兵器開発を行っている国は注目される。

「あ、戦闘機は今まで通り仕入れてやるが、ミサイルとかをなるべく統一してくれ。」

「とすると、ロシア系の戦闘機の方はロシア製ミサイルを使うからいいとして問題はNATOの方だな。」

「めんどくさいから多数決にしましょう。」

「まずは視射程外空対空ミサイルだ。一人ずつ言え。」

「AIM-120C AMRAAM!」

「MICA-EM。」

「ミーティア。」

「IDRAアスピデ2。」

「ダービー。」

「Rb99。」

「AIM-120C AMRAAMだな。後は?」

「・・・」

「えっと・・・何でもいいです!」

「99式空対空誘導弾。」

「多いのはAMRAAMだな。視射程内空対空ミサイルはどうする?」

「AIM-9Xサイドワインダー。」

「MICA-IR。」

「AIM-132 ASRAAM。」

「IRIS-T。」

「パイソン4。」

「Rb74。」

「IRIS-Tだな。」

「・・・」

「え~っと・・・サイドワインダー・・・」

「04式空対空誘導弾。」

「AIM-9LサイドワインダーかIRIS-Tの入手できた方でいいな。」

「後は対地対艦ミサイルだな。それなら、マベリックかJAGM、AGM-88D HARM、AGM-84ハープーン、SLAM-ER、AGM-154 JSOWだな。」

「AGM-154 JSOWはアメリカ海軍ではミサイル扱いだが実態は誘導爆弾だからあとで検討させてもらう。」

「ストームシャドー、AM39エグゾゼ。」

SPEARスピア、Alarm、シーイーグル。」

「ガブリエル4LR。」

「タウルスKEPD350。」

「RB15F。」

「93式空対艦誘導弾(B)。」

「どれも有名どころだが調達しやすさを考えるとマベリック、ストームシャドー、AGM-88D HARM、AGM-84ハープーン、AM39エグゾゼと言ったところだな。後は、誘導爆弾と無誘導爆弾やロケット弾だな。無誘導兵器はいくらでもどうにかできるから誘導爆弾はどうする?」

「精密爆撃の代名詞であるペイブウェイシリーズは外せないだろ。」

「後はMk80系を利用できるJDAMも運用国が多いから外せないだろ。」

「余力があればSDB(小直径爆弾)やLGR(レーザー誘導ロケット)もほしい。」

「任務によっては高精度の精密爆撃も必要になるだろうから手に入るなら便利だな。」

「ペイブウェイやJDAMの使用できる機種が多いからなあえて聞くまでもないか。」

「おい待て!精密爆撃ならAASMハマーだ。先端にダブルカナードの誘導装置を付けるだけ。射程距離がほしければ尾端にロケットモーターも付けてミサイルとしても使える。こっちの方が便利だ!」

「そっちは余力があったらな。今のところラファール以外はあまり使われてないから優先度は下げさせてもらう。」

「余裕があったらレーザー誘導のグリフィンも!」

「あいよ。」

「リュウ、日本製のGCS-1はいらないの?」

「・・・91式爆弾誘導装置Ⅰ型は対艦攻撃用赤外線誘導装置。必要ないだろ。」

「そうだな、確かになくていい。防空能力があれば対艦ミサイル、なければ誘導・無誘導爆弾と使い分ければいい。あえて、対艦攻撃に特化した誘導爆弾を持つ必要性はない。だが、GCS-1にはそれ以上の問題がある。」

「?」

「もう生産していない。」

「あ!」

「そういうこと、仕入れそのものがほぼ不可能だから最初から除外という訳さ。」

「それと、海上を航行している艦艇への対艦攻撃を前提とした赤外線誘導装置が車両や施設に対して十分に機能する保証がない。」

「なるほど。」

「まともに生産されていない上に用途限定ではこっちも不安で仕入れたくない。」

「何でこんなにいっぱいあるんですか!」

「結局、使えれば何でもいいのよ。」

「ロシア製の確認もしておきたい。あそこは新旧多数の兵器があるからな。」

「そうだな、ある程度絞っておかないと在庫を抱えることになるからな。」

「空対空はR-73MとR-77とR-27の系統を基本にして、旧式すぎて対応しきれないときはR-60など使える物を調達して。」

「それと、MiG-31やSu-35の運用時にはR-33SやR-37もあったほうがいいな。」

「確かにSu-27やMiG-29以降の機種ならおおよそ問題ないな。爆撃機やAWACSなどの大型航空機を狙う場合はR-33系統のような大型ミサイルもあった方が安心だしな。」

「R-27には誘導部を取り換えるだけで赤外線・アクティブレーダー・パッシップレーダーなどに変えられるから空戦だけでなくSEAD(敵防空網制圧)にも使える。」

「こういうのは実戦では中途半端になりやすいが仕入れる側としては総量を抑えられるからありがたい。」

「後は戦車や野砲用の短射程空対地ミサイルはKH-29系統。対艦やスタンドオフ用にKh-59やKh-31の系統。でも、この辺は大きいからKh-35系統もあったほうがいい。」

「後はMk80系に該当するFAB系、ペイブウェイシリーズやJDAMに該当するKAB系、ロケット弾はいろいろあるが基本的には57mmのS-5、80mmのS-8、127mmのS-13のロケット弾で入手しやすい物を頼む。」

「ロケット弾なんてばら撒く前提の兵器よ。直径325mmもあるロケット弾もあるけど必要になることは少ないと思うのよ。」

「あいよ、調達しやすいものを優先するからあまり注文を付けるなよ。後は緊急脱出した後に使う護身用銃や地上戦闘用の装備だが、作戦機の装備を優先するからあり合わせになるのは勘弁してくれ。」

「その辺は仕方ないな。」

 結局、NATO系統とロシア系統の二系統でNATO系統は入手しやすい物を使うという結論セ落ち着いた。NATOでは兵器の規格が統一化されている為基本的にはどれでも付けられるのが幸いした(災いした)と言える。不満を持つ人もいるようだが、仕入れをする側はあまり種類を増やしたくないのでここらへんで妥協点とすることになった。


 しばらくは和気藹々と結成式を行う。ある程度お酒も回りだした頃になって司令が姿を現した。

「傭兵団を結成すると聞いてな。まったく、そんなことをするぐらいなら、我が国の国籍を取って入隊してもらいたいものだ。」

「やなこった。こっちは金がほしくてやってんだ。国を守る気なんてさらされないぜ。」

「全く、惜しいことだ・・・もういい、勝手にしろって、ここに来たのはそんなどうでもいい話じゃない。こいつを預かってほしい。今は捕虜だが本人の希望で公式には戦闘中行方不明という名目の戦死ということにする。」

「イ、イラン・イスラム共和国空軍しょ、所属のナ、ナハール・テヘラニィ少尉ですぅ。よ、よろしくお願いしますぅ・・・」

「え゛、イラン空軍・・・」

「とりあえず、理由を聞こうか。」

「・・・え、あ、はい・・・親にこれからはイスラムの女性も働くようになるといわて、空に憧れていたからぁ空軍の戦闘機パイロットになりましたぁ。そしたら、親に怒られましたぁ。そして、さっさと軍を辞めて結婚しろと言われましたぁ。私ぃの搭乗機がある内は訓練とかで逃げ回れましたぁ。でも、もう搭乗機が無くなったので無理やり結婚させられますぅ。このままでは、せっかく日本に留学して学んだ操縦技術が無駄になりますぅ。それに、親が結婚するように言った相手は20歳以上年上の保守的なイスラム教徒なんですぅ。仕事に就くどころか家から出してもらえなくなりますぅ。それなら、どんな空でも操縦技術を教えて下さったリュウ様と飛びたいですぅ。だから、傭兵団に入りたいのですぅ!」

「動機がすっげー不順。」

「まさかのリュウ狙い。」

「それ以前にこんな美人がリュウと知り合いだったのか!」

「なんでこんなイスラム娘がリュウ狙いなのよ!」

「クリスティーナもリュウ狙いね・・・」

「・・・」

(メンドクサイ。)

「いいんじゃねぇか。彼女が入って11人になっても4機1個小隊で2個小隊と3機の1個分隊が組める。」

「取り合えず入団を認めるでいいな。問題は技量のほうだが・・・」

「最低限の技量はあるだろう。何せ、イランで最新鋭機S100サエゲのパイロットだったそうだ。極端に低いということはないだろう。」

「それならとりあえず大丈夫だな。」

「それじゃ、改めて打ち上げと行こう。」

「あのぅ・・・傭兵団の名前は決まっていらっしゃいますかぁ?」

「そういえば。」

「決めてなかった。」

「くくく、俺たちの傭兵団の名称は―――」

 だが、マーベックの提案は全員から一斉に拒否。別の名称がマーベック抜きで検討され多数決を行って決定した。

次こそ、本当の第2章です。

戦場は予告通り東アジアです。

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