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放課後、雑談タイム

「……実は……優と付き合うことになりました」



 真秀、陽くん、剛くんの三人に報告する。黙っておいても良かったんだけど、そのうちバレそうだったから先に言っておくことにした。


 優にも三人に話す許可は貰った。既に琴音ちゃんには知られてるし、隠すこともないだろうということになった。



「おお〜! やっとつきあったんだぁ!」

「良かったな、透にも春が来て」

「……裏切りもの……許さないぞオレは!」



 三者三様の反応だ。既に麗華さんという幼なじみの彼女がいる陽くんは、驚いた素振りを見せつつも素直に良かったね〜っと祝福してくれた。


 真秀はなんとなく勘づいていたのか、特に驚く素振りもなく軽く笑ってからかうように。


 剛くんは親の仇でも見るような目で僕を見ていた。地獄の底から響くような声だった。……妖怪みたいでちょっと怖い。



「くそっ……これで彼女なしはオレとシンだけか!」

「いや、悪いが剛二。俺は鈴原と付き合うことになったから、彼女持ちだ」


「「「えっ?」」」



 僕ら三人の声が被る。えっ、いつの間にか琴音ちゃんと付き合ってたの? ぜんっぜん知らなかったんだけど……えっ、いつから!?



「つ、つつつ付き合っ……!?!?」

「まーくんが……?」

「真秀が……?」

「信じられないものを見るみたいな目をしてるな……嘘じゃないぞ」



 本当に付き合ってるのか。え、なんで? 動機は? なんかもう色々気になることがありすぎる。陽くんもぽかんとしているし、多分僕と同じことを考えているはずだ。


 剛くんなんて驚きすぎて、ずっとぼそぼそなにか呟いている。途切れ途切れに聞こえる単語が物騒で、怖さが倍増している。なんか、呪い始めてない? 怖っ。



「オレだけ……? オレだけが独身なのか……!?」



 急に剛くんが叫んだ。剛くんの隣にいた陽くんがその声に驚いたのか、ビクッと体を震わす。化け物でも見たような顔をして陽くんは距離をとった。



「え、えっとまーくんもおめでとー!」

「おお」

「オレは、おめでとうなんて言わないからな!!」

「あらぽん……嫉妬は醜いよ……?」

「うるせー! つーか、真っ先に彼女ができたお前に言われたくねぇ!!」

「うわぁっ! こっち来ないでよっ! 鼻水出てるしあらぽん汚いー!」



 割と本気の右ストレートを剛くんにお見舞いしていた。ゴスっという鈍い音が聞こえた。剛くんが床に沈む。あれ大丈夫かな、剛くん生きてる?



「とりあえず二人ともよかったね!」

「あはは……まあね」

「そうだな」



 手をパッパッと振り払って、汚れを落とす動作をしながらニコニコと笑って言った。剛くんは沈んだまま、反応がない。



「ねぇねぇ、ボク二人の恋バナ聞きたい!」

「えっ!? 僕は恥ずかしいからやだなー」

「俺も……そんないうこともないしな」

「えぇ〜、二人ともケチー!」



 そんなこと言われても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。言いたくない。



「まーくんはとおるんの話、気にならないの?」

「うーん……鈴原から大体のことは聞いているからな。それっぽい相談も透から受けてたし……」

「えっ、ちょっちょっとまって! 琴音ちゃんから聞いたの!? 嘘でしょ!?」

「本当だ。あ、鈴原からバラしたわけじゃないぞ。俺が誘導尋問した」

「はあ!?」



 なんでそんなことをしたんだ。そんなに僕の話気になる!? 誘導尋問とか、卑怯な手を使いやがってこいつ。



「えぇ、まーくんだけ知ってるのずるい〜! とおるん、僕にも教えてよ〜」

「真秀だけ知ってるなんてずるいよ! 真秀も馴れ初めを話せ!」

「はいはい、店の中だから静かにしような」



 口にポテトを突っ込まれた。こんな強引な黙らせ方ある!? 美味しいけどね、このポテト。ふにゃふにゃで柔らかいけど癖になる味と食感だ。



「ま、鈴原とのことはいずれ話してやるよ」

「あー、言ったねまーくん?」

「絶対忘れないからな真秀」

「オレなんか録音しておいたからな!!」

「うわぁっあらぽんが復活した!?」

「おいっ! なんで距離取るんだよ!!」

「うるせぇ、今度は左頬殴るぞ」

「ごめんなさい陽麻様」

「許してあげる〜!」



 剛くんが加わったことで、騒がしさが一段と増す。やっぱり癖が強いなぁ。いると存在感が強い。剛くんに対する陽くんの反応も面白いし。真秀のツッコミも面白い。


 たった半年くらいしか過ごしてないのに、すっかり会話や流れができあがってるんだよなぁ。テンポ感やノリが完成している。



「なにニヤニヤしてるの、とおるん」

「一人で笑ってるの怖いぞ!」

「いや……なんか、入学する前と色々変わったなぁって思ってさ」

「どうしたんだ透。感傷に浸るような場面だったか?」

「だって初日とかどうしようって本気で思ってたんだよ。でもさ、みんなと友達になれて、まぁ、その……彼女もできてさ。ああ、僕が欲しかった青春が手に入ってるなぁって……」



 毎日楽しく過ごせているのは彼らがいるからだろう。もちろん、優や琴音ちゃん、麗華さんも。友達が多い人からすれば、少ないと思われるかもしれないけど。だけど、僕にとってはちょうどいいくらいだ。


 みんな優しいし友人に恵まれている。特に陽くんや剛くんと引き合わせてくれたのは真秀だし、真秀がいなかったらこんな風に話せていなかっただろう。



「確かに……クラス違うのにいつの間にか仲良くなって、遊ぶようになったね〜。麗ちゃんとももっと仲良くなれたし……正に、青春真っ只中って感じ!」

「透、最初は本当に俺くらいしか話す人がいないって嘆いてたしな。……俺も俺で最初は話し合う奴いなくて戸惑ってたし。かなり良い方に変わったかもな」

「だな! オレも毎日楽しいぞ! まぁ、彼女はいないけどな!!」



 みんなが笑って話す。


 目指していた理想の学校生活はもう手に入っている。僕を見ただけで元不登校って当てられる人いないんじゃない?


 運動神経がゴミだとからかわれることもあるし、体育の時間は辛いし、真面目にやってるのに先生に怒られるし、学校行くの辛いなぁってあの時は思ってたけど。


 環境が変われば、全然変わるんだ。僕自身は何も変わっていないし欠点も多い。


 でも今いる友達はそんなこと気にせず笑い飛ばしてくれる。意外と、僕のことを好きになってくれる……優みたいな彼女もいる。


 それだけで、こんなにも違う。



「……これからもよろしくね!」

「当たり前だろ」

「もっちろ〜ん!」

「オレこそよろしくな!」



 まだまだ学校生活は長い。直近に国内学習もあるし、二学期が終わったら冬休み、三学期は短いけど球技大会もあったり卒業式もあったり。


 二年になったら修学旅行もある。文化祭や体育祭は二回目だけど、きっと楽しいだろう。真秀達はクラス替えがあるから、新しい交友関係ができているかも。


 三年になったら……まだ、先過ぎて分からないな。


 だけど、僕らの関係性は変わらない気がする。たとえ変わっても、きっと辛いだけじゃないだろう。いい変化だってあるはずだ。



「あっ、ねぇねぇこのあとさ……」



 陽くんが思い出したように話し出す。最近できた猫カフェに行きたいらしい。みんなで行かない? という誘いに僕達はOKを出した。


 ……これも青春の一つだなぁ。放課後、みんなでだべって思いつきでどこかに行く。


 きっと、これから先、色んな小さい青春を体験していくんだろう。



「楽しみだな」



 ぽつりと小さく呟いた。


 ワイワイと騒がしく話している三人には聞こえなかったようだ。僕は三人の会話に加わって雑談を始めた。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。この作品はこれで完結になります。最後までお読みくださりありがとうございます。

よろしければ、感想や評価など反応がありますと大変嬉しいです。

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