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告白

 やっと放課後になった。一日長かった。体育もあったしちょっと疲れた。何はともあれ、昨日の手紙にあった放課後になった。とはいえ、結構まだ周りに人がいるからもう少し経ってから行こうかな。



「……今更だけど、イタズラだったりしないよね?」



 これだけ真に受けておいてイタズラや嘘だったらすごい嫌だ。でも本当の告白なら無視するのは絶対ダメだしね。どう返事するとしてもちゃんと言わないと。


 一時期、嘘告っていう嘘の告白をするみたいなのが流行ってたけど、あれは面白くもなんともないよね。小学生の頃だし特に好きとか分かってないからだったんだろうけどさ。付き合う概念なんかよく知らなかったし。ま、高校生にもなってする人なんかいないだろうけど。


 のんびり帰る準備している間に大体の人が教室からいなくなった。あまり待たせるのも悪いしそろそろ隣の教室に行くか。



「あ……」



 扉を開けて中に入ると見知った人がいた。校外学習で同じ班だった、クラスメイトの伊藤真奈美ちゃんだ。



「そ、そのぉ……手紙、読んで来てくれたんだよね?」

「え、あ、うん」



 校外学習以降、話すことはそんなになかった。文化祭や体育祭で少し話したりはしたけど、事務的な会話がほとんどだった。



「なら、もう知ってると思うんだけどぉ……そのぉ、ね……? 好き……って、こと」

「う、うん」



 途切れ途切れに目をそらしながら真奈美ちゃんは言う。心なし顔が赤いように見える。そりゃ、告白なんて恥ずかしがらず堂々とできる人の方が珍しいだろう。



「えーとぉ……あの、そのぅ……つ、付き合ってくれないかなぁ……って……」

「それはその……ごめん」



 口をついて出たのはその一言だった。色々考えていたけどそれ以上は言葉にならなかった。



「だ、だよねぇ……でっでも、友達としてはこれからも話してくれる……よねぇ……?」

「うん。それはもちろんだけど……よろしく」

「ありがと。じ、じゃあまた明日ね!」



 真奈美ちゃんはそのまま振り返らずにドアを開けて走っていった。最後の方、声が震えていたように聞こえたのは僕の気のせいかもしれない。


 なんとなく気まずい。明日学校で会うの考えると少し複雑な気持ちだ。



「なんか……変に冷静だなぁ」



 昨日はドキドキしたりそわそわしたりしていたけど、いざとなったらやけに落ち着いていた。嬉しいとかそんなことは全然思わなくて、ただ断るタイミングを伺っていた。少しも付き合うという考えが浮かばなかった。



「もしかして僕って、最低……?」



 正直、少し面倒だなって一瞬思った気がする。気がするって自分のことなのにあれだけど。はっきり感じたわけじゃないから断言できない。だけど、ゲームでひたすらレベル上げしないといけない時みたいな、同じ作業をずっとしている時みたいな、そんな気持ちになった。多分、これは好意的な感情じゃない。


 自分が嫌な人間に思える。あれは好意を伝えてくれた人間に対して思うことじゃないだろう。



「あれ、空き教室で何をしていたんですか?」



 教室から出たら優がいた。もう先に帰ったと思っていたからここにいてびっくりだ。というか、さっきの見られてないよね?



「な、なんでもないよ? ちょっと入ってみただけ」

「へぇ……なんか猫みたいですね」

「え、猫!?」

「猫って箱とかクローゼットとか色んなとこによく入るじゃないですか」

「えぇーそれとこれは違うよ」



 好奇心や修正で入る猫と僕は違うだろう。僕は一応用事があったわけだし……。それを優に言ってないからなんとも言えないけどさ。



「あ、そうだ。真秀さんが待ってましたよ」

「真秀? ああ、今日は部活ないのか」

「いつも一緒に帰ってるんですね」

「うん、真秀が予定ない日はね。ま、僕の家すぐそこだけど」

「ふふ、本当に仲良いですよね」

「幼馴染だからねー」



 優とは会話がしやすい。ぽんぽん会話が進むから気を使わなくて楽だ。真秀達とも話しやすいけど、また違った話しやすさがある。



「あ、私先生に呼ばれているので」

「職員室いくの?」

「はい。ちょっと……テストの件で……」

「ああ……。頑張ってね」

「はい……ではまた明日」

「うん、またねー」



 優、勉強苦手だったんだっけ。今回は特に頑張ってたみたいだから大丈夫だと思ったんだけど良くなかったのかな。良い結果だといいけど……先生に呼ばれるのは怖すぎでしょ。



「遅かったな、透」

「ごめん真秀ー」



 教室に戻ったら真秀が窓枠に腰掛けていた。携帯から目線を上げて僕に話しかけてきた。



「用事があるなら連絡しろよ」

「んー、少しだからいいかなーって」

「ま、別に気にしてないけどな」

「さっすが真秀は心が広いなー」

「おお、清々しいまでの棒読みだな」



 携帯をしまって立ち上がり歩き出した。悠々と歩いている。


 本当に全然気にしてなさそう。いつも僕が遅刻しても特に何も言ってこないけど、イラッとしないのかな。飯奢れよーで終わり。あ、そもそも遅れたらやばい時は家に来るもんな。



「ねー、真秀この後暇?」

「ああ暇」

「僕の家寄ってかない?」

「久しぶりだな。透から誘ってくるの」

「だって最近忙しそうだし」

「俺に気を使ってたのか。透らしくないな」

「えっ酷くない?」

「別に普通だろ」



 学校からすぐそこだからもう着くっていうか話してるうちにもう着いたんだけど、すごい我が家みたいに家に入ろうとしてるよ。手慣れてるよ。


 もう普通にお茶の用意してる。普通に冷蔵庫開けて、普通にお茶注いでテーブルに持ってきた。立場逆じゃない?



「で、相談でもあるのか?」

「えっなんで!?」

「なんでもなにも……昔から自発的に家に誘う時は何かあった時だろ」

「いやー、相談ってほどでもないんだけど。ちょっとね真秀に聞きたいことがあって」

「やっぱりか。最初からそのつもりだったし遠慮せずに言え」

「うん。実は……」



 真秀に色々話してみた。名前は伏せたけど告白されたこととかその時思ったこととか。あと真秀の恋愛経験も聞いた。好きって何? って聞いたら真秀の恋愛経験の話になった。中学の時からめっちゃモテてた。初めて聞いたんだけどなにそれ? 割とドラマみたいなこと起きてるけど今まで何も言わずにやり過ごしてたの!? そっちの衝撃で僕が話したこと自分で忘れそうなんだけど!?



「俺のことはどうでもいいだろ。脱線しすぎだ」

「どうでも良くないよ! なにサラッと爆弾発言してるの!?」

「五月蝿いな。大きい声出すなよ」

「え、だってさ」

「とにかく! 告白されて何も思わなかったんならそいつのこと好きじゃなかったんだろ」

「えっえぇーうん……まぁそうなのかなぁ」

「どうでもいいやつに好かれて何も思わないのは普通のことだろ」

「へぇ……真秀もそうなの?」

「だからなんで俺の話を聞き出そうとするんだ」



 だって気になるし。昔から自分のこと話さないんだもん真秀。ちょっとくらい教えてくれてもいいのに。



「はぁ……つーかさ、好きな人がいるからじゃないのか?」

「えっなにどういうこと?」

「だから、気になってる奴がいるから他の人に何か言われても違うなと感じるんじゃないかってことだよ」

「えぇー、だって好きな人いないよ?」

「気づいてないだけとか? ま、本当に恋愛に興味が無いっていう可能性もあるけど」



 すっごいだるそうに言われた。というか真秀めっちゃお茶飲むじゃん。喉乾いてたのかな。秋になったとはいえまだ暑いから? もう三杯目飲もうとしてるけど。めっちゃ飲むじゃん。



「なんか元気なさそうだから聞いたら思ったより深刻じゃなかったな」

「ごめんね!? こんなことで時間取らせて」

「別にいいけど……ちょっと面白かったし」

「なに人が悩んでるのを見て楽しんでるの!?」

「いや……そういうこと気にすんだなと思って」

「真秀は僕を一体なんだと思ってるの?」



 答えずにお茶を飲むな。なに聞こえなかったみたいな顔してるんだ。そんなにお茶飲んでお腹壊さないのかな。絶対お腹たぷたぷでしょ。



「あー真秀に話したらなんかすっきりしたや」

「慣れないこと起きたから驚いただけだろ。考え込んでるから何かと思ったわ」

「ごめんって」

「剛二に言ったら羨ましがられるぞ」

「ああ……剛くんは、確かにそうかも」



 陽くんに彼女ができて羨ましがってたし。彼女欲しいから公立に来たとか言ってたしね。



「あ、真秀。せっかくだからゲームしていく?」

「いいな。久々にあれやろうぜ」

「懐かしー! それ昔めっちゃハマったよね」



 この日は真秀とゲームをやって解散した。告白されたり真秀のヤバめな恋愛経験を知ったり衝撃的な一日だったな。

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