元不登校仲間との出会い!
僕は今……たいして困ってない。さすがに毎回
困ってたら大変だよね。
まあ、悪夢のスポーツテストから帰ってきて昨日1日、死んだように寝てたんだけど、いまの時刻5時2分。めっちゃはやく起きちゃった。
学校へは8時20分ぐらいにでればホームルームに間に合うから……あと3時間以上あるな。
うーん……特にすることもないなぁ。
というか、何も出来ない。実はさ、全身筋肉痛で動けないんだ。起きた時に動こうとしてベットから落ちた。日ごろから運動しておけばよかったと後悔してる。
後悔しても、多分やろうとしないけど。
「早めに学校行ってみるか〜」
今思ったんだけどいつもより時間かかるだろうし(筋肉痛のため)、早く行っても開いてるよね。
そう思って準備して家を出たのが6時。1時間ほどかかってる理由は……分かるよね?
思ったより動けなかった。……すっごく痛い。
「ひまだなぁ……」
そう、早めに来たんだけどすることが無かった。ちなみに着いたのは6時半。ざっと30分かかった。理由はもうご存知の通りです。はい。
それにしても、ひますぎる。二度寝するにも昨日1日寝てたし目が覚めてる。誰か、話し相手でもいればいいんだけどなぁ……。
[ガラガラガラッ]
ん?タイミングよく誰かきた。よし、話しかけてみよ。
「あ、おはよ……」
「あ、あの! 私のこと覚えてませんか!?」
……え?
挨拶しようとしたら質問された。しかも質問は私のことを覚えていませんか……?
うん?んー…………あ!
あの子は確か…………
「自己紹介のとき僕と同じ噛み方した子!!」
あの時のギャル(見た目だけ)だ。中身はものすごくおとなしくてクラスでもいわゆる陰キャポジションだ。
でも、それ以外で何か関わりあったかな?
「た、たしかに同じ噛み方でしたけど…そういうのではなくて。あと私の名前は柚山優です!」
ゆやまゆう……? なんか随分昔に聞いた名前のような気がするけど、なんだっけ。
少しの間沈黙して、記憶を遡っていくと思い当たる節があった。そうだ、確かこの子は中学の時同じ学校にいた、僕と近しい境遇の人。
「元不登校仲間の柚山さん!?」
「はい。というか元不登校仲間ってなんです……?」
「え、そのままの意味だよ? ところで、ちょっと聞きたいんだけど、何その髪……グレたの!?」
あんまり仲が良かったわけじゃないけど僕が知る限りこんなに明るい髪色じゃなかったと思う。ちなみに元不登校仲間とは僕が勝手に呼んでいるだけだ。
同じ中学校の同じ不登校仲間だから。
ああ、だから同じ噛み方したのかな? 僕と同じ感じで。こう考えるとすごい親近感を感じるね。
「ち、違います! これはその高校デビュー、をしようとしたら失敗しちゃって……」
「なるほど。イメージを変えようとして失敗したんだ。ま、イメチェンとしては成功してるよ?」
ある意味それは成功してると思う。だって実際分からなかったくらいだもん。……本人がやりたかったのはもっと別の感じだろうけど。
「う、そんなにはっきり言わないでください…。しかも嫌味付きですし」
なんか機嫌を損ねたみたいだけどまぁ良いか。
「いやー、同じクラスに知ってる人いて良かったよ!これからよろしくね〜」
こういう時は逃げるに限る。
「会話を終わらそうとしてもダメです。逃がしませんよ、透くん」
柚山さんは逃がしてくれなかった。話し相手がほしいとは思っていたところだし、案外気さくに話せそうだからこれはこれでいいかもしれない。
「ごめんね。それはそうと、ゆがわさんだっけ?」
「違います、柚山です! もう忘れたんですか!?」
「うん」
「即答ですか!?」
ふざけると律儀にツッコミを入れてくれるあたりが優しいと思う。でもそろそろからかうのを止めないと本気で怒られそう。
「ごめんごめん。本当は覚えてるよ。柚山さん」
「うー、からかうのやめて下さいよ……」
「そういえばさ、その髪型ってヒトデをイメージしたの?」
「ひ、ヒトデ!? そうじゃなくて、もっとオシャレな感じにしようとしたら……」
「失敗したんだ」
「そんなはっきり言わないでくださいよ。気にしてるのに……」
いじけてしまったので少しフォローを入れつつ話を変えることにした。ちょうど気になることもできたところだったし、その話題にしてしまおう。
「柚山さんって僕のこと下の名前で呼んでるけど僕も下の名前で呼んだ方がいい?」
こないだ鈴原さんと話したとき、さん付けって他人行儀だって言われたんだった。しかも柚山さんとは一応、古い付き合いなわけだしね。
「うん。で、できれば優って呼んでほしい……かな」
「わかった。じゃあこれからは『優』って呼ぶね」
「う、うん……」
まさか呼び捨てになるとは思わなかった。今まで幼なじみ以外を呼び捨てにしたこと無かったから変に緊張する。
「じゃ、そろそろホームルーム始まるので席に戻りますね」
「うん。また話そうね、優」
「はいっ!」
話せる人ができて良かった。あまり中学時代話したことは無かったけど、見知った人がいて安心した。
「きりーつ、気を付けー」
「れーーい」
「「「「おはようございまーす」」」」
……気づいたらみんな来ててホームルームが始まる時間だった。まさか、もうホームルームが始まる時間だったなんて。1時間以上話してたとは思わなかったけど、朝早く学校来たら元不登校仲間と出会うとか早起きは三文の徳とはよく言ったものだね。
それにしても優、見た目意外は普通にいい子っぽそうだったのになんであの子不登校だったんだろう。まさか僕みたいに運動音痴過ぎて学校行くまでが辛いから、なんて理由じゃないだろうし、というか運動神経は格段に良かった記憶がある。やっぱりありがちな人間関係なのかな。でも中学校の時友達とは仲良かった気がするんだよね。
なんとか今日一日乗り切った。授業はまだ簡単だし、何より体育がなかったのがよかった。体育あったら今日死んでたよ。病名は筋肉痛によるショック死。
……最悪だ。死んでも死にきれない。
「おい、透。今日一緒に帰ろうぜ」
あ、真秀だ。真秀とはクラスが別になっちゃたから学校ではあんまり話すことが無かった。そういえばアイツのせいで学習会実行委員とかいうものをやるハメになったんだった。とりあえず殴っておこう。
「どうして突然目の前で俺に飛びかかろうとして転ぶんだ。頭大丈夫か?」
「いや、殴ろうとしたら置いてあったカバンに引っかかって転んだんだよ。あと頭は大丈夫。真秀よりはいいから」
盛大に転んだ上に呆れ顔で真秀に助けられて情けない気持ちでいっぱいだ。穴があったら入りたい。
「なんで殴ろうとするんだ。そもそも殴ろうとした所で当たらないし、当たっても痛くないからな。なんの意味もないからやめろ」
「意味ならあるよ、 僕の気が晴れる」
「結果転んで怪我が増えてるけどな。というかいつもそれで俺が助けてるだろ」
真秀の言う通りだから何も言い返せない。そういえば僕何かあるたび転んだり滑ったりして真秀に助けてもらってたんだった。でも僕には一つ真秀に言っておかなければいけないことがあるんだ。
「あのさ、学習交流会って何。しかも実行委員って何すればいいわけ? 真秀のせいで僕もやることになってるじゃん!」
「あの時聞いてなかったんだな。面倒だが一応簡単に説明するとだな………」
「…………ふむふむ。なるほどね」
要約するとテスト前に一度、特進クラスやその他のクラスを含んだ学年での勉強をする交流会がある。
それを取り仕切るのが、学習会実行委員の僕と真秀。それでやることはというとその学習会での教師役、ということみたいだ。
そして、その学習会があるのが2週間後、それまでにどこを教えるのかとか学習会に使う参考書などの資料をまとめたりする。……ということらしい。
「お前頭いいんだから、教えるのぐらい出来るだろ。それに資料の用意とかは俺がするから、大丈夫だろ」
「僕、一応元不登校なんだけど」
「お前のは運動音痴を理由にしたサボりだろ」
返す言葉がありません。まぁ、僕には真秀もいたし、勉強もできる方だったからね。学校行かなくてもどうにかなるよって親にいって不登校を貫いてたんだけど。僕には1時間も歩くのは辛すぎたんだよ。
「まあそれについてはまた今度話すか。ところで、明日って休みだろ? 久しぶりに遊ぼうぜ」
「うーん、行きたいんだけどさ…身体が筋肉痛で動けないんだ。だからやめとこうと……」
「甘いもの食べに行こうと思ってな」
「行く!」
言ってなかったけど僕は甘いものが大好きなんだよね。ただ、1人だと行くまでに疲れちゃうから。真秀と一緒に行くことが多い。一緒に行くというよりも引きづってもらってると言っても過言ではない。
「じゃまた明日な〜」
「うん!また明日ね!」
というわけで明日は久しぶりに真秀と一緒に出かけることになったのだった。