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体育祭編4

「夢咲くん、大丈夫?」

「透くん怪我の具合はどうですか?」



 治療を終えて自席で大人しく座っていると、優と琴音ちゃんから心配そうに尋ねられた。ちなみにこの質問は三回目だ。さっきからずっと気にかけてくれているらしい。



「まぁ……見た目ほど痛くないから大丈夫だよ」

「そうなの? かなり抉れてるけど……」

「見ているだけで痛そうです」

「あはは……」



 これ以上、僕の惨たらしい足を見せておくわけにも行かないし、長ジャージ履いておこうかな。下だけだとダサいから上も着よう。真夏にこれはめちゃくちゃ暑いけども。仕方ない。



「夢咲くん、暑くないの?」

「うーん……暑いけど見てると痛いから隠すことにした」

「確かに、怪我って見ると余計痛くなったりしますよね」

「そうそう」



 鞄からジャージを取り出し、いそいそと着替える。……やっぱり暑い。腕まくりだけしておこうかな。腕は比較的無事だし、見えてても大丈夫だろう。



「と〜おるんっ!」

「うわっ!? 陽くん!」

「俺もいるぞ、透。あと剛二もな」

「さっきぶりだな、トウ!!」

「真秀に剛くん!」



 やっぱりこのメンバーが揃うとしっくり来る。短い期間だけどすっかり仲良くなったんだなぁ、僕達。



「……ってあれ、皆長ジャージなんだね?」

「そりゃそうだろ。ルールなんだから」

「もうすぐ男子の棒引きだからねぇ〜」

「トウは無理するなよ!」

「え、棒引きってまだじゃない?」

「何言ってんだ。これの次だろ」

「嘘でしょ!?」

「とおるん、女子ばっかのクラスだから勘違いしちゃったぁ〜?」

「なんだ、ドジっ子狙いかトウ!?」

「ち、ちがうよっ!」



 そっか……棒引きって男子と女子で分かれているんだった。特進科僕だけじゃん。真秀達がいるからまだいいけど、友達いなかったら地獄だったな。



「ここから直接グラウンドに行って種目が始まるし、一人だと心細いだろうってことで迎えに来たんだ」

「……真秀、君はなんて優しいんだ……」

「とおるん、真秀だけじゃなくてボクも優しいよぉ〜!」

「そうだね。陽くん、優しいよね」

「そうだよぉ〜っ!」

「無駄話してないでいこうぜシン達!!」



《一学年種目、棒引き! どのチームも頑張ってください!》



 棒引きは全部で三回。赤対白、白対青、青対赤だ。僕達は赤組だから一回目と三回目。



「よぉ〜し! 頑張って棒をぶんどるぞぉ〜!!」

「気合十分だな、ハル!」

「ま、怪我しない程度に頑張るか」



 各々が棒引きに対しての感想を述べながら、ピストルの合図を待つ。審判であろう先生がピストルを上にあげて引き金を引く。瞬間、空気が弾ける音がして……みんなが一斉に走り出した。



《両者、自陣にある棒を立ててください! ……勝者白組っ!!》



「「「わああああっ!!!!」」」



 え、やばいんだけど、白組やばいんだけど!? マッチョじゃん! あれはもうマッチョじゃん!!


 もう比べるまでもなく白組の勝ちだったよ? だって赤組三本だけなのに、白組十一本だよ!? おかしいって。しかもまた僕、砂で体を削られる砂卸すなおろしの拷問受けたんだけど! もうヤダっ!!



《またもや、白組の勝利!》



 あ、気づいたら二戦目終わってる。白強いなー。もう怖いなぁ……何が怖いって圧倒的パワーによって為す術もなく転がされ地面に引きずられるのが怖いなぁ……。



《それでは、青対赤……頑張ってください!》



 ピストルの音が鳴る。


 皆が走り出して、棒を掴む。全員必死の形相。


 ――僕が覚えているのはそれだけ。


 気づいたら終わっていた。ちなみに勝ったのは青組。赤組はボロ負けだった。白組にも青組にも負けた。



「……むぅ〜、頑張ったのにぃ〜」

「まあまあ、元気出せ陽麻」

「ハル、一番活躍してたなっ!」

「そうだよ、陽くん」

「一回も勝てなかったの悔しい〜っ!」

「色別リレーで見返してやれ」

「シンの言う通りだ!」



 三人で陽くんを励ます。一番気合が入っていた分、悔しいのだろう。



「……もう、仕方ないから麗ちゃん達応援する〜!」

「この後は女子の棒引きだもんな」

「めいいっぱい応援するぞ!」



 という訳で、女の子達の棒引きを皆で応援することになった。女の子達も男子と同じく、全部で三試合。組み合わせも変わらない。一回でいいから勝って欲しいな。



「ええぇっ、待って女の子達強くない!?」

「すごいな、二戦とも赤が勝ったぞ」

「麗ちゃん、かっこいい〜っ!」

「赤組女子は強いんだな!!」



 全負けした男子とは打って変わって、全勝。男子よりかっこいい。しかもいい勝負をしていて、非常に場が盛り上がった。



「いやぁ、これで結果が分からなくなったね」

「だな。今までも競っていたしな」

「ここで午前の部終わりか、燃える展開だな!!」

「応援賞も優秀賞も取りたいなぁ〜っ!」



 色々事件があったけど、わちゃわちゃしている間にあっという間に終わってしまった。ひとまずお昼を食べて、午後の部に備えよう。……と言っても、僕はもう出番ないんだけどね。


 午後の部は、陽くんの色別リレーと真秀のクラスリレーを応援しよう。綱引きは僕が手当してもらっている間に終わってしまったらしく、見れなかったから今度はちゃんと応援しないとね!

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