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体育祭編1

 ついこの間、文化祭が終わった。帰りには見てはいけないものを見てしまったというか、自分から見に行ってしまったというか……まぁ優の告白現場に出くわした。それから後の休み明けの月曜日。つまり昨日。僕は衝撃的な事実に気がついた。気がついたというより気だるけな担任からお知らせがあったんだけども。



「今日体育祭かぁ……」



 僕は今、椅子をグラウンドに運んでいる。当然、体育祭で使う椅子だ。率直に言って重い。だって僕、筋力値低いし。



「それにしても、文化祭からの体育祭ってハード過ぎない……?」



 確かに二学期は行事が沢山あるのは知っていた。知っていたけど、まさか文化祭から体育祭までの期間がたったの三日って何。頭おかしいのか? しかもこの一週間後には中間テストがあるし、その後すぐ国内学習があるし……いや、予定詰め込みすぎでしょ。誰か体調崩すんじゃないのこれ。


 毎年恒例だって先生は言っていたけど、こんな文化とっととなくなった方がいいと思う。絶対考え直した方がいいよ。せめてもう少し間を空けようよ。だって前半こんな詰め詰めなのに後半スケジュールがら空きだもん。ちゃんと予定組んだ方がいいでしょ。


 心の中で愚痴を零しながらも無事グラウンドに椅子を運ぶことが出来た。ちなみに荷物も一緒に背負ってきた。この後教室は施錠されて入れないから。皆はもう大体揃っているみたいだ。適当に椅子を置いているみたいだし、僕も座って休もう。



「やっほ〜、とおるん〜!」

「トウ元気かっ!?」

「今日はかなり暑いが平気か?」



 聞き覚えのある三つの声に振り向くと、陽くんと剛くん、真秀がいた。相変わらず陽くんはゆるふわだし剛くんは暑苦しい。真秀は水飲んでる。既にベットボトル半分は無くなってる。



「トウもオレ達と同じ赤組なんだなっ!!」

「わぁ〜、おそろいだねぇ〜」

「あっ、そういえばそうだね」

「仲間外れにならなくて良かったな、透」

「うん。クラス違うからいつもぼっちで……」

「えぇ〜、とおるん元気だして〜!」

「ありがとう陽くん!」



 陽くんに頭を撫でられたのでお礼を言っておく。多分、慰めているつもりなのだろう。撫で方が猫に対してみたいなのがちょっとあれだけど、まぁいいや。



「あ、そろそろ俺達は戻る。じゃあな透」

「うん。三人ともまた後でね」

「ばいばぁ〜い!」

「またな、トウ!!」



 三人は自分達のクラスがいる所へ帰っていった。途中途中、真秀は女の子から声をかけられている。どうやら文化祭のライブでファンがついたらしい。僕のクラスの女の子からも、ちらほらと真秀の話題を話しているのが聞こえる。



「あの青っぽい髪の男子、知ってる?」

「あー、知ってる。真秀君でしょ!」

「そうそう、ライブ見た?」

「見た見た。かっこよかったよねー!」

「うん。彼女とかいるのかな?」

「そりゃいるっしょ。てか真秀君狙い?」

「えぇっ、違うよ!?」

「顔真っ赤だよー?」

「違うってば! というか私、凛堂様一筋だから!」

「いや、凛堂は無理っしょ」

「無理でもいいの!」



 真秀、ちょっとギターを弾いたからってこんなに人気が出るなんて。羨まし……くはないけど断じてないけど、どうせ興味無いとかいうだろうから。でもなんか腹立たしいな。にしても凛堂さん、様付けされてるの凄いな。完全にファンじゃん。



「おーい、お前ら全員いるかー?」



 担任の先生がざっと周りを見回す。特に欠けている人はいなかったらしい。一度頷いてまた話し始めた。



「これから開会式が始まる。100m走に出るやつはその後すぐに移動しろー。後は各自動けー。学年で出る種目は午後からだからなー」


「「「はーい」」」



 先生はそれだけ言って消えていった。またクラスはガヤガヤとし始める。はぁ、運動神経最悪の僕にとって最も嫌な行事が始まってしまう……。あの開会式後のダッシュとか、あそこからもう無理。やりたくない。皆にこにこしているけど僕は必死で走らなければならないんだ。そうしなければ追いつけないから。



「そういえば、僕の出る種目ってなんだったけ」



 リレー以外なら余ったやつでいい、と言って勝手に決まったからよく覚えてない。まだ少し時間があるみたいだし、今のうちにちょっと確認しておこう。



「えーと、僕が出るのは……走って潜ってゴールを目指せ!……え、なにこれ」



 ネーミングはふざけてるけど、要するに障害物競走か。ルールは、二人三脚で走って、途中で網抜けをして、最後はまた二人三脚でハードルを潜るか飛ぶかしてゴール。



「……二人三脚。しかも僕のペア……麗華さんだ」



 やばい、これはやばい。僕は大の運動音痴。確か麗華さんは文武両道だったはず。どうしよう、絶対迷惑をかける。麗華さんに怒られるかもしれない。僕と組まされて嫌がってるだろうなぁ……。



「小学校の時もこういうのあったなぁ……」



 小学校の時、必ずと言っていいほどチーム戦や団体戦と言われるものがあった。クラスリレーや大縄跳び、二人三脚。普通の体育の時にはバレーやソフトボール、バスケ。もうこの単語を聞くだけでも嫌。大体こういうのって運動音痴には地獄。だって相手に迷惑がかかるから。そして運動ができる上位カーストの人ほど、僕みたいな運動音痴を毛嫌いする。失敗すると睨まれる。稀に優しい人がいるけど、それはそれで申し訳なくて心苦しいし。



「……あ、そろそろ並ばなきゃ」



 開会式が始まるから皆が並び始めてる。僕も並ばないと。あーあ、やりたくない。そもそも体育祭って勝ち負けがあるから嫌だ。僕、大抵戦犯になるから。一番いいのは参加しないで頑張ってる人をただ見ること。応援だけしていたい。



《これから開会式を始めます》



 皆が並び終わってアナウンスが入った。校長先生が台の上に乗って挨拶をし始める。よくあるやつ。暑いし、早く終わって欲しい。



「えー、〇△□✕%※……でね、〇△□✕%※くぁ背drftgyふじこlp;@:……というわけで」



 いやちょ、何? 全然マイク聞き取れてないよ!? 所々しか聞こえないよ!? ああっ、しかもハウリングしてるっ。もうぐちゃぐちゃだ……そこら中からクスクス笑い声が聞こえてる。



《校長先生……ふっ、お話ありがとう、ふふっ、ございました》



 アナウンス! アナウンスの人まで笑っちゃってるじゃん!? というかアナウンスの方は大丈夫なんだね。あのマイクがダメなのかな?……あれ、でも途中で校長先生のと交換してたはず。じゃあ校長先生がダメなのかな?



「マイク……交換したのに……ふっ」

「マイクじゃなくて校長を交換しないとダメなんじゃない?……知らないけどね、ふふ」

「あの校長まじウケる。ヤバたん」

「それは草」



 至る所で馬鹿にされている。校長先生の扱い酷すぎるでしょ。なんか可哀想だよ?



《……ではラジオ体操に移ります》



「俺っちが見本だから合わせてなぁ」



 あっ、あの人は真秀のバンド仲間の……一人称が独特な人! 名前は忘れたけど。見た目普通なのに中身チャラい印象の人だ。あの人三年生なんだ、意外。



《これで開会式を終わります。皆さん、精一杯頑張ってください!》



「うおおおおぉっ!!」

「きゃーーーっ!!!」

「アヒャヒャヒャ!」



 色んな叫び声が上がる中、皆、猛ダッシュ。気合いの入れようが半端ないね。僕の疲れも半端ないね。走る距離意外と長かった……あ、水飲も。


 校長先生何言っているか分からない事件以外は開会式無事に終わってよかった。さて、やる気はないけど僕も一生懸命頑張ろうかな。皆の応援を!

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