悪夢のスポーツテスト!
「いちについてー」
「よーい……ドン!!」
はぁ、始まった……。
最初の種目は50メートル走。全く、最初からそんなに走ったら大変じゃないか。50メートルも全力で走るとか僕を殺す気なのか。
しかもこのあとはボール投げやら反復横跳びやらあるし。今日はもう散々だ。
なぜなら今はスポーツテストの最中なのだ。できればサボりたいとこなんだけど……これってサボってもあとでやらされるんだよね〜。
あ、次僕の番だ。うぅ、走るのって緊張する……。僕、よーいドンで走り出せないんだよねー。ただでさえ遅いのにスタートも切れないの。
「よし、次のレーン!」
僕の番だ。うわぁ、周りみんな運動部じゃん……ガチ勢過ぎるんだけど。
「いちについてー」
マジか……僕だけめっちゃ遅いじゃん。
「よーーい」
毎回同情されるくらいなのに。今回はもっとやばそう……
「ドン!!」
[ダッ!タッタッタッ]
あ、出遅れた。
……走ろ。
[ピピっ!]「夢咲、10.98!!」
はぁっ、はぁっ、もう、めっっっちゃ疲れたぁ。
……いっとくけど真面目に走ったからね。手を抜いたわけじゃ無いよ。うん、本当に。
だから僕は不登校になるくらい運動音痴なんだって! 遅すぎるとか言わないで!?
ま、まあ……ほかの競技はマシだからね。これよりはね。
《ボール投げ》
一球目。
「夢咲、2メートル!」
二球目。
「夢咲、1.5メートル!」
《反復横跳び》
一回目。
「夢咲、30回!」
二回目。
「夢咲、27回!」
《上体起こし》
「夢咲、8回!」
……えっと、他にもあるんだけど、もういいよね……?
これ以上僕に心の傷を負わせないでくれ。お願いだから。
何度もいうけど、僕は全部真面目にやってるからね!?
べ、べつに手を抜いてるわけじゃないんだから!ちょっとツンデレ風にしてみた。疲れてるのかな僕。
もうわかってくれたと思うけど……。
改めていうと、僕は本当に運動ができないんだ。それはもう壊滅的にね。
だから体育祭とか地獄だよ。
運動できない人なら分かってくれるよねぇ!! ね!
しかもさ、僕はこのクラスでの唯一の男子なのに、このクラスで一番運動ができないんだよ……やってる最中女子に、
「大丈夫?」とか
「無理しないでね!」とか!
「そんな所もかわいいよー!」とか!!
言われるんだよ!? 自己紹介で噛んだ時並に情けないよ……
というかみんなかわいいとしか言わない。
なんなの。僕男だからかわいいとか嬉しくないんだけど!?
もう今日は帰ろう……疲れた。
そんなこんなで疲れきって教室に帰って、ホームルームが終わって帰ろうとした時に僕は思い出した。
《委員長会議》があることを……
そしてまさかあんなことになるなんて、考えてもなかったんだ。この時の僕は。
おっと、疲れすぎて口調が変わっちゃったみたいだ。ちゃんと説明すると、『委員長会議』は月に一回ある、学年の委員長が集まる集会みたいなものなんだけど、進学校なだけあって話すことが沢山あるんだ。勉強とか授業とか学習についてとかね。
うん。つまり全部が勉強に関する事なんだけどさ。なんでこんなことするのか、ほんとに不思議なんだけど、先生がやることでしょ。絶対。って聞いた時に思った。
めんどくさいことに生徒の自主性とかで各クラスごとの勉強会的な交流が必要とかでそれを決めるんだって。
それで今。
僕がこんなことを考えている間に話し合いは完全に意見が分かれていて、全く聞いてなかった僕に白羽の矢が立った。
「夢咲くんはどう思うの!?やっぱり…………」
「いや、違うだろ。透は………」
「「絶対違う!!」」
何が起きたんだ。というか僕に聞くなよ。そもそも僕、話聞いてなかったから分からないよ。とりあえず答えとこう。
「え?えっと…僕はどっちもいいと思うよ!」
何のことか分からないけど。
「「いや、どっちかだから!」」
ますます分からなくなった。なんの話だ。それより僕は早く帰りたいんだ。
「じ、じゃあ真秀の方!」
真秀とは前に軽く話した幼馴染みだ。噂好きの。
フルネームは斉木真秀。珍しい名前だよね。最初聞いた時ハーフかと思った。実際は完全に日本人なんだけど。
「だよな。やっぱり透はそう言ってくれると思ってたぞ。じゃ学習会実行委員は俺と通るで決まりな」
……え。学習会実行委員?
なにそれ。もしかして……まためんどくさいこと引き受けちゃったんじゃ……?
だ、誰かになすりつけよう。
「え、ち、ちょ待っ……」
「じゃあ今日は解散!斉木と夢咲は後日また集まりがあるから忘れるなよ!」
「「「はーい!じゃあさよなら〜!!」」」
……もう僕知らない。あとで真秀ぶっ殺す。問いただしてぶっ殺す。めんどくさいことだったらとりあえず殴る。
でも……今日はとりあえず家に帰ろう。疲れたし、休みたい。
なんかたった一日なのにすごく長かった……久しぶりに家に帰れた気がする。
もう僕、元不登校とは思えないほど積極的に動くことになりそうな予感がする。