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休み明け

 あー、学校に行きたくない。なぜそんなことを言っているのか、はいそう、始業式です。


 つまり今日から2学期になり、あの長かった楽園のような夏休みが終わります。ああ……学校行きたくない……動きたくないよぉ。僕の家、学校のすぐ近くだしできるだけゴロゴロしてそのままあわよくばサボっちゃおうかな。



[ピンポーン]


「誰だ……朝から訪ねてくるバカは」


[ガチャッ]


「よお、透」

「お帰りください」


[バタンッ]



 開けてすぐドアを閉める。何故かって? ドアの前には真秀がいたからだよ。あいつ、僕を学校に連れていく気だ……!


 サボろうと思ってたのが見透かされたのかもしれない。それにしても真秀は本当に母親みたいな行動してくるなぁ。今、僕は必死にドアを抑えているけど運動神経皆無の僕は数分も経たずに真秀にドアを突破されてしまっ……。



[バンッ]


「ぐふぅ……」

「あ、悪い。ドアの下敷きにしちまった」

「なんだこのバカっ、痛いんだけど!!」

「いや、まさかドアの前にいると思ってなかった」



 なんだこいつ。馬鹿力なのか!? 心のセリフぐらい言わせてくれたっていいじゃないか、考えてる途中でドアに潰されたんだけどダブルでダメージを負ったじゃないか!


 なんで、休み明けから怪我を負わなきゃいけないんだ、真秀の馬鹿野郎!!



「まあ、それはそうと学校行くぞ」

「1人でどうぞ」

「お前も行くんだよ」

「だが断るっ」

「えーと……行く準備は大丈夫そうだな」

「いや待って、冷静にカバンの中確認しないで!?」

「ほら行くぞ」

「え、ちょ……引きずらないでっ!?」



 朝からふざけていたら真秀に強制連行の刑を食らった。まさか僕の横をすり抜けてカバンを確認し、僕を連れ去るとは……真秀恐るべし!


 …………えっ、いつまで僕のこと引きずってくつもりなの。有無を言わさずに首根っこ掴まれてるんだけど。しかも片手で。おかしいな、それなりに体重あるはずなのにな。こうも軽々とやるなんて、やはり只者ではな……。



[ドサッ]


「いい加減歩け」

「痛てっ」

「腕が疲れた」

「だからって落とさなくてもよくない!?」



 おかげで背中から落っこちたじゃん! なんで僕は朝から顔をドアに潰され、背中をコンクリートに打ち付けなきゃいけないんだ。きっと今日の運勢悪いんだろうな……全部真秀のせいだけど。


 多分占いに書かれてるのは『名前がまから始まる幼馴染とは関わらないようにしましょう!』とかそんな感じだろうな。だいぶ限定的な占いだね、これ。


 それはともかくとして、僕は地面から立ち上がって歩き始める。もちろん隣には真秀がいる訳だけど……そういえば昨日雨が降ったから水たまりが出来ているんだったっけ。よし、さっきの仕返しに真秀を水たまりにぶち込もう。へへへっ、いつやってやろうかな……。僕はタイミングを見計らいつつ、真秀と並んで歩く。


 よーし、今だ!!



「うりゃあぁぁぁっっ!!!」

「うおっ、何だ急に。危ないだろ」


[ゲシッ]


「いったぁぁぁぁぁっっ!?」

「……透って勉強できる割に馬鹿だよな」

「なんだとぉ!?」



 なんだこいつは、朝から喧嘩売ってるのか。ちょっと距離を取ったところから突進して真秀を水たまりに突っ込もうとしたら足払いをかけられた。その為僕は硬いコンクリートに顔からダイブ。


 そしてしみじみとした感じで、馬鹿呼ばわりするセリフを言われた。幸い水たまりにダイブすることはなかったから制服が汚れずに済んだけど、代わりに身体的ダメージがすごい。ていうかさっきからまるで心配する素振りないな、真秀のやつ。それでも幼馴染か!



「じゃあ俺はこっちだから、またな」



 あ、学校着いた。なんだかんだ言いつつ学校に着いてしまった。忘れてたけど僕と真秀ってクラス違うから靴箱の場所も違うんだよね。フロアは一緒なんだけど。真秀、普通に僕のこと置いてった。同じ階なんだから一緒に行ってくれてもよくない、ねえ。


 上履き履いたら待っててくれればいいだけじゃないか。僕は上履き履くのに3分かかるけども。全く、そんなにせかせか生きてるのかな。



「疲れた……」



 5階まで上がるの結構疲れるんだよ。あ、やっと教室が見えてきたぞ。



[ガラガラッ]



 ドアを開けて教室に入る。……あれ?


 結構早く来たと思ったけどもう誰か来ているみたいだ。まだ席替えはしてないはずだから、あの席は確か……優の席だ。うーん、でもあの姿は優じゃない。なぜならあの特徴的な髪色でも髪型でもない。そこの席にいる子は明るめの茶色に髪を軽く巻いている。長さは肩より下、ミディアムっていうのかな。クラスの中心人物、または少しギャルっぽい子がやってそうなイメージがある。



「あ、おはようございます。透くん」

「え、あぁ、うん。おはよう……?」

「なんで挨拶が疑問形なんですか……」

「いや、びっくりして」

「……? 何にですか……?」



 相手の子は困惑した表情で僕を見ている。え、その顔したいのは僕の方だよ? 僕のことを『透くん』って呼ぶのは今のところ女の子では優しかいないはずだし、そもそも知らない人に話しかけられたらびっくりして当然だと思うんだけどな。


 ああ、でもこの子の雰囲気とか知ってるかも……うーん、だけどこんな可愛い感じの子いたっけ?


 …………ん? 待てよ、この話し方って優に似てる。いや、似てると言うより同じだ。

それに優はいつも朝早く学校に来ていたし座ってるのも優の席。も、もしかしてこの子は…………。



「……優なのっ!?」



 そういうことだよね!?


 今更だけど1番先に考えつくのってこれだよねう、嘘でしょ。ま、まさかね。な、なんかその、そうだとしたら今まで髪が異質だった分見てなかった所が見えてくるわけで。さっきの可愛い感じの子、とか思ってた僕が恥ずかしい。照れるじゃん……。うん、まだ決まったわけじゃない。落ち着くんだ僕。



「えっ、あ、はい。……柚山優ですよ?」



 君はどこまで僕を驚かせれば気が済むんだっ!?


 さっきの時点で薄々気づいてたけど、ちょっ、え、

展開急すぎないかな!? 夏休みに遊んだ時は全くそんな気配なかったのに入学初日で優の髪に驚いて今度は2学期初めに優の髪に驚くの!?


 ドッキリにも程があるよ!?


 ………………あ、てことは今度はイメチェンに成功したんだ。な、なるほど。こうして見ると普通にレベルの高い女子高生って感じがして……って僕は何を考えてるんだ。こういう時は『似合ってるよ』とか言うべきだよね。自然な感じで褒めた方が喜んでくれるかな。



「似合ってりゅ……似合ってるね」

「え、あ……ありがとう、ございます……」



 ……噛んでない、何も起きてないよ。起きたことといえば優がお礼を言った後に顔をすごい勢いで背けて軽く壁にぶつけた事だよ。痛そう、大丈夫かな。というか僕なんかしたの?


 そこまでの勢いで背けなきゃいけないほどの何かをしてしまったのかな、僕は。あ、沈黙から急に話しかけたから驚かせたとか? 決して嫌われてるとかでは無いはず。なんたって挨拶もしてくれるし一緒に遊んだもんね。きっとそうだよね。


 この後ホームルームとか長い集会とかがあったんだけど僕は優のイメチェンに驚いた衝撃で何も聞いてなかった。そもそも聞く気もなかったというのは内緒だよ。こんなわけで2学期は優がイメチェンしてあの特徴的過ぎる髪を止めたことから始まった。……なかなかすごい特徴を無くしたものだけど。


 2学期は文化祭に体育祭、あとはテストとかテストがあって……とにかくたくさんのイベントがある。理想的な高校生活を目指して、楽しい青春を送るために頑張ろう。僕の高校生活はこれからだからね!

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