花火大会とお祭り
こないだは海に行って陽麻君の猫が好きすぎる故の秘密を知り、真秀の新たな一面を知ってさらにはビーチバレーをして遊び尽くした後、剛二君のことをすっかり忘れて怒られたりもしたそんな夏特有のイベントを過ごしてから1週間。
僕達はまた、新たなイベントをやろうとしていたのだった!!
という簡単な記憶の整理を終えたところで今日は海で遊びに行ったメンバーと一緒にお祭りに行こうということになったんだ。
そのお祭りでは花火も見れるからこれでもう夏の風物詩と言えるものはほとんど体験したんじゃないかな。これが終わったら家に存分に引きこもって宿題に追われる日々が待っているんだ。全然嬉しくないけどねっ!
「お祭りと言ったら屋台の食べ物だよね〜っ」
「いや、祭りはあれだろ!? 花火だろ!」
「まぁどっちも間違ってはないけどな……」
「確かに何しても楽しいよね」
僕達4人……はもう固定されてきたメンバーだけど。剛二君、陽麻君、真秀、僕の4人はそんな会話をしながら女子勢を待っていた。
何故か真瑞ちゃんには『兄貴は先に行ってろです!』と言われたらしく集合場所には真秀だけが来ていた。多分真瑞ちゃんも女の子だから色々準備とかがあるんだろう。陽麻君も麗華さんを誘ったらしいんだけど後で行くということになったみたい。さすが幼馴染、というか美人な幼馴染がいるっていいよね。
僕なんて真秀だよ。男の幼馴染とかなんのロマンもない。なんだかんだ言って優しいところはあるし、助けられたことも多いけどさ……。
幼馴染の女の子と……ってありがちな恋愛パターンだよね。実際どうなのかは知らないけど、ああいうのってマンガの中だけなのかな。んー、よくわかんないや。
「せっかくだし女子が来るまでなんか話さないか?」
真秀の提案で僕達は雑談しながら女の子達を待つことになった。多分あと、5分〜10分ほどは待つだろうし丁度いい。
「じゃあオレ一つ言いたいことがある!!」
「なぁに、あらぽん」
「みんなしてオレのこと置いてってこと悪いと思ってないのか!?」
「「「……………………」」」
みんな一斉に目を背ける。恐らく海でのことを言っているんだろう。いや、ね? 悪いとは思ってるよ、当然じゃないか。
だ、だけどほら。1人で砂に埋まってる剛二君を想像するとさ。あー、別にただモアイ像が倒れただけかなってなっちゃうの。…………実のところちょっと悪いことしたなとは思ってる、反省してるよ。
「んっと、ごめんねあらぽん」
「ご、ごめん。剛二君」
「あー、悪かったな」
「わ、分かればいいんだよ!!」
「「「影薄くて忘れてた」」」
「やっぱり謝る気ないだろお前ら!?」
声を揃えて一斉に言う。示し合わせたわけじゃないけどなぜかハモった。……剛二君顔のインパクト強い割に影が薄いってどういうことだ。あーでも、顔以外の特徴そんなにないしね。
「すいません、遅くなってしまいましたっ」
「ごめんね、待ったかな?」
「……遅くなった」
「やっと着付け終わったですっ!」
あ、女の子達が来たみたいだ。そっか、僕達は普通に私服で来ちゃったけど女の子達は浴衣来てきたんだ。みんな一緒に来たってことは僕達とは別に待ち合わせて着付けしてから来たのかな。
「あ、麗ちゃん浴衣似合ってるねぇ〜」
「みんな似合ってるな」
「そ、そうだな!!」
「みんな可愛いもんね」
僕達はそれぞれ浴衣について話し始める。なんとなく着る人の性格が浴衣に出てる気がする。優はピンクと薄い青模様の浴衣で少しおとなしめのもの。
琴音ちゃんは少し明るめの花柄にベースは紺色で凛としつつ元気な感じで麗華さんは黒に青の柄が入った大人っぽくクールな印象。
真瑞ちゃんは年頃の女の子らしく黄色の明るめの浴衣だった。みんなレベルが高い分よく似合ってる。
それに髪をお団子にしたりして浴衣に合うようアレンジしてあるからいつもより印象が変わってる。
「は、陽君」
「ん〜?」
「どうだろうか、この浴衣」
「すごい似合ってるよ〜っ!!」
少し離れたところで陽麻君と麗華さんが話している。そういえば麗華さんって陽麻君のこと好きそうなんだよね。陽麻君はいつも通りと言った感じだけど。
……後でさりげなく聞いてみよう。
「あ、あのっ」
「……ん? どうしたの優」
「その、浴衣……似合ってるでしょうか……?」
「へっ?」
突然の質問にちょっと混乱した。その、似合ってると言えば似合ってるんだけど。なんか優が少し照れたように聞いてくるから僕までちょっとその、恥ずかしいというか……でも何も言わないのも悪いしここは正直に言った方がいいよね。
「に、似合ってると思う……よ?」
「ほ、本当ですか……?」
「う、うん」
「……よかったぁ……」
喜んでくれたみたいだしそんな地雷発言もしてないから大丈夫だよね。こういうの照れくさいなぁ……あんまりなれないし。
「……夢咲くん」
「な、何かな? 琴音ちゃん」
「私の浴衣……どうかな?」
「……似合ってると思うよ?」
2人ともどうしたんだろう? 浴衣はそりゃ、元々レベルも高いんだし似合ってるけど。まさか優についで琴音ちゃんも聞いてくるとは思ってなかった。……なんか恥ずかしい。
「どうです兄貴、この浴衣っ!」
「あー、はいはい」
「なんですかその反応は、レディに失礼ですっ」
「レ、ディ……? 何言ってるんだ」
「むきぃぃぃっ! そんなんだからモテないんですよっ、兄貴はっ!!」
相変わらず真秀はドライだなぁ。いつもクールそうに見えて優しいみたいなところあるのに真瑞ちゃんには軽口叩くんだよなぁ。まあ妹だからっていうのもあるんだろうけどさ。
あと真瑞ちゃん、真秀モテないわけじゃないよ。ついこないだナンパされてたの僕見てたからね。めっちゃチヤホヤされてたからね。というか海の時だけじゃなく街でもたまにナンパされてたりするからね!?
……僕を待ってるくせに楽しくナンパされてんじゃねぇよ。ああいう時どう声かければいいんだよ。気まずいんだよっ!!
「えっと、じゃあ見て回ろうか」
僕はそう言ってみんなと一緒にお祭りを見て回る。
時々陽麻君と麗華さんが2人で行動したり男女で分かれて行動したりもした。みんな思い思いに食べたいものを買ったりしてる。あ、真秀がなんか美味しそうなの食べてる。
えぇーっ!? なにあれ、めっちゃ美味しそう。甘いものだ甘いものっ!
「真秀、何1人で美味しそうなの食べてるのさっ!」
「あー、はいはい」
「はいはい、じゃないよ!」
「わかったわかった。ほらよっ」
「やったっ! じゃあ少しもらうねっ」
真秀にたかる作戦成功。かき氷の上に苺やブルーベリーといった色とりどりの果物が乗っかっている。しかもふわふわの氷で透明な氷を染めるシロップがこれまた食欲をそそる。たった1口食べただけでも美味しいのが分かる。
あー、美味しい。全く、僕に何も言わずにこんな美味しいもの食べるなんて狡いじゃないか、真秀め。
「あれって間接キス、ですよね……」
「ま、まあほら、男の子同士だし普通、なんじゃないかな……?」
「……? 幼馴染なら普通じゃないか」
「「えっ!?」」
「ぼくは陽君と結構やるぞ?」
「「えぇっ!?」」
「い、今もですか!?」
「まあ家族ぐるみで仲が良いからな」
「そ、そうなんだ……」
「なら2人ともふつうなのかなっ?」
「そうですよっ、多分……」
「……そういえば兄貴の部屋でアレな本とか見たことない気がするです」
「「えぇっっ!?」」
「これは可能性が出てきたかもしれないですね……」
「ま、まさか……ね……」
遠くの方で僕達の話をされてる気がする。それも良くない方の。何の話してるんだろう。さっきからすごいチラチラ見てくるし……特に優と琴音ちゃん。視線が痛い。
「あ、真秀いちごいる?」
「ああ、じゃあもらう」
「じゃあ、はい」
元々真秀のだし美味しいところはちゃんとあげないとね。せっかくだし大きいのあげとこっと。僕はソレをスプーンに載せて真秀へ差し出した。もちろん真秀は何のためらいもなく口に運ぶ。
「「……っっ!?」」
「今の見ましたかっ……!?」
「完全な『あーん』だったね……」
「まさか本当に……そっちの趣味が……?」
「いやいや、優ちゃん……まさかまさか……」
なんかまた、コソコソ話してるんだけど……なんだろう。んー、まあいっか。とりあえず満足したしこれ真秀に返しとくか。僕は真秀にかき氷を返してみんなの元へ向かう。確かそろそろ花火が始まる時間のはず。丁度いいし移動を始めようかな。
「ねぇみんな、そろそろ移動しない?」
「そそそ、そうですねっ!」
「う、うんっ! そうしよっ」
「……なんで2人ともそんなに動揺してるの?」
「「な、なんでもないよ/ですよ!?」」
「そ、そっか……」
よく分からないけど気にしないでおこう。気にしたら負けな気がするから。
若干の疑問はあったけどみんなで花火が見えるところに移動して花火が打ち上げられるのを待った。そしてパーンッという破裂音と共に空に大きな光の花が咲き始めた。
「「「わぁ……」」」
みんなの感嘆の声が揃う。今までも花火を見る機会はあったけど……今日、見る花火は今までで1番綺麗な花火だと確信を持っていえる。
高校生になってあっという間に夏になり今は8月の中旬頃。僕は……いい友達を持てたのではないか。近くにいるみんなを見つつ僕は思う。最初は僕しか男子がいないクラスなんてどうなるのかと思ったけど。今はちゃんと友達と呼べる人が出来たのかも。
僕はそんなふうに思いながら花火を眺め、こうしてみんなと過ごす時間が花火のように一瞬で消えたりすることのないよう願いながら……夏の思い出の一ページを刻むのだった。
夏休み編までお読みいただきありがとうございました。次回から二学期に入ります。よろしければブクマ、感想など下さると大変嬉しいです。




