海水浴編?
さてみんな。前回僕は陽麻君の試合の応援に行くという何とも青春らしいことをしたと思う。
今回はなんと! 夏と言ったら多くの人が想像するであろうもの。そう……海に行くのだっ!!
といっても僕は泳げないので乗り気ではないんだけどね。大人しくかき氷でも食べてようかな。
それはともかく、今回海に行くメンバーは僕と真秀、陽麻君、剛二君の4人と優、琴音ちゃん、真瑞ちゃんの3人も一緒に。計7人、この前の勉強会メンバーだね。割とみんな打ち解けたらしくて最初は僕ら4人で行く予定だったんだけどせっかくだしということで誘うことになった。
まぁ行くなら多い方が楽しいよね。男だけで行くより華があるし。あ、でも真瑞ちゃんは元よりついて来るつもりだったらしい。なんでも『兄貴だけ行くなんてずるいです!』だそうだ。
ああそう、真瑞ちゃんは真秀のことを兄貴って言うんだよ。僕のことはお兄ちゃんって呼ぶんだけどね。
真秀とは一応幼馴染だし真瑞ちゃんと話す機会もそれなりにあったから呼び名で区別してるみたい。
最初は僕に対して他人行儀だったから距離を縮めて話してくれるようになったのは割と最近かな。僕、不登校のとき真秀の家にもあまり行かなかったし。
だって顔、合わせにくいじゃん? 理由も理由だしさ。どういう人が学校まで歩くのが遠くて嫌だから学校行かないっていうんだよ。ただ単なる怠け者じゃないか。いや、まあ僕のことだけど。
閑話休題。
話を戻すね。えーと、そうだ。海に行く話をしてたんだっけ。僕らが行く海は電車で行ける近くの海。なんたって誰も運転出来ないからね、年齢的に。親に頼むのもちょっときつい。
そんなわけで電車で行くことになった。なったんだけど……ね? たった今僕らは困っている。僕らっていうより主に真秀が。
「あらぽ〜ん、乗る電車あっちだよねぇ?」
「いや、こっちだっ!!」
「……どっちも違うぞ」
「「ええ!?」」
「兄貴、真瑞の切符買って来いです」
「自分で買ってこい」
「断るです」
「………はぁ…」
「……なんか視線を感じます…………」
「た、多分髪型のせいじゃないかな」
「やっぱり変ですよね……」
「大丈夫だよ、ねっ! 真秀くん!!」
「お、おう……」
うわ、真秀が俺に話振るなよオーラ出してる。琴音ちゃんが困った結果真秀に話振ったんだね。確かに反応しにくい話題だ。
真瑞ちゃんにはパシられてるし。え、何。真瑞ちゃん反抗期なのかな。だって買ってこいって命令形だよ!?
勉強会のときは全然そんなこと無かったのに、数週間の内に何があったの……? 陽麻君と剛二君は電車の方向分かってないみたいだし。
大丈夫かな。僕もわかってないんだけども。むしろ今日初めて知ったんだけどさ。
いや、僕のことは置いといてね。2人とも運動部だから電車使って行くこと多いんじゃないの!?
陽麻君は雰囲気的にありそう。剛二君はあれだね、こいつ使えねぇな。という感想を持ってしまいましたごめんなさい。
結論。真秀がすごく大変そう。ドンマーイ真秀、わー可哀想。とりあえず哀れみの目を送っておこっと。
あ、目が合った。
なになに……なんて言っているのかな。
『見てねぇで助けろよ。哀れんでんじゃねぇ』
うんうん、だいたいこんな感じかな。アイコンタクトで送ってきた内容は。それじゃあ僕が返すべき言葉はこれかな。
『ドンマイ真秀。ファイトッ!!』
よし、こんな感じで見捨てよう。しょうがない、僕にはできないもんね。
「よしみんな、準備出来たなら行こっか!」
「わーい、ボク海楽しみだな〜」
「お!行くか!?」
「……やっと準備出来た……俺はもう疲れた……」
「そうですね!」
「うん!もう大丈夫そうっ!!」
「楽しみですーっ!!」
[まもなく電車が参ります……]
[プシューッ]
ふーっ、ちゃんと無事に乗れた。電車の中は空いてる様で僕ら以外にはほんの数人しかいない。それもだいぶ遠いところにいるだけ。
長い時間乗るから混んでたら嫌だなって思ったんだけど、その心配は無用だったかな。これなら周りを気にせずみんなと話したりできるかも。
「ところで透くん〜っ」
「ん?」
陽麻君がこっちによって話しかけてきた。何故か目がキラキラしてる。心なし口もニンマリしてる。あっ、これはいつものことか。
「そういえば聞いたことなかったけど〜」
「うん?」
「透くんって彼女とかいたりするの〜?」
「……っ!?」
か、彼女!? 急に何を言い出すの、陽麻君は。はっ、もしかしてこれが旅行特有の恋バナ展開っ!?
何この女の子のノリみたいなのは、あれだ、クラスでよく聞くやつだっ!!
こんなこと考えてる場合じゃない、なにか答えなきゃ。正直に居ないって言えばいいか。
「え、居ない……けど」
「へぇ〜! じゃあ過去にいたことある〜?」
過去!?
元カノってこと……だよね。えぇー、いたことないよ、だって不登校だもん。そもそも告白されたことすらないし、それ以前にまず異性と話したことすら数える程だ。
「いたことないよ?」
「へぇ〜っ!!」
「そんなに驚くこと?」
「びっくりするよ〜、だって透くんモテそうだもん!!」
「…………」
「あれ、どうしたの〜?」
「僕、告白されたことすらない」
「……えっ。そうなの〜?」
「うん」
モテそうとか言われてびっくりした。だって僕は至って普通の顔だし、どちらかというと陽麻君とか真秀の方がモテそうだよね。真秀はクール系だけど陽麻君はカワイイ系というイメージだ。
剛二君は例外、というか問題外。そうだ、陽麻君にも聞いてみよ。
「陽麻君は居たりするの?」
「ボク?」
「そうそう」
「今は居ないよ〜今は」
「……今は?」
「うん!」
今はってことは前に居たことあるのかな。えっ、なんか恋愛知らなそうなピュアな感じするのに?
どうしようっ……!! これで中々のプレイボーイだったら僕の中で陽麻君のイメージが崩れまくるき、聞いていいのかな……? 気になるは気になるけど。
「は、陽麻君は前に居たことあるの?」
「元カノってこと〜?」
「そ、そう」
「……どうだろうねぇ〜?」
「え、どうって」
やっぱり聞かれたくない的なことなのか、ちょっと迷った感じではぐらされた。いつもの笑顔で返されると読み取りずらいな。
「透くんはボクにそういう人居たと思う〜?」
「えっ、うーん……居そう、かな」
「………そっかぁ〜」
口調はいつも通りだけどなんか、ちょっとだけ雰囲気が違うような。え、恋愛関係でなんかあったとかそういうこと? どうしよ、地雷踏んだかな。
「お? 恋バナか!?」
「あ、剛二君」
「あ〜、あらぽんだ〜」
「聞いてたの?」
「たまたまな!!」
「へぇ〜」
あれ、陽麻君がジト目してる。剛二君見て疑わしそうな目を向けてる。
「な、なんだよ!!」
「前もあらぽん盗み聞きしてたよねぇ〜」
「今回はほんとにたまたまだ!」
「ふ〜ん」
「悪かったってだって陽麻に元カノ5人ぐらい居たって聞いたら気になるだろっ!!」
「……えっ?陽麻君に?」
なんか今すごいこと聞いた気が……ってええ!?
陽麻君に元カノが、しかも、5人!?
ま、まさかほんとにプレイボーイなのか、その容姿、その性格で。今と前は違ったりするの!?
確かにそれは気になる。気になるけどもそんなこと聞いちゃったら盗み聞きしたくもなる剛二君の気持ちも分かるけど剛二君がやったら犯罪感丸出しだよ!!
……って違う。そんなことはどうでもいいんだ。
「あらぽんのばかっ。なんで言っちゃうのっ!!」
「あ、わ、悪いっ!!」
「全くもうっ、顔だけでなく頭も腐ってるの!?」
「ごめんって、陽麻!!」
「うるさいっ! この腐ったトマトっ!! 顔面大草原っ!!!」
「か、顔に草生やすの止めろっ!!」
「だって顔全部、笑笑笑笑ってつくじゃん! 髪は焼け野原なのにっ!!」
「そこまで言わなくてもいいだろ!!」
「ふんっ、あらぽんなんてゴリラ以下だっ!!」
さっきの話が衝撃すぎて剛二君と陽麻君の口喧嘩が全然入ってこないけど、とりあえず剛二君の顔のこといじってるのは分かる。とてつもないいじりをしてるのは理解できる。
それはいつもの事だけど、というか剛二君の顔なんて今は本当にどうでもいい。動揺がかくしきれむんのなにゃ……やばい噛んだ。
隠し切れないんだけどって言おうとしたら焦りすぎて噛んだ。ふぅ、気を取り直して……ああもう動揺が隠し切れない!!
「は、陽麻君って、その……」
「ち、違うんだよ? 透くん〜っ」
『腐ったトマト、か。オレ、はぁ……』
「違うって……?」
「え、えと、誤解しないで欲しいんだけどねぇ……?」
『はぁ、頭が焼け野原。確かにチリチリだけど……』
「あのね、あれは中学の時に……」
「う、うん」
『ゴリラ以下……』
「あーもうっ! あらぽんうるさいっ!!」
「は、はいぃぃぃっ!!!」
「ぶつぶつさっきから! 顔だけでなく言葉でもぶつぶつしないでっ!!」
「悪かったってぇ!!!」
「ふんっ!」
さっきから1人で傷ついてぶつぶつ言ってた剛二君を怒りに行っちゃった。え、僕さっきの話ちゃんと聞けてないんだけど。めっちゃ気になるんだけど、ねえ!?
すっごい慌てた様子で説明しに来たからたぶん僕が思ってるのとは違う、はず。海行く前になんて爆弾投下してくれてるの!?




