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夢咲くんの不調

 さて、みんな。今日は何の日か分かるだろうか。学校で嫌がる人も多いもの。


 そう、テストだ!!


 昨日はみんなで勉強会をして今日のテストに備えるという普通の、高校生らしいことをしていた。

 僕が望んでいた、友達とワイワイしながらやるっていう夢が叶ったと喜んでいたんだけどね。

 少し、昨日から頭がぼーっとするというテストにふさわしくないコンディションで困っているんだ。


 風邪でも引いたかな……?


 いや、引いてない。認めない。認めたら負けだ。この期末テスト、休んだら成績がガタ落ちするのは目に見えている。


 そしたら……仕送りがっ!! お金が送られなくなっちゃう!!


 前にも言ったことがあると思うけど、僕は極度の運動音痴のため人よりも歩くのが格段に遅いし疲れるから嫌なんだ。


 だから勉強で頑張っていれば学校近くのマンションに住もうが何しようがお金を出して上げるという約束の元ここにいる。

 実際学校に行け、というだけの話なんだけどね。そんなこんなで休むわけにはいかないんだ。まぁ……熱はないし(計ってないだけ)大丈夫だと思う。


 と思い込むことでテストに望んだのがさっきまでの僕。


 ……間違いだった。なにやる気を出してしまっているんだ僕は。できない時は諦める、がモットーの僕が頑張ってしまった。


 勉強ぐらいしか取得がないから頑張るしかなかったとはいえ。今、本当に、頭が痛い……。


 悪化してる気がする。気がするっていうか確実に悪くなってる。だって目の前がぐわんぐわんするもん。

 ひたすらコーヒーカップ回されてる感じ。ただの地獄だ。もし今日僕のキャラが違うと感じるところがあったらそれは熱のせいだよ。


 先に言っとくね。


 まぁそれは置いておくとして……今は3限目、数学のテスト。正直この状態で計算なんかできるかボケ、っていう感じ。


 誰だよ数学作ったやつ、出てこい。この世界から無くしてやるみたいなことを考えながら解いてる。


 得意科目にさえ思うなんて風邪って恐ろしい。得意とはいえそんな好きじゃないけどね。とりあえずひきこもりのとき勉強してたらできるようになった。


 あと数学得意ってなんかかっこよくない? みたいな理由で言ってる時がある。

 勉強会のとき数学が得意って言った気もするけどあれは優が解けてない課題の中でっていう意味ね。そういう事にしといて。


 本当の僕の1番の得意科目は国語。進路もそっちにしようかなーって思ってたりする。僕は本読んだりゲームしたり物語系統が好きだから。……じゃなくて。



 今、テスト中なんだよ。何度も言ってるけどテスト中なんだよ。大事なことだから2回言ったけど。


 どうしよう、全然頭が回らない。


 とりあえず解いてはいるんだけどまるで自信が無い。時間も足りないし、剛二君の顔が浮かんできて余計気持ち悪い。あれ、今だいぶ失礼なこと言った気がするけど、まあいいか。


 これさえ乗り切れば今日のテストは終わり。どうにか乗り切らなきゃ。帰ったら甘いものたくさん食べる。家にストックしてあるお菓子全部食べる。


 いぇーい!! お菓子パーティーだぁーーー!! あははははっ!!


 誰だこいつ、テンション高いな。いや僕だけど。


 しかもこれテスト中に1人で心の中でやってるというシュールさ。頭おかしいヤツじゃん。やばい、僕のキャラがやばい。頭もやばい。






[キーンコーンカーンコーン]



「それじゃ後ろのやつから回収してこい」



 ……あ、終わった。いろんな意味で終わった。最後まで解けてない。


 うーん……あっ!! 僕以外の人もあんまり解けてない! 今回のテスト難しかったのかな?


 よし、平均低ければ必然的に僕の成績も落ちない!


 なんか今日の僕荒ぶってるな。剛二君の顔並みに荒ぶってる。いや、顔が荒ぶってるって何。だめだ。ノリツッコミまでしてる。


 僕が僕じゃなくなってる。もう終わりだ、あはっ……。




「それじゃ今日はこれで終わりだ」


「「「はぁーい!」」」


「ねぇテストどうだったー?」

「いやもうぜんぜんだめぇー」

「だよねだよねっー!」



 あっ。ホームルームもいつの間にか終わったみたい。


 ……いいなぁ、友達とテストの話題で盛り上がるって。慣れてきたとはいえここ女の子しかいないから肩身が狭い。

 このクラスで話してるのって優と琴音ちゃんぐらいだ。


 そういえば最近あの2人仲いいんだよね。よく話してるのを見かける。前は琴音ちゃんがいろんな人と話してたみたいだけどあまり優以外と話してるのを最近見ない。


 ……もしかして前に言ってた悪い噂が原因じゃないよね。今はだいぶ元気になったと思ったんだけどな。

そもそも男好きも何も、僕しかこのクラスに男子いないのにどういう流れでそんな話に。


 中学校のときの話かな? でもそんな子に見えないからなー。普通にいい子だしあんまり辛い思いして欲しくない。まぁ優と仲いいしクラスで孤立ってことはないだろう。


 ここ、クラス替えないからね。1度いざこざあるとちょっと辛いよね。噂って本当のことみたいに広まっていくから怖い。


 最初にいう人は明確な悪意があるけど鵜呑みにして広める人は悪意もなければ罪悪感もないから1番タチが悪いかも。そういう時はいっそ縁を切っちゃえばいいって言うのが僕の考えなんだけどね。

 どうせ、友達でいたって裏切られるだけなんだから。まぁ、それをされても許せる人って強いんだろうね。僕は許さない、墓まで持ってく。





 気づいたらいつの間にか人がほとんどいなくなってた。みんな帰ったのかな。いい加減僕も帰ろう。帰る準備も終わったんだから。



 ……ん?


 なんだろう。なんかちょっと、フラフラする、ような……? あ、これはやばい、かも。



[ガタッ][バタバタッ!!]


[ドサッ]



「おーい、透まだいるかー」

「透く〜ん、帰ろ〜」

「おい! 俺を置いてくなっ!!」


「「「…………っ!!」」」


「透、大丈夫か?」

「透くんっ!」

「お、おい!! どうするんだこれ!」

「……熱があるな」

「ほんとだ、けっこう熱いね」

「な、なんだと!!」

「とりあえず家まで運ぼう」

「そ、そうだね……」

「確か歩いて3分くらいか!」

「それじゃボク荷物持つよっ」

「ありがとな、陽麻」

「お、オレはどうすればいい!?」

「とりあえず落ち着け」

「おう!」



 真秀たちだ。


 じゃあ僕倒れちゃったのか。通りで頬に冷たい感触があると思った。動けないし、声も出ない。体が重い、だるい。


 なんとなく誰かが担いだような感触があった。たぶん真秀だ。迷惑、かけちゃったな……。

 そんなことをぼんやりと考えながら僕はそのまま気を失ったのだった。








「ん……」



 周りを見渡す。ここは、僕の部屋……?


 あれ、帰ってきた記憶が無い。あっ、そうだ僕学校で倒れちゃったんだ。まさかそんなに悪化してるとは思わなかった。


 真秀たちがここまで運んできてくれたのかな。部屋を見回しても誰もいない。僕を送ったあとすぐ帰っちゃったのか、明日お礼言わなきゃだね。


 のど、乾いたな。お水でも取りに行こう。



[トットットッ]



 階段を降りていくとそこには真秀がいた。なんかおかゆ作ってた。ちゃんとエプロンもしてる。


 ついでに言うと陽麻君と剛二君もいた。いやさ、ちょっと誰かいて欲しいなって思ってたけど。少し寂しいとか思ってたけど!!


 ほんとにいるとは思ってなかったからびっくりしたよ!? というかなんで剛二君と陽麻君は僕の家で人生ゲームしてるの!?


 しかも2人で人生ゲームって楽しいの!? 遠目から見ても剛二君負けてる上に借金塗れだし。ゲームでも負けてるじゃん……。


 真秀に至っては僕の彼女か何かなの? っていうくらいだ。おかゆの横に水と薬が用意されてる。しかも薬を飲む用のゼリーみたいなのも一緒に。


 僕をなんだと思ってるの!? その子供用のゼリーなくても薬ぐらい飲めるよ、僕。彼女っていうより母親なの!?


 ……はっ!?


 なんかいつもよりテンション高くツッコミを入れちゃった。久々だよ。こんなに勢いよく突っ込むの。でも、ちょっと元気出たかも。



「あれ……起きてきたのか」

「あ、真秀」

「大丈夫そうか?」

「う、うん」

「なら良かった。心配したぞ?」

「そ、そっか。ごめんね」



 なんか真秀が優しい。いつもこんな感じだっけ?


 ちょっと不気味とか思っちゃった。ごめん真秀、……優しさが心に染みるよ。



「あっ、透くんっ!」

「お! 透か!!」



 剛二君と陽麻君も僕に気がついて駆け寄ってきてくれた。



「もう熱引いたの〜?」

「大丈夫か!!」



 そんなことを言いながら僕のおでこをぺたぺた触る。ちょ、剛二君顔近い……あははっ、面白い顔。


 陽麻君は覗き込むように僕を見上げている。いわゆる上目遣いだ。


 この差がやばい。まず顔の大きさが違う。……顔って、武器になるのか。違う意味での顔面凶器だね。ブサイクとイケメンって。

 結局顔かよっ、 ちっ……顔がなんだ!


 でも純粋に、心配してくれて嬉しかった。真秀がつくってくれたおかゆを食べつつ薬を飲むのを嫌がりながらそんなことを思った。薬は真秀に無理やり押し込まれた。うわっ、まっず。


 改めて友達の大切さを認識した1日だった。弱ってる時ほど分かるね、こういうの。



「みんな、ありがとね」


「急にどうした?」

「どういたしまして〜」

「おう!!」



 笑顔で答えてくれるみんなを見て僕は少し安心した。ちゃんと友達だったのかな。

 実は最近少しだけ気にしてたんだよね。僕が気にしすぎてただけかな。こうして友情を確認することができた1日と共に期末テストは終わりを告げた。


 ……テスト返しが心配だけどね。ま、そのあと夏休みだし、楽しみだな。


 みんなとたくさん遊びたい。風邪もちゃんと治してから……ね。

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