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眼前に広がる荒涼とした大地。
肌を吹き抜ける冷たい風。
枯れ葉が舞う。
砂塵が舞う。
僕は腕で目を覆いながら目を細める。
視界が開けた先に見えたのは二つの影。
――あぁ。またこの夢か。
離れて向かい合う影はこちらを気にすることもなく。
両者が醸す雰囲気にこちらも手出しはできなくて。
ただただ、空気が張りつめて、痛かった。
『…やめてよ!』
沈黙を破る一つの声。
泣いているようで。
訴えているようで。
悲痛な叫びはこの身によく染みる。
しかし、いつもふと思う。
――どうして僕から声がするのだろう?
叫びはあたりにこだまするだけで。
二つの影は、まるでそれを号砲とするかのように動き出す。
『だめだよ…。』
呟く声は届くはずもなく。
ただ、僕だけに伝わってくる。
――この声の主は誰?
見れば重なる二つの影。
まるで時間が停止したような。
永遠に感じる刹那の後。
僕は頬を伝う冷たい涙を感じながらまたゆっくりと目を開ける。
エドの記憶.