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本編にはまったく関係ない話 その3【閲覧注意】

【注意】

第五章の裏側、アルマ、ツバキ、ヘルヴェリカの3人のお話です。

実際のところどうだったのかを文章化しました。

この回は、ヒロインたちに対する見方が変わる恐れがあります。


本編54話にもあった通り、単純にヒロインたちが一度口に入った料理をぶちまけて汚れてしまうお話です。それ以上の情報はありません。


閲覧した場合、ヒロインたちに幻滅してしまうおそれがあるため、この回は飛ばすことが推奨されます。

また、この回を閲覧した場合のいかなる苦情も受け付けません。




















「ヘルぅ~~~?? テオたちどうちゃったの~~?」


 ヘルヴェリカが店の軒先に出て戻るまでの間に、すっかり出来上がっているツバキがたどたどしい声を上げる。


「さぁ……どうしたのかしら。ぴゅーって走っていっちゃった」


 大宴会の様相を呈する酒場の中、元のテーブルに戻った。


 アルマが空のジョッキを手にしたまま突っ伏しており、もぞもぞと蠢きながら呻いている。


「う゛ぅ~……テオさん……」


 意外にも余裕はあるようで、うつ伏せのまま時折つまめるものを見もせずに皿から取っては口の中へ運んでいるらしかった。というかそのペースが速い。


「あらあら……アルマちゃん、お行儀が悪いわ」


「ヘルぅ~~、追加の料理とお酒頼もうよ~~ねぇ~~~」


 酒臭い息を吐きながら、すっかり紅潮したツバキがヘルヴェリカの細い肩にしなだれかかる。だいぶ良い気分になっているようだ。


「あらあら、甘えんぼさんね。ふふ……かわいい」


 ツバキの額にかかった赤い前髪を払い、さらさらと頭をなでる。そうすると彼女は気持ちよさそうに目をとじた。


「ん~……」


 とそこに、頼んでもいないつまみ何種類かの盛り合わせと、ジョッキの酒が三杯置かれる。


 見れば店員も、酔いをおして配膳しているようで、その目はすっかりぐるぐると回ってしまっていた。


「あら~……」


 ヘルヴェリカは数秒考えて。


「ん、んっく……んっく……んっく……」


 ジョッキを手に取り、飲み干した。彼女もまた、ひどく酔っ払っているのである。


「あ~~~新しいのきてる~~、ヘルぅ~~ありがと~~」


「あらあら、いいのよ」


 別に彼女が注文したわけではない。


「あ~~~わたしの好きなのいっぱいだ~~、ヘルぅ~~ありがと~~」


「あらあら、いいのよ」


 別に彼女が注文したわけではない。


「あ~~~おいし~~、ヘルぅ~~ありがと~~」


「あらあら、いいのよ」


 重ねて言うが、別に彼女が注文したわけではない。


「そーいえばヘルさん、さっきテオさんにだっこられれましたね」


 いつの間にか身を起こしたアルマが、新たなジョッキを手に据わった目でヘルヴェリカを睨んでいた。やはり呂律は若干怪しい。


「ゆるひぇませんっ! わらしだってしてもらって……」


「あるまちゃんしてもらってたよ~~~おんぶ~~~うらやましい~~」


「ふふん、うらやましいですか。ふふふふふ……」


 直前まで言おうとしていたことはすっぱり忘れ、羨ましがるツバキに自慢げに振舞うアルマ。その様子を眺めて微笑むヘルヴェリカ。


「次はあたしが~~、テオに抱っこしてもらうんらから~~」


「何を言うんです。つひはわたしに決まってます……ふへ」


「なにを~~」


「しょうぶごとらら乗りますよ……!」


 そして流れは不穏な方向へと向かう。ヘルヴェリカは止める気もなくジョッキを傾けた。


『てんしゅーっ! おさけありったけもってきてくらさーい!』


 二人の声が重なり、勝負のゴングが鳴った。



*



「おい見ろよ! あのお嬢ちゃん、小柄なのに結構やるねぇ!」


「いやでも、あの赤髪の女も負けちゃいねぇぜ!」


「あれってヘリオアンの『赤髪』ツバキだろ!? 俺はツバキに銀二枚賭けるぜ!」


「俺はあっちのちっこい方に銀三枚だ!」


 などと、すっかりギャラリーを形成しての大勝負となっていた。


「ふーっ、ふーっ、やりますね……」


「そっちこそ……はぁ、はぁ」


「さっさと、まけ、を、認めたら……どうれす」


「ぺーしゅ、おちてるのは……あるまちゃん、でしょ……」


 飲み比べはツバキの言うとおり、アルマが若干の遅れを見せていた。また賭けにおいても有力なのはツバキだ。


「……こうなったら」


 そこでアルマが暴挙に出る。なんと放置されていた料理に手を出し、ツマミにして酒を飲みだしたのである!


「な……!」


「バカな、腹の中に酒が溜まってるだろうに……自殺行為だ!」


「いやでも、見てみろ……ペースは……!」


 驚愕に染まるギャラリーたち。そう、彼女が飲むペースはここにきて。


『上がっている……ッ!!!!』


 これに動揺したツバキ、彼女もまた禁じ手を使う……!


「あぁーーっ!! アレは……!」


 すなわち、右手にジョッキ、左手にもジョッキ!!


「に、二刀流だ~~~~~ッッ!!!」


 右を空けたら左を、そしてその間に右手は別なジョッキを掴む!


 そのペース、倍!!!!!!


 横並びとなった速度、いつの間にか両者とも立ち上がり、ギャラリーは手に汗握り魅入る!


 そして、決着の時は来る……!


「うっく……おろろろろろろ」


「おあああああああああああっ!!??」


 小柄な黒髪少女(あえて名前は伏せる)の口から滝となって流れ出る虹色の光! びちゃびちゃとテーブルに当たってあたりに散らばると、すっぱい匂いが広がる。


「ふ、ふふふ……か、勝っおろろろろろろろろ」


「あああああぁあぁぁぁあぁぁああああああぁっっ!?!?」


 勝利を知らしめるべく、右手を高く突き上げた赤髪の剣士(あえて名前は伏せる)の口からも、強酸性の虹色光があふれ出る。やはりそれもびちゃびちゃとテーブルに当たって甚大な被害をもたらした。


「あらあら、うふふ」


 二人の体がゆらぎ、ばたーん! とテーブル上の料理やら何やらが浮くほどの勢いで倒れる。


 対決は勝者なくして幕を閉じた。


 後に残されたのは、虹色の強酸に沈む二人の酔っ払いと、その間でもっとも大きく被害を受けながらも微笑む氷の美女(虹色まみれ)だけである。

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