本編にはまったく関係ない話 その1
「あ、川がある! ねぇテオ、水浴びしていこうよ!」
日差しにじりりと焼かれながら街道を歩いていると、セラくんが大喜びで走り出した。そして、そのままの勢いで川に向かって飛び込む。水しぶきが上がった。
「くぅ~~~っ!」
着衣のまま膝まで浸かったセラくんは、ぷるぷると震えて気持ちよさそうにしている。僕も額の汗を拭って川岸へ降りた。
白いシャツがセラくんの細腕に張り付く。茶のベストが胴部分を隠してはいるけど、肩から腕にかけての細いラインがセラくんをとても華奢な人間だと知らせていた。
濡れた銀の髪は頬に張り付き、より挑発的な色気を放っている。あごを伝って落ちる水滴は、何か大きな価値があるんじゃないかと思わせた。
「なるほど、これは気持ちいいですね……」
いつの間にかアルマさんもスカートを水に浸からないように縛り上げ、じーんと川の冷たさに感じ入っていた。ふともものかなりきわどいところまでスカートが捲くられていて、内腿に跳ねたしずくが伝うのを見たら、なんだかすごくいけないものを見た気分になった。
「ほらほら、テオもこっちおいでよ!」
「テオさん、これは見てるだけでは損ですよ」
二人が手を差し伸べてくる。僕は苦笑して荷物を川岸に置くと、足をまくって二人の手を取った。
「それーっ!」
「えいやっ」
二人に思い切り引っ張られて、全身で川にダイブする。大きな水柱が上がった。
川底から跳ね上がると同時に、セラくんの細い腰をがっと捕まえる。脇に抱えると、セラくんは楽しそうにじたばたした。
「きゃーっ! 助けてアルマさんっ」
「変態につかまってしまいましたね、セラくん。あなたの犠牲は忘れませひぁーっ!!」
距離を取ろうとしたアルマさんを、それよりもずっと速く動いて捕まえる。
アルマさんも同じように抱えると、僕は足に思い切り力をこめて水面を踏み抜いた。
ドンッという爆発音に近い衝撃とともに、川を流れていた水がはじけとび、川底があらわになる。飛び散った水は激しいシャワーのように僕らに降り注いだ。脇に抱えた二人は楽しげな悲鳴を上げている。
「はー、すっごいねぇ。あ、テオ! あそこに魚がいる!」
今の衝撃で打ち上げられたらしい魚が、川岸でびちびちと跳ねている。セラくんがするりと拘束から逃れて捕まえに行く。川岸に石で手早く生け簀を作り、そこに魚を入れた。
「ふむ、負けてはいられませんね」
アルマさんも僕の腕から逃れ、ざぶざぶと岸に向かって歩いていく。水気を吸ったスカートが、アルマさんのお尻の形をくっきりと浮かび上がらせていて、僕はあわてて視線をそらした。
アルマさんが3匹ほどの魚を矢で射抜き、セラくんが手づかみでさらに2匹捕まえたところで、昼ごはんは魚ということになった。僕も魚を捕まえようとしたけど、二人に全力で止められた。