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8日目
今日もまた寒い日となっておりました。
こんなことに…みんなが苦しんでいるのに…なぜ王女様が塔を離れてくれないのか?
国のみんなは不思議で仕方がありません。
王様は何もせずあいもかわらず祈り続けている…王様はそうするつもりだったはずです…けれど今回はそうはいきませんでした。
「国王様!!!何やら城の前に小さい男の子が国王様に合わせてくれた叫んでおります。どうなされますか?」
王様ないなりの時間はそんな兵士の言葉で邪魔されるのでした。
王様はなぜそのようなことをいちいち聞くのか?と疑問に思いました。
子供とわざわざ会う必要などないはず。
「そのようなことをいちいち申すな。会うわけなかろう。私は祈らなければならないのだ。」
そういうと王様は後ろを向き神の像に祈り始めた。
兵士はそんな王様を見て呆れて何も言えませんでした。
…呆れて言えないのではなく王様にそんなことを言うのは不敬罪にあたると思い言わなかっただけなのだが…
「そんなに祈ったとしても何もかわらないと思うけどな〜。」
王様、兵士の後ろから声がしました。
この部屋に男は二人しかいないはずなのに…王様と兵士は後ろを勢いよく振り向きました。
「何者だ。我はこの国の国王であるぞ。そのような態度をとって良いと思ってあるのか!」
「し…しょ…少年!どうやって入ってきたのですか!?」
兵士の口ぶりからすると王様にあいたいといっていた子供のようだ。
「ごめんなさい、国王様。大事な話があったから許してね。
それとどうやって入ったかって?城の見回り兵さんに話を通してもらったんだ。」
「どうやってですか?」
「食べ物をあげるって言ったら通してくれたよ〜。」
「た…たべ物ですか?」
兵士は明らかに動揺したようです。
そんなことで国の兵士が子供のいうことを聞くのかという不甲斐なさからです。
「お主を見た感じ貧相らしき姿だが。食べ物で釣ることができるのか?」
王様は見た目からして貧乏そうな見た目な子供が、国の兵士のいうことを聞かせることができるのか?とそれほどの食料があるのならそれを売って服を綺麗にするのではないか身だしなみを整えるのではないのかと考えたため聞いて見ました。
「できますよ〜。」
「どのようにしてだ。」
「ネタバレしたくないな〜。」
「少年…頼みますから国王様のいうことを聞いてくれないか?大変なことになるぞ。」
「どうしようかな〜。」
「少年!」
「顔怖いよ。兵士のお兄さん。それと僕にもちゃんと名前があるんだよ。」
「…すまない。では名前は?」
「申し遅れました、私の名前はレイス・ラナトスと申します。以後お見知り置きを。」
「…レイス…あぁレイスといえば国王様、冬の王女様とあって話をできる唯一の子供ではないですか。」
「!!…そうか…お主が噂に聞く。」
「ふーん、噂になってるんだね。興味ないけど。」
「しかしそれとこれとは関係ない。先ほどの質問に答えよ。」
「仕方ないか〜。僕はね村の中で孤立してるから時間がたくさんあってね。冬に育つ作物を作り出してたんだよ。
それが成功したから量産してみたんだよ
それでこんなことが起こってね。
町のみんなに無料で配ってたんだよ。
もちろん僕の名前は伏せてるけど。
それを分けてあげるって言ったんだよ。
まだまだたくさん余ってるからね。」
一人で長い間しゃべっていたためか喉が渇いたようで持ってきた飲み物を飲みだしました。
その間王様はこのレイスというものは天才なのではないか?と考えてしまいました。
しかしその考えをすぐに捨て再びレイスに質問しました。
「それでお主は何故我に会いたいと言ってきたのか?」
「そうだ!そうだった、言いたいことがあったんだよ。」
「忘れてたんですね。レイスくん。」
「して内容はなんであるか?」
「王様が何もしないことに対して言いたいことがある。」
レイスの纏う雰囲気が変わった。ふわふわとして優しい顔が変わり真面目なキリッとした顔になっていた。
(なんだこやつは、纏う雰囲気が変わった!?)
(こんな小さい少年が国王様をいっぱい引かせた!?)
「じゃあ話すよ。
王様が祈ったところでかわらないよ絶対。この均衡した現状は。
どんなに祈り続けても神様は助けてくれない。神様は僕たちを見守るだけ。僕たちの行いを見ているだけだよ。
絶対に自分の手を下さない。
それが神様だよ。
みんなは神様を誤解しているよ。
神は万能じゃない。みんなは神を自分の都合の良いものだと考えていつでも手を貸してくれるそういう存在にしてしまったんだ。
勝手に期待して勝手に失望する。
いつも繰り返してる。教会にいるみんなおんなじなんだ、王様と。」
「……ぅ。」
王様は本当のことを言われて言葉を詰まらしてしまった。
それでもレイスは喋りを止める事なくすすめていきましす。
「だから、王様から動かないと。
一人一人が動いても小さな、ほんの小さな揺れにしかならない。
人は弱いから、小さいから、どうしようもないものだから。
だからと言ってみんなが一斉に動くなんてことはないんだ。
一人だと怖いがるくせに、一人だと弱虫なくせに。
それなのにみんなで行動することさえ怖がるんだ。
みんなで行動すると必ずどこかで辛い部分を押し付けられる人が出てくる。
そうなるのが怖いんだ。
人は矛盾する生き物なんだ。
僕は弱い。
僕も同じ人間なんだ。
僕が動いたところで広く広大な海に小さな石を投げてできた小さな波紋にしかならない。
だから助けて欲しいんだ。
王様に。
弱いから必要なんだ。指導者が代表者が、それがいればみんな動けるんだ。
責任という重荷を押し付けられるから、汚い理由だけどそうなんだよ。
王様はきついかもしれない、辛いかもしれない。王様だって人間だから…
でも動かなきゃならない。
動かなきゃ変わらないんだよ。
だからお願い動いてください。
王様なら大きな波紋になるいやそれどころか津波になる。大きな力を持った津波に。」
「…」
「…」
レイスの話を聞いて…レイスの叫びを聞いて王様や兵士は何もいえなくなってしまいました。
土下座までしているレイスを見て…王様の中で…頭の中で…考えています、理解しようとしています。いや理解はしている。けれど理解していたとしても動けるか動かないかは違う問題です。
「国王様…動きましょうよ。」
近くにいた兵士が言いました。王様に対して発言することは危険なことです。
けれど言わずにはいられなかったのです。
「…少し考えさせてくれないか。」
やっと絞り出せたのはそれだけでした。
レイスは頭を上げ王様をじっと見ました。
「…わかりました…3日までなら待てます。」
「そうか…」
「ちょーーーーーとまっっったぁぁぁあーーーーー!!!!」
「「「!!!」」」
突然祈りの部屋の中に大声が響いた。
「お前!」
「何をしているのあなた。こんな小さい子が必死になって説得しに来てくれたのよ。
あなたにも動く理由ができたのよ。
やっと動く理由が。
今動かないと。
一生変わらないわ。
昔のギラギラ輝いていたあなたに戻りなさい。」
王女様の言葉を聞き目の色を変えました。
どうやら覚悟を決めたようでした。
「お前たちの言葉確かに聞き届いた。我は動くことにした。レイスよ、ありがとう。」
「国王様…」
「王様ありがとうございます。」
「親父。」
「「「「!!!」」」」
「?何驚いてるんだ。」
「いやいたの?」
「今来たところだ。決して親父がこんな子供に言い負かされたのは聞いてないぞ。」
「がっつり聞いておるではないか。…ところでレイス、我は何をすればいいのだ。」
「まだ何もしないよ。」
「「「「は!?」」」」
「だから3日待つって言ったんじゃないですか。」
「……確かに。」
「あ!そろそろ時間だ。王様!!!また3日が来るよ!」
「わっ……わかった。」
「どこに行くんだ?」
「きっと冬の王女のところでしょう。」
「じゃあね〜。」
真剣な顔がいつの間にかふわふわとした顔に戻っていました。
そこに残されたものたちはみんな呆れた顔で、穏やかな顔でレイスが去って行くのを見ていました。






