3
6日目
また一日冬が伸びてしまいました。
ただ運が良いことにまだ食糧不足によって起こる事象は何も起きていません。
争いも餓死も…
ただ寒さによって国の明るさはなくなってしまっています。
国の王様はどうすることもできず。
息子である王子様に何を言われても神に祈ります。
王子様は父である王様不信感が募ります。この人が王様でいいのかと。
閑話休題
昨日と同じように同じ時間くらいに同じ場所にレイスは立っていました。
門番はもう隠すことなく門の横で座り込んで眠っています。
そんなことで門番が務まるのか?
国のみんなもレイスも思っています。
しかしその気持ちもわかります。
退屈なんです。ただひたすらに。
「王女様〜またきましたよ〜。あっそびましょー。」
気持ちよく眠っていた門番はレイスの大声で邪魔されてしまいました。
そして大声のした方を向きレイスとわかると顔を真っ赤にしました。
「まぁぁぁた!!!おまえか〜〜!!!いい加減にしやがれ!」
いつもなら首根っこを掴んで放り投げるのですが退屈さに対する苛立ちと、ここ最近のレイスの大声で、それをしませんでした。
門番はレイスを蹴ったのです。
屈強な門番が13歳のレイスを蹴る、それはまずいことです。
「あ゛ぅぅ」
レイスは少し飛ばされ蹴られた腕を押さえています。
「おらこれに懲りて帰りやがれ。クソガキ!。」
門番はそう言って元の場所に戻りました。
すると突然門が勢いよく開かれました。
門番は驚きました。国のみんなも驚きました、そしてレイスも驚きました。
「レイス!」
「さ…サーシャ?」
サーシャはレイスの元に駆け寄ります。
「出てきて大丈夫なのか?」
「何を言っているんだ馬鹿者。そんな場合ではないだろう。」
レイスの肩を持ちサーシャは塔の中に入りました。
残された門番や国のみんなはポカンとした顔でそこを見ていました。
塔の中に入るとサーシャはレイスの腕の怪我を見ました。
「これはひどいな…なんであんなことをしたんだ!」
レイスの腕は赤く腫れあがっていた。おそらく折れているだろう。
それは当然といえば当然である。
大の大人が蹴ったのであればレイスくらいの子供であれば普通に骨は折れている。
「痛てて…だってさ…きたことを知らさないとって思ったんだサーシャに。」
「はぁ…それでこんなことになっては私は…いや…なんでもない。」
「?」
意味のわからない返事を返され首を傾げた。サーシャはそんなレイスに小さくため息をつきながらレイスの腕の折れた部分に触れた。
「癒しの光」
「!?」
折れた場所に触れたては光だし腕を治していった。
「…すまぬな…私の力ではこれが限界だ。」
光が止み腕を見るとまだ少し腫れていた。
「ううん、ありがとう、サーシャ。すごいねどうしたのこれ。」
「あぁこれは魔法だよ。」
「魔法!おとぎ話みたい。本当にあるんだね。」
レイスは物語によく出る魔法を目の当たりにしてはしゃいだ。
その姿は普段では見られない年相応なはしゃぎ具合であった。
「こらこらそうはしゃぐな。ほら包帯を巻くからなじっとしてくれないか。」
「ごめん…それとありがとう。」
「どういたしまして。」
サーシャはレイスの近くにより包帯を巻いていく。
近づいたことにより互いの息遣い…匂いがわかる。
サーシャはレイスの暖かい太陽のような匂いをレイスはサーシャの優しく甘い花のような匂いを感じ取った。
いまするのは、リズムの良い呼吸音…規則正しく時を刻む時計の音…それは塔の中には二人だけだと示している証拠となっていた。
(近い…近いぞ…。まずい…胸がドキドキする…おかしい…これでは…私は…レイスのことを…ーーと思ってるみたいではないか。)
燃える暖炉からくる熱のせいだろうか。サーシャの顔は赤くなっていく。
…そんなはずはないサーシャはわかってしまう自分がの気持ちを…この想いを…
(どうしたのかな?サーシャは急に顔が赤くなって。熱でもあるのかな?)
レイスは何も気づいていないようだ。
サーシャはそんなレイスを見てホッとするのだが同時に少し悲しくもあった。
「大丈夫?熱でもあるの?」
突然サーシャの額にレイスは手を当てる。当然折れている方とは逆の手で。
「わからないなこれじゃぁ。」
そう言うと今度はサーシャの額にレイスは自分の額をくっつけた。
「えっ…えっ…えっ…」
(近い近い近い。まずいぞ。胸の高まりが治らん。)
「熱い…熱があるじゃないか。ベッドで早く横になって。」
「あっ…いやっ…大丈夫だ!」
(これ以上近くにいたら)
「あっ!待って…くっ…」
恥ずかしくなってサーシャは塔の奥、キッチンのある部屋に逃げ込んだ。
心配になったレイスはを追いかけようとするが腕の痛みがそれを邪魔した。
「危なかった…これ以上近くにいるとどうなっていたか…」
キッチンの奥で深く深呼吸をする。
頭の中を切り替えようとするがそれがなかなかできない。いくら変えようとまだレイスの顔が近くにいるように鮮明に頭の中に映し出される。
なぜかこれが懐かしくも思っていた。
(確か昔にもこんなことが…確かあれは…
四年前…この国で…私があまり自分の立場がわからない時塔から脱走して。
ヘマをして怪我をしたんだったな。
その時私の怪我を治療してくれたのは確か…あの時の私と同じくらいの歳の男の子だったような…私はその男に不覚にもドキッとさせられた。
もしいまこの国にいるのなら…いま私やレイスと同じくらいの歳か…
…ん?待てよ…確かレイスは昔私と会ったといっていたな…もしかして…)
温めているスープを忘れサーシャは昔のことを思い返していた。
ーブクブクブクー
「!しまった…温めすぎたな…」
サーシャは少しスープが冷えるのを待つことにした。
「あの時と逆になっちゃたな…」
サーシャがキッチンあと逃げた後一人になったレイスが呟いた。
「あの時はまだサーシャが王女様なんて知らなかったし、お互いに名前も知らなかったから思い出すのに時間がかかってしまった。サーシャは忘れているかもしれない。」
少し声は寂しげだった。
「まっいっか。覚えていても覚えていなくても、会ったのは少しだけだし、今から仲良くなればいいしね。」
一気に声のトーンが変わり寂しげなものから元気のあるいつもの声に戻っていた。
「何独り言をいっているんだ?レイス。」
後ろから突然声がした。
どうやらサーシャがキッチンから戻ってきたようだ。
手にはスープを二人分持って。
「わっ!驚いた。驚かさないでよ。」
「すまんな、何やら独り言を言ってるようだったから静かに近づかせてもらった。」
特に悪いと思っているわけでもなくサーシャは机にスープを置いた。
「それで何を独り言していたんだ。」
「ん?昔のことだよ。」
「…!そうか。奇遇だな私も昔のことを考えていたよ。」
「へぇ、すごい偶然だね。」
それから二人は別にその昔のことを掘り返すわけでもなく話しを切った。
「ところで頼みたいことがあるんだけど。」
「なんだ?」
「スープを飲みたいんだけど…腕が痛くてどうしようもないんだ。食べさせてくれないかな?」
「は!?食べさせ…させ…させる!?私がお前にスープを?!」
「うんお願い。」
「…」
せっかく作ったスープを食べてもらえないことは悲しいが、食べさせるのは恥ずかしいと思った。
けれど結局食べて欲しい方が勝ったため食べさせてあげるることにした。
「ほ…ほら…早く食べろ。」
「ありがとう。」
「どうだ?美味しいか?」
サーシャは胸をドキドキしながら聞いていた。美味しくないと言われたらどうしよう…美味しいと言われた時どうしようそんな感情が胸の中を行き来する。
「うん!美味しいよ。とっても美味しい。今まで食べた中で一番。」
「!!!…そうかそれは良かった。」
(また…こいつは…なんでこうも…)
「そういえばよかったの?」
「何が?」
「塔の門を開けたこと。国のみんなに見られたけど大丈夫?」
「あぁ大丈夫だそんなことならな。…私はいいがレイスはいいのか?。」
「うん。別にいいよ。」
「それと魔法こと教えて。」
「あぁいいぞ。これはもともと私は使えなかったのだ。」
「そうなの?」
「そうだ。これは私が子供の頃、冬の妖精に気に入られてな使えるようになったのだ。」
「冬の妖精?」
「すまん…それを説明してなかったな。冬の妖精というのは…名前の通り冬を操る妖精のことだ。」
「つまりサーシャはその冬の妖精に気に入られたから冬の王女様になったってこと。」
「そうだ。他にも春、夏、秋の妖精もいるぞ。それと他の王女は全員私の姉様だ。」
「そうなの!?知らなかった。」
「そりゃ〜そうだろう。非公開なんだからな。」
「それって僕に教えてもいいの?」
「お前だから教えたんだ。」
「そっかぁ〜…ありがとう。」
レイスの質問に答えながらスープを飲ませてあげる時間が続く。
本当に美味しそうに食べるため食べさせているサーシャも嬉しかった。
そんな楽しい時間はすぐに過ぎレイスが帰る時間になってしまう。
「もう、帰るのか?」
「うん…ごめんね。」
「なぜ謝る。」
(これでは私が寂しがっているみたいではないか。)
「なんとなく。」
「そ…そうか。…明日も来てくれるか?」
「うんまた来るよ。来ないでくれってサーシャが言ったとしても無理矢理でも来るよ。」
「ありがとう。」
「なんでお礼を言うの?」
「おまえのがうつっただけだ。なんとなくだよ。」
レイスはいつものように塔からこっそりと出て行った。
サーシャは彼に手を振る中で昨日よりも胸の痛みがひどくなっているのに気づいた。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせる。
また明日会えると…
国の中では今日の一件でサーシャとレイスが噂になっていた。
何年か前に二人があっているという設定をつけたのは理由があります。
流石に2日あっただけでは好きになる理由が薄いかなと思いまして昔から好きになる兆しはあったということにしたのです。