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第3話「突然のハプニング!」

 そして、メアリとスーサンは鳥取に来ていた。緑豊かというか、完全に田んぼだらけのこの土地で、2人は取り敢えず空気を堪能するため深呼吸をする。


「うん、まあまあね」

「都会とは違った空気ですね。……でもよく考えたら、私の実家も田舎でした」


 2人はそれぞれそんな感想を述べた。

 ここまでの道のりは困難を極めた。運転するスーサンをメアリが足蹴にして、たくさんの苦労を重ねてついに目的地にたどり着いたのだ。

 どんな苦労があったのか、詳細は長くなるのでオールカットします。


「いや〜大変でしたよ実際。メアリは私に運転を強要してきて寝かせてくれませんでしたし、そのくせ自分はぐっすり眠ってるし、おかげで三徹もしてしまいましたよ私。その間に現れた"復讐の使徒ゾーギウス"と"超古代兵器オレオレオ"との攻防も凄まじかったですし本当に大変でした。……私、今回働きすぎじゃ無いですかね?」


 それに対し、メアリは怒ったように言った。


「舐めたこと言ってんじゃ無いわよ孤立探偵。真っ当に生きている人は普段あんたの何千倍も働いてるのよ。オレオレオなんて日常的に討伐してんのよ。大体あの2体倒したのあたしだし」


 そう働いたことも無い現役女子中学生メアリは、偉そうな調子でビシッと言ったやった。


「でもオレオレオの両脚を"イカ足"から"タコ足"に変えたのは私の功績でしょう? 他にもオレオレオの左薬指をパイルバンカーに交換したのも私でしたし」

「だとしてもあたしが倒したことは変わり無いしあたしの方が世界に貢献したからあたしが凄いの褒められるべきなの。分かったら報酬、ボーナスプラスして色付けといてね」


 こうしてまた、スーサンの貯蓄が減っていく。

 それはそうと忘れてはならないのが秘宝の件だ。この鳥取の何処かに鬼子の金が隠されているらしい。

 探偵として、探偵としてまったく関係の無い単なる好奇心による調査だが、スーサンはやる気十分だった。


「こんな金にもならない調査ばっかりしてるから、貧乏なのよねぇ……」

「でも秘宝が見つかったら私たちにも分け前がくるかも知れませんよ? あの10円玉、調べたところ本物の金で出来ていたそうですし、秘宝に関しての裏付けも済んでます。鬼子の金は、本当に実在するんですよ」


 スーサンはポケットから例の10円玉を取り出した。外側から中身まで全て本物の金。今はこれだけでも、秘宝さえ見つけられればこの数百倍の宝が手に入る…………かも知れない。


「そんな計画性の無いあっさーーーーい理由で秘宝探しする奴なんて、物好きか馬鹿かのどっちかよ」


 メアリはそう言うが、自分もその物好きか馬鹿かのどっちかの内に入っていることを、本人は気づいていない。


「で、鬼子の金があるっていう場所は検討ついてるんでしょうね。まさか幾ら田舎だからって、この広い地方をぐるぐる廻るわけじゃないわよね」


 言われてスーサンはスマートフォンを取り出す。


「ご安心を。既にめぼしい箇所はチェックしています。グーグル先生は偉大ですね」

「……秘宝探しをグーグル先生に頼ってる時点で秘宝感無くない? どんなお宝物件よ」

「釣れないこと言わないでください。ここまでの道のりだってグーグル先生あってのモノですよ? 私カーナビとか持ってませんから、移動は全てマップ頼りだったんです」

「それは知ってる、一緒に道調べたし。別にグーグル先生を無下にしてるわけじゃないから」


 そう、グーグルは偉大である。その内グーグルに助けられた人たちが集まる"グーグル教"なる新興宗教ができてもおかしくないレベルだ。


「それで、例の秘宝がある場所は何処にあるの?」

「ああ、はわいです」

「……ハワイ?」

「鳥取県羽合町。今は湯梨浜町となっていますが、"日本のハワイ"と呼ばれる場所らしく、温泉などが有名だそうですよ」

「へー温泉ねぇ……」

「今回私たちが赴くのは、そんな羽合の温泉旅館、そのひとつです」


 再び車にに乗り込み、2人は温泉旅館を目指した。

 はわい温泉、何を意識したのか従業員はアロハシャツで仕事をしているという奇抜な所。

 地味な町にアロハというミスマッチさを見学する観光客も多く、はわい温泉はそれなりの人で賑わっていた。


「はーここが日本のハワイかぁ。……なんか普通ね」

「まあ田舎なんてそんなもんです。うちの田舎もそうですし、都会人が思う田舎の憧れなんて殆ど幻想ですよ。私には分かりませんね」

「隣の芝生は青い、かしらね。あたしは悪くないと思うわよ、こういう平穏な所」


  言ってる内にもうすぐ目的地だ。長旅の疲れもあるが、何にしてもずっと車で寝泊まりしていた2人はちゃんとした寝床が欲しかった。

 慣れない道を突き進み、入り組んだ道も突き進む。


「ねえ、この道結構細いから気をつけてよね。ただでさえオンボロな車が更に傷がつくわ」

「それは分かってますが、あいにく私はこういう道は慣れてなくて……。ああダメだ、ぶつけそうで不安です。メアリ、良ければ変わってくれますか?」

「おっさんはどんだけあたしを犯罪者にしたいのよ。馬鹿言ってないで前見て、本当に何があるか分から……」


 言ったそばから問題が起きた。


「ビッフゥ!!」

「あ痛ッ!」


 突然、2人を乗せた車が地面に落ちた。

 いや、地面に落ちたというのは正しくない。何故か細い道に大きな穴があり、それに気付かずそのまま真っ直ぐ落ちてしまったのだ。


「…………! 何なのよこのレアケースは!?」

「あががががが今世紀最大級の衝撃……! 一体何が起きたんですか!?」


 あたふたした様子でメアリとスーサンは車内から抜け出た。大穴はそれほど深く掘られてはいなかったが、車は頭から地面に衝突してしまった。

 何処か目立った傷跡はないか、スーサンがマイカーを隅々まで確認した所、幸いにも故障らしい不具合は生じていなかった。しかし完全にタイヤを取られてしまい、ちょっとやそっとでは車を元の位置に戻すことはできないと思われる。


「あーあどうしようかコレ。というか何よこの穴、道の真ん中にあって良いものじゃないでしょう」

「そうですねぇ……、 レッカー移動して貰うお金はありませんので誰かに手助けして貰うしかないですね」

「自動車保険は?」

「保険なんてブルジョアなもの加入していません」

(……それ、ダメなんじゃないか?)


 メアリはそう思ったが、あいにく彼女はまだ中学生である。その手のルール、交通法には詳しくなかったので何とも言えない。

 そうしてメアリとスーサンが、どうしようかと首をひねっていた時だった。ふと穴の中を見渡していたスーサンが、穴の隅っこで奇妙なものを見つけた。


「むむ? あれは……」


 気になったスーサンはそれに近づく。剥き出しの土の上でこれ見よがしに存在するそれは、頑丈そうな古い木箱だった。

 スーサンは目を見開く。


「メ……! メアリメアリ! 見てくださいよコレ!!」

「何なのよスーサン。おっさんが子供みたいにはしゃいでもただ単に気色悪いだけよ?」

「今はそれより来てくださいよ。凄いものを見つけてしまいました!」


 はしゃぐスーサンに対し、やれやれといった調子でメアリは彼の元へ近づいていく。


「な! これって……」


 そしてメアリは例の木箱を見た途端、目を丸くした。それは初めて見るものだったが、昔ながらの品で有名な代物だった。

 スーサンが言う。


「驚きましたかメアリ。千両箱ですよ千両箱! 鳥取に来て早々、幻の秘宝を見つけてしまいました!」


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