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英雄魔女の旦那  作者: ryuu
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夫婦喧嘩と深夜の訪問者

 仕事を終えて職場と併設された宿舎寮の10階の3LDKの1009号室の自宅へ帰宅し、疲れ切った体を休めて西洋式のリビングルームにあるソファに座り込みテレビをつけた。

 テレビの回線は日本のローカルネットではなく異世界のローカルネットワーク回線の放送であった。

 現在は夜11時。これと言って面白い番組もなく無難にニュース番組を見ていた。

 すると、玄関が開く音が聞こえ例のごとく体裁上、妻と言う風になってる結衣が帰宅したことで拓斗はソファから立ち上がりキッチンへ向かいお酒を冷蔵庫から取り出し、作りたてのご飯もさっとレンジであっためた。


「おかえり」

「ただいま。はぁー、つかれたわよまったく」


 机の上にいつものように彼女が帰宅後に飲む、麦酒缶とコップとあっためた夕飯を置き拓斗は黙って隣ソファに再度腰を下ろす。

 彼女もいつもどおりに自室に行き、ワイシャツにジャージ一枚と言う美人なのに台無しな格好の部屋着に着替えを済まして手洗いをしてそのまま拓斗の隣に腰をおろして麦酒を煽る。

 テレビを見てると過去を思い起こすあの男が映った。


「イール・ハークライト・フォルフィッツ。嫌なやつよ。私に未だに執念深く婚約の話持ちかけてくるし何よりも政治面でいろいろとあくどいことしてるみたいよ」

「へぇー、でもさこのニュースだと魔道生物を捕縛する新たな機械を発明だとか、俺らの役に立ってるんじゃないか」

「建前よ。そんなの」


 テレビでは3年前。彼女がまだ『神楽結衣』だった時に婚約交渉を日つこいくらいに仕掛けてきた男の一人であり、拓斗が『異空間次元管理監察局』に転職するきっかけを作った因果の男とでも言うべき忌むべき野郎だった。

 彼のほかにも妻である結衣に散々付きまとう元の婚約候補者は多く、夫婦と言う体裁を便宜上作っていてもやむことはない元婚約候補たちの押し。

 これもいろいろと局内での結婚内情の法律の違いが人間界とあるからだ。

 その中でも特に一番、厄介なのがこのイールだが、テレビではそのイール・ハークライト・フォルフィッツ。フォルフィッツ家という研究家であり貴族の家柄の子息ある彼が新たな機械を発明したことで世界のテロ対策に貢献したことを公にとマスコミが大々的に取り上げていた。

 それを見て結衣は飯を食いながら気に食わないようにこの映像は建前だという。


「建前ってどういう意味だ?」

「そのままの意味よ。私は知ってるのよ。だって、これでもコイツに言い寄られてる女よ。嫌になるってくらいこの男の本性を知ってる。タクトだって見たでしょ? コイツが3年前に魔道生物を使役していたのを」

「そういやぁ……」


 蘇る3年前のおぼろげな記憶。考えればなぜ、魔道生物や悪人を罰するはずの男があのような魔道生物、悪の権化ともいう怪物を使役していたのだろうかと疑問に感じる。


「この男裏では政治家たちに貢いで秘匿兵器の開発を行ってるのよ。何を考えてるんだか知らないけど危険思想の持ち主に違いないのよ。私を婚約者にしたい理由だって私自身の力が目的みたいだった」

「ふーん」

「ふーんってね、少しは嫁の心配しなさいよ」


 食器を置いて、キッチンへ向かう彼女はそのまま食器を食洗機に放り込み魔力自動スイッチをオンにして洗浄を開始した。

 そのまま、彼女は憤慨をあらわにする様に力強く腰を落とし一瞬、ソファがきしむ。


「嫁? 良く言うよ。実際俺らは結婚なんてしちゃいないだろう。周りにはそういうデマを通してるだけの偽夫婦」

「ちょっと、盗聴器が仕掛けられてたらどうするの! ちょっとは慎みなさいよ」


 そう、拓斗と結衣二人は夫婦と言う肩書きを作ってるだけに過ぎない。

 それは神楽結衣という彼女に問題があった。


「盗聴器なんて仕掛けられてはいないだろ。第一、誰が英雄魔女夫婦の部屋に盗聴器を仕掛ける? そんな勇気のある奴はいないさ。英雄様の敏感なセンサーはそんなものすぐ探知できるだろ」

「そういう過大評価は他人からされるとうざいって知ってる?」

「だって、事実だろ?」


 彼女は英雄と言われるほどの魔女。魔法を使う女性。魔法使いだ。

 そうなったのも過去に彼女は大きな世界を救うほどの偉業を成し遂げたことが意味する異名。

 


「うぐぐ」

「まぁさ、話は戻すけどよ。結衣は3年前に俺の望みをかなえてくれた。歪んだ形であったがそれは結衣自身が周りの元婚約者共の言いよってくるから少しでもなくそうという対策を講じた結果だ。んで、夫婦と言う形式を作るということを上司に伝えてその上司もその嘘情報に加担してデマを流して早2年と半年か。何か変わったとするならば生活と周りからの散々ないじられくらいじゃないか? 未だに元婚約者候補が言いよってきてるじゃないか」


 彼女が英雄だからこそ、言いよる男は数多くおり、のちの世代にその最強の血筋を少しでも入れたいと躍起になる男どもの群れ。

 だからこそ、結衣はそれを突っぱねて消してしまう要因がないかと探して3年前に思わぬ起点がめぐり彼、最上拓斗を夫にしたのだ。

 しかし、それはあくまで建前では。

 職場の協力のもとで夫婦と言う扱いにもしてもらえて普通に生活できてはいるもののそれでも不憫はあった。


「そうね、たしかにそうよ!」

「もう、この際俺らは夫婦じゃない。実は結婚していないですって明かそうぜ」


 拓斗は疲れ切った表情で飛んでもないことを口走る。

 さすがの言動に結衣は口を開いたまま茫然自失状態だった。


「た、タクト何言ってるのよ?」

「だって、もう疲れるんだよ。毎度毎度夫婦ならもっと愛想よく俺にふるまってくれてもいいはずなのに結衣ときたら私生活では帰宅して直後は酒飲んではそのまま寝る、休日は家事全部おれがやってる。仕事場でも上司だからって俺ばっかりしつこくあたるし、なんなん?」

「喧嘩売ってるの?」

「ああ、そうさ。もういい加減うんざりだってことさ! もっと、夢見る恋人生活を想像してたらこれじゃあひどい奴隷だぞ」

「奴隷って……私より弱い男はみんな奴隷でしょ?」

「その考え間違いだ! 結衣にかなうやつなんてこの世界探してもだれ一人いないぞ! わかるか? 結衣は小さい頃から数多くの犯罪者を幾度もなく倒した英雄だろ? そんな英雄にかなうはずないだろ」


 そう、神楽結衣とはそういう女性だった。

 私生活ではだめだが仕事はできる最強女。

 こんな素を元婚約者候補を推薦する男どもが知ったらどうなるのかと拓斗は思った。


「だいたい、おかしいのは日本と違って重婚がOKってところだ。おかしいだろ。ココ」

「仕方ないじゃない。ここは異世界間の中心。いろんな種族がいれば重婚もありになるのよ」


 そう、この場所は異世界間の問題を解決する政府の組織がある空間の世界。通称『次元断層空間世界』といわれてる世界の中心。その場所に拓斗らの拠点はあり生活してる。


「とにかく、タクトと別れるなんて話はなしよ。全部終わってから。だいたい望んだのはタクトでしょ」」

「ああ、確かに望んださ! でも、望んだのは彼女がほしいってことだよ!」

「一緒でしょ」

「どこが、だ!」


 喧噪繰り広げる最中にドアチャイムが鳴った。時刻は夜中の12時になろうというのに一体誰だろうかと二人に緊張が走った。

 まず、結衣が右手に風をまといだす。その風も一種の魔法使いの魔法使用の待機モードだった。

 拓斗は懐から拳銃を取り出し玄関に歩み寄ってドアスコープを覗き込んだ。


「え?」


 スコープに映ったのはボブカットにした茶髪を端っこだけきれいにみつあみに編み込んだかわいらしい小柄な美少女。

 その人物は知り合いだったのですぐに扉を開きで迎えた。


「どうしたんだ? こんな時間に希ちゃん」

「すみませんです、こんな夜分にお兄さん」


 訪れてきたのは神楽かぐらのぞみ、結衣の妹だった。彼女は未だに拓斗と結衣が本当に結婚してるつまり、事実婚してると思ってるために拓斗をお兄さんと呼んでいた。


「助けてほしくって来たんです」

「助け? なら、親に頼めば――」

「いえ、たぶん危険なことだから……」

「危険?」


 希は神楽家の実家で両親と暮らしている。

 少しくらいの危険ならば両親が守ってくれる。

 希はしかし、より一層の危険があると言って拓斗と結衣を訪ねた様子だった。


「ちょっと、拓斗誰だったのよ? ……ってノゾミ?」

「お姉ちゃん」


 拓斗は軽くさっき希から聞いた話を言伝した。すると、結衣も険しい表情に切り替わり希に何があったのかと問いただした。

 すると、彼女は言った。


「私ここ数週間、誰かにつけられてるんです」


 彼女はそう言ったのだった。

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