最終戦争 後編・エピローグ
長い間お待たせしました。
闇に飲まれた拓斗だった――
そう思われた。
炎はタクトを飲み込むどころか次第に鎮火していく。
「なんだ? どういうことですの?」
炎がすべて静まり返り、そこには黒い神服を着込んだ拓斗が立っていた。
炎を体からくゆらせ、手のひらで転がし遊ぶ火の粉を拓斗は放った。
それは希に着弾した。
彼女は絶叫を上げながらのたうち回った。
「拓斗!」
「安心しろ、結衣。この炎は悪のみを焼き尽くす」
結衣が希に対する被害を心配して拓斗を咎めた怒声を張ったが拓斗の説明を聞いて希の姿を視認した。
希の体にはやけどの傷さえ現れていない。それなのに彼女は苦しみ悶えていた。
次第に彼女の体から黒い煙が立ち上りだした。
「おまえの目的は理解している。あらゆる世界を過去にさんざん破壊したのはその世界の力を魔石という名の力を寄せ集めるための宝石に蓄積させるため。さらに、局をつぶしたのはこの土地に降臨させる以外に局とこの土地を合体させることを目的とした用途があり、さらに複数の世界を連結させ、この世界に矛盾を生じさせる。あらゆる世界の持つ特性概念が反発しあい概念に矛盾が生じ、ゆがめられることによって新たな法則を作れる。それがお前の目指す理想世界」
希の体から抜き出すようにして現れたのは黒いドレスを着込んだ眼帯の銀髪美女。
彼女はほくそ笑みながら嘲笑する。
「そのとおり! 過去にそれを邪魔をしたのが貴様だ! 貴様のせいで理想世界を再度作るために手順がまた長い期間かかった! そうして、ついにこの魔術装置をもって完成するのだ!」
転送装置はいくつかの改造が施された痕跡があり、足場には大きな魔法陣が徐々に表れ始めていた。
「貴様らはそのために邪魔だった! だが、英雄魔女貴様だけは違う! 貴様という素体もまたこの魔術装置の贄とする予定だ! だからこそ、幾度も追い詰め殺そうとしたが何度となくそれをかいくぐるとはまさに憎い男だ!」
もう風が拓斗を叩く。拓斗は平静を装った表情で地面に触れた。
「そうか。そういう貴様を俺も嫌いだ。だからこそ、貴様はまたも過ちを犯し俺に敗北する」
「何を言っているんだ!」
「この土地の管理権限は俺にあるんだ。その土地で行うあらゆる物事はすべてに観賞できるも道理なんだよ」
すると、拓斗は魔法陣に触れて、光が沈下した。
「な、なっ! 私の長年の成果がぁあああ!」
「この世界で悪さを行わせはしない。民をこれ以上殺させもしない!」
「くそ、くそぉおお!」
拓斗を押し倒した悪神を前にして結衣は動こうとしたが――
「結衣、動くな!」
拓斗の覇気の声に足がすくみ、ことだまでも受けたかのように身動きが取れなくなる。
「ごめん、結衣。でも、時期に終わる。この悪意に満ちた惨劇は」
すると、術式は三度再開した。
「あははは! 失敗したようですね! 再開する! 私の勝ちだ!」
「いいや、違う。これは俺が書き換えた魔法だ」
「は?」
「矛盾の断りを支配するは我である。我は望む世界に神無き世界を――」
「ま、待てそれを行えば貴様もただでは――」
「知っているさ。俺の願いはそれでいい」
「馬鹿か! そんなことすればいやだ、やめろ!」
次第に目の前の彼女の足から徐々に光の粒へと変化していく。
拓斗にもその変化は現れた。
それを見て結衣はどういうことが起きようとしているのか分かったのだ。
世界も徐々に光に包み込まれ始めていた。
「拓斗!」
「結衣、今までありがとう。俺はお前とここ数年間生活してきて楽しかった」
「いや、最後の言葉みたいに言わないで! あなたも一緒に帰るの! みんなでかえるの!」
「それはできない。だって、過去に戦争を引き起こして民草を何万人と殺した罪も俺は負っているんだ。この責任も取る。だからこそ、新世界に神は必要ない。神はいらないんだ。英雄さえいればいい」
「私がその言葉嫌いなこと知ってるでしょ! 馬鹿拓斗! そんなのはいいから! こっちへ来て!」
拓斗は首を振った。
そして、首元にまで迫った光の粒子変換。
拓斗は微笑みを浮かべて――
「さようなら」
そう告げたのだった。
結衣の悲痛な叫びと同時に世界は神々しいきらめきに包み込まれた。
******
それから数十年後――
神であった存在の消滅によってあらゆる世界がもとに持った。
悪神の引き起こした事柄が特にそうだ。彼女の事件が彼女の存在消滅によってなかったことに書き換えられ世界の消滅、人の死、次元島の消滅さえもなかったことになった。
しかし、それと同時に新たな世界も作られた。
その世界、新世界ユートピアは自然豊かで魔力あふれる土地だった。
そのために局員、および移住を希望する人を集めそこで居住権を獲得することとなった。
本日、その世界では人々が祭りムードでにぎわっていた。
祭りの広場の中央にある銅像には『創造神』タクトを称えると書かれた神像がある。
さらにその広場を遠くのお城のベランダから覗いて窺う親子の存在があった。
「お母さま、今日はお父様の命日ですわ。早く行きましょう生誕祭に」
「落ち着きなさい。愛。そんな恰好で行く気なの?」
愛娘、愛の格好を見て注意をする。この世界の王女とは思えぬ古びれた大人用のスーツを着込んでいた。だぼだぼで見ると愛くるしい姿だが行動するのにはとても大変だ。
彼女は最上結衣の愛娘だ。拓斗と最後の夜を過ごしたあの時にできた子供。それは拓斗の消滅では絶対に起こりえることないことだった。だが、それは起こりまるで拓斗が生きていると示唆するかのような奇跡。でも、あれから数十年たってもいまだに拓斗はこの場にはいない。
「だって、お父様のスーツだから生誕祭はこれですわ!」
「もう」
あきれてしまう結衣だった。
そんな寝室の扉がノックされると――
数人の女性たちが入ってきた。
「アイちゃん迎えに来たっすよ」
「げんきぃ~」
「……みなさんもう少し外で待ってたほうが……やばいかわいすぎますアイちゃん」
「ミリちゃん鼻血なの」
戦争を経験した英雄魔女とゆかいな仲間たちの愉快な仲間たちのほうのメンツが入ってきた。彼女たちも戦争時のことを思い出してそれぞれが当時の正装をして『魔道兵装』に身を包んでいた。
「みなさん、その格好で行くつもりかしら? もうすこし王城の親衛隊らしい格好をしたらどうなのかしら」
「そういう、イリナス局長も人のこと言えるっすか?」
イリナス局長も戦時を意識したあの当時の格好をしていた。
さらに最上優奈も現れて同様にスーツに身を包んでいた。
優奈も人間の世界から移住を希望した一人で息子の作った世界で生活したというのが強い希望だった。
そんな様相を見て結衣は微笑ましく思った。みんなが当時を振り返るための生誕祭、まるで同窓会ではないか。
「ったく、苦い思い出でしょ。せっかくの生誕祭なのよ。みんなドレスとか来たらどうなのよ」
「そういうお姉ちゃんも人のこと言えないでしょ」
そういって部屋に入ってきたのは一人の女性、神楽希。
彼女は自分のせいで多くの市民を傷つけてきたことを悔やみ最初は自殺しようとしたが結衣の『拓斗はそんなことを望まない』という一言が希をとどまらせ今こうして彼女は一緒に白の中で生活している。
「皆、そろそろ代表者が出ないと始まりませんよ」
「ええ、そうね、始めましょうか。私の旦那を称えた『英雄魔女の旦那の生誕祭』
結衣はみんなと連れ立って娘の手を握り部屋を飛び出して、凱旋門手前にとまった馬車に乗った。そのままパレードの凱旋門を馬車に乗って潜り抜けて市民にエールを送られながらにぎやかに微笑み返す。そうして、娘の愛を見て笑みを見せた。
あの時、奇跡にも近いことだった。世界が変わり、拓斗が消え、娘だけが私のおなかに残された。愛すべきあの人との子。
見ている拓斗。
私はあなたのおかげで今は幸せよ。
だから、拓斗いつかあなたが――
「ちょっと、お姉ちゃんあれ見て!」
希の言葉を受けて結衣は空を仰いだ。
空に一筋の光が生まれていた。
その光を私は知っていた。数十年前の戦争の時に拓斗の持っていた魔石から放出された光と同じだ。
「希ここは任せたわ! 愛一緒に来なさい」
「え、お母さん!?」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
転移魔法で光の先へ娘と一緒に転移した。
光の落下地点は山の中だ。
娘を連れて急いで駆け出す。
「お母さんどこ行くの!?」
「大丈夫、愛。何も心配いらないわ。だって、あそこにはあなたとお母さんが待ってる人がいるのよ」
私の気分は高揚している。
なぜか、わかる。あの人はやっぱり生きていたんだ。
「え」
光の着地点に一人の黒衣の神服を着込んだ男性がいた。
結衣は大粒の涙を流しながら娘を放って彼に抱き着いた。
そうして、泣きながら彼女は一言告げる『おかえりなさい』と。
のちにそれは奇跡の神話として語られ『英雄魔女の旦那』として一人の女性によって書き記された。
最後はずいぶんと簡潔に終わらせてしまい申し訳ないです。
この作品はこれにて終了です。
長い間お付き合いただきありがとうございました。
完走できたのも読者あってこそです。
作者の作品はこれ以外にも多数の作品が存在します。
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では、長い間ありがとうございました。




