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英雄魔女の旦那  作者: ryuu
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災害 後編

 二人が案内されたのは駅構内にある緊急避難のために建てられた地下シェルターだった。

 そこには多くの人々が籠っており全員が悲嘆にくれている。

 老若男女問わず、愛すべき家族や友人、または恋人などを失ったのか、人を探して名前を呼んでる人も多くいる。

 聞き込みまでしていて現実を受け止めきれていない様子だった。

 その中に一人見覚えのある人物を拓斗と結衣は見つけた。

 その人物は人々に落ち着くように促し現場の指揮をとってる様子であった。

 服には血の痕がべったりついていて何があったのか聞くのも嫌になるような姿。

 結衣はその人物、実妹の希へ走って駆け寄った。


「希!」

「お、お姉ちゃん!?」


 希は姉が生きていたことに心底驚いたのだろう。涙を浮かべて抱き合った。

 拓斗もあとから人の群れの間を通り抜けて彼女のそばへ近づく。


「拓斗さんも! よかったです……うぅ……生きてて……よかったよぉ」

「希ちゃんも無事で安心だよ。それで、他のみんなは?」

「…………」


 彼女は口を閉ざしてそっぽを向き涙を流した。

 それだけでだいたいの事情を察した。


「そうか……くそっ!」


 悔しくて涙すら出ない。

 拓斗はずらりとシェルターの人々を見渡して思う。


(わずか、これだけしか生き残っていないのかよ)


 シェルターにいる人の数は100人くらい。1000人と言うにはあまりにも少なすぎる数だ。

 東京には多くの人がいるにもかかわらずシェルターに集まった数はたった100と言うのは悲しい現実だった。


「自衛隊は?」

「現在、避難活動を行っています。私も自衛隊の人にこのシェルターを任せられましてココに人を集めていました。でも、まさか、お姉ちゃんたちが生きててここに来るとは思いもしてませんでした。でも、会えてよかった」


 結衣と拓斗もそれには心から同意をするように頷いた。


「俺たちも手伝おう。どうすればいい?」

「そうですね。では、まずは外から食料などの調達を願えますか? また、危地に行かせるような真似をしてもうしわけないですが……」

「いいや、かまわないさ。なにか装備道具や地図があればいいさ」

「それなら、こちらです」


 そう言って彼女はバッグを手渡した。


「災害グッズの一式が入ったものです」


 そして、水と食料もわずかに手渡す。


「もし、まだ避難に間に合ってない住民がいたらこちらに案内を。その水と食料は上で苦しんでる人に与えてください」

「わかったわ」

「了解した」


 さっそく拓斗と結衣は地下シェルターからすぐにでていった。

 その二人を見送り希は笑顔を消して冷やかな淀んだ表情を見せた。


「あーあ。ただの一般人ならよかったんだけどまさか、英雄魔女とその旦那だったとは予想外。でも、追い出したから準備はいいね。このウジ虫らにさらなる悲劇を与えるとしましょうか」


 希はそう言って地下シェルターのリモコンで閉鎖ボタンを押すと懐のポケットから試験ビンを取り出す。それを床に叩きつけた。


 ******


 二人は地下シェルターと言う場所に一時的に知った後に皿に再び外出問う形にはなったが今回は安全な道具も持ち合わせてるので落ち着きをした対応で行動できた。

 近辺をくまなく目を凝らしながら観察して被災者を探す。

 何処からともなく助けを呼ぶ声が聞こえて慌てて駆け寄ってくと20代くらいの男女のカップルが瓦礫に埋もれて苦しそうにしていた。


「大丈夫ですか!」

「今助けるわ」


 結衣はこの時ばかりは出し惜しみなどせず魔法を使う。

 瓦礫が急に宙に浮きあがって二人の男女は夢でも見てるのかと呆けた面をしていた。

 拓斗はすぐに二人はひっぱりだして瓦礫が魔法が解けて落下して土ぼこりを上げる。

 拓斗はバッグから救急キッドを取り出そうとしてバッグを開けた。

 そして、間の抜けた顔になる。


「なに?」

「どうしたの?」


 拓斗は慌ててバッグの中に手を入れてまさぐって取り出した。

 それはただの棒きれの残骸と石ころ。


「ふざけてないでしっかりと探してちょうだい! 救急キッドは!?」

「ふざけてねぇ! なんも入ってねぇ! なんだよこれ!」


 その間にもただ、二人は苦しみ出す。

 英雄魔女である結衣でも先ほどの瓦礫を持ち上げる魔力だけでも相当な体力と魔力消費になってる状態だった。そもそも最初から魔力は枯渇状態にある結衣である。これ以上の魔法使用はできず治癒魔法をカップルに与えたくともできない。


「希が間違えて渡した? いや……なにかおかしい」


 拓斗はあらゆる考察をしてみた。

 その時、大きな揺れが再び起こる。

 カップルが悲鳴をあげてなにやら遠方を見ていた。

 拓斗と結衣もつられてみてみれば遠方、ちょうど国会議事堂や交通管制センターがある方角で光の柱が立ち上ってる。


「なんだよありゃぁ」

「光の柱?」


 その時に何かが拓斗の鼻孔を通り抜けた。脳を痺れさせるかのような匂い。強い花の匂いだった。

 なによりもその花の匂いをどこかで嗅いだ事があった。


(この匂いはたしか……)


 それは異空間次元管理監察局のフラワーガーデンに植えられていた虹の菊だ。


「いやぁああ! あっくん!」


 突然である。カップルの男が悶え苦しんで倒れた。それを見てカップルの女が悲痛の叫びで彼をゆする。


「なんだよ! 結衣! 魔法は?」

「無理よ……もう、げん……うぐっ」


 結衣も突然として頭の痛みを訴えるかのように額を抑えた。

 苦しみを訴えるように喉をかきむしる。


「おい! よせ!」

「喉が焼けるように熱い」

「なに?」


 拓斗にはなにもその異変はなかった。気づけばカップルの女まで同じ症状を起こした。

 慌ててカップルの男女の脈を計測した。

 脈が早まっていた。


「くそっ!」


 魔術では治癒の方法はなく拓斗はとにかく、3人に水を分け与えた。

 ――効果はない。

 奥歯をかみしめて一度3人を置いてシェルターに戻って仲間を呼ぼうとした。

 ふと、遠方から呻く声が聞こえた。


「んだよ……ありゃぁ」


 数十人規模の群れ。

 それが遠くからゆっくりと歩いてきていた。しかも、足取りはフラフラしていて肌は赤紫色に変色して白目をむいている。まるでゾンビ映画を目の当たりにしてるかのような光景だった。


「よりにもよって新たな災害とか言うんじゃないだろうな」


 前の光景を見てか、いやな予想がついた。3人の状態を見てみた。結衣はまだ肌に変色はなかったがカップルは呼吸がいつの間にか止まり肌の変色を起こしていた。

 しばらくして、白目をむいて起き上がり拓斗に飛びかかる。


「うわっ! くそやろう!」


 おもわずカップルの顔面をなぐって結衣を肩に担いで走る。


「結衣しっかりしろ! なるべく空気を吸うな! これはどうやら魔法による細菌テロだ!」

「うぐぁ……」

「くそ!」


 拓斗はシェルターの出入り口にまで戻ってきた。駅構内地下シェルターに入っていくと悪魔のような光景があった。

 希がガスマスクのようなものをしながら何か試験ビンのようなものを割り続けてる。

 その試験ビンが割れるたびに何かの粉末が放出されて例の花の匂いが強まってくる。

 地下シェルターの人々はそれにやられて次から次へと倒れて肌の変色した生き物、そうまるでゾンビのようなものに変わる。


「んだよこれ……どういうことだよ……」

「あれ? まだ生きてたのですね。あーあ、ばれた感じかなぁ」

「希ちゃん?」


 希は含み笑いを浮かべながら指を鳴らす。すると、希のそばで魔法陣の光が眩く。


(転移の魔法?)


 そこから現れたのは魔道生物だ。

 魔道生物は咆哮を上げながらゾンビの集団をなぎ倒しながらこちらに向かってきた。


「うそだろ!」


 拓斗は慌てて自分の体に転移の魔術式を描いた。

 身体は光、結衣とともにどこかへ転移する。


「はぁ、はぁ」


 途端に脱力と肺からこみあげてくるものを地にぶちまけた。

 地面に撒き散らされた自らの血を見て口元をぬぐい取る。


「くそぉ、無理があったか」


 本来、拓斗は魔法に効果がない体質でありそれに無理やり魔術と言う魔法の術を身体に植え付けさせたという横暴な行いをした。それが身体に弊害を起こし内部の組織を痛めつけた形となってしまった。



「……ここは?」


 慌てて転移の魔術式を行使したので座標を決めたわけではなくランダムな転移だったために自らどこにいるのかさえ曖昧だった。もしかすれば、国外に飛んだ可能性さえあったがその可能性は消えた。

 まわりには日本語表記の看板などがあった。つまりは国外では飛んではないことがうかがえた。

 さらに、今いる位置が近くにあった標識でだいたい把握できた。

 崩落した事件のあったリゾート施設からちょうど少し離れた地点の大通りのようだった。

 この場所に移動してよかったのは例のゾンビの群れは見当たらない。

 冷静さをだんだんと取り戻すと拓斗は結衣を肩からおろして希のことや例のゾンビのことを考えた。


「いったいどういうことだ? 希ちゃんはなんであんなことをしてた? それにこの細菌テロは? ディストピアの仕業なのか?」


 携帯を取り出してまずは局長に連絡を取って見るが案の定、回線自体が今は遮断されてるためにつながらなかった。

 ただしくは使えなかった。 


「結衣が大丈夫なら念話でって考えたが……くそっ!」


 さっきから悪態しかつけていない自分にさらにいらついて地面に転がった石を蹴った。

 その石が事故にあったらしい車にぶつかった。


「あの車は……」


 それは見覚えのある車だった。

 国土安全保障省の車だ。なぜ、ココにあるのか。


「まさかっ!」


 あまりにも運の良い考え方だったがそれに頼らざるえない。

 結衣をその場によ答えさせて拓斗は車の中を覗き込んだ。


「局長、サルア、ミルフィアにイリアも!」


 4人が額から流血して車に乗っていた。4人とも生きてはいるが意識を失っているようだった。

 車を開けて運転席の局長をゆすった。


「局長! しっかりしてください! 局長!」

「うぅ……拓斗?」

「ええ、そうです。最上拓斗です」


 局長は慌てるように拓斗の胸倉をつかんだ。


「今すぐに……希ちゃん……とめなさい」

「っ!」

「彼女は……がはっ!」

「局長!」


 彼女の言葉が確信的にその現実を認めさせた。


「やっぱりそういうことなのか……希ちゃん……君は……」


 その時だ。

 拍手するような音が何処からか聞こえた。


「アハハハハハ! 見事見事。実に見事だ。僕の予想の斜め上を行くねぇ英雄魔女の腰ぎんちゃく君」

「てめぇはイール!」


 瓦解したリゾート施設近場の大通りをゆっくりした足取りで白衣を着た男女が歩いてきた。その先頭にはイール・ハークライト・フォルフィッツ卿。魔道生物の研究者にして局の研究所長で、結衣の元婚約者でもあった男であった。


「災害の連続で死んでくれたらうれしかったんだがボスの言うとおり生きてたんだね。でも、ボスの言伝で邪魔ものの排除を言い渡されたんだ。だから、死んでくれ」


 研究員たちが一斉にカプセルのようなものを取り出し地面に叩きつけた。煙が立ち込めて中からは魔道生物が現れる。

 一斉に魔道生物たちが襲いかかり拓斗はその光景に絶望を抱いて――


「イールゥウウウううう!」


 慟哭するのだった。

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