大地震
人間の世界に起きてる騒動を傍観者のごとく、騒動を引き起こした張本人たちは地下から観察していた。
地下では第2次フェーズの計画を徐々に進行させていた。
地下に造られた大型の広い施設。【局】にあるフラワーズガーデンのように花々に囲まれ、その中心には大型の球体装置とそこからつながったパイプラインの数々。
球体装置の中には虹色の液体がぽこぽこと泡を吹きあげて沸騰していた。
噴きあがった泡は胞子を散布して球体装置のガラスに付着してどんどんと曇らせていく。
「進行度合いはどうだい?」
地下シェルタールームの管理者であるイール・ハークライト・フォルフィッツは部下の作業員に状況を聞く。
「着実と胞子は増幅中です。地震の方はいつ起動をするんですか?」
「くくっ、いいね。最高だ。ボスの合図で地震は引き起こすぞ。今頃奴らは慌ててることだろうね。局は潰れ、人間界では僕たちのせいで存在が露見した。それにより人間界側は局員を情報隠滅のために殺す腹積もりな行動に出る。局はもう逃げられない状況ができてる」
「しかし、ボスもあくどいことを考えますね。まさか、すべての逃げ道をふさぎつつ人間側さえも敵に回すような作戦を考え付くとは」
「まったく巧みな作戦と言えるよ。人間の考えをうまく扱ってる。さすがボスさ。そうす、ボロットスの頭から連絡来たかい? あのトサカくん」
「いえ、なにも。ただ、彼らはこの先の計画ではもう不要でしょう。連絡を取り合う必要はないかと」
「まぁ、確かにそうなんだけどボスの話だと彼らを消してくれって話でね」
球体装置の表面ガラスに触れながら不気味な笑みをこぼして端末を操作する。
端末の画面に映し出されるのはこれから計画している2段階目の大掛かりの地震を引き起こす災害の起動スイッチ。
これを押せば人間の世界は終わる。
「我らディストピアに栄光をあれ」
そうつぶやいた直後に電話が鳴った。
笑みを浮かべてイールは頷いてその起動スイッチに触れた。
*******
国土安全保障と他世界からやってきた結衣の婚約者たちから逃げてきた二人が辿り着いた場所は東京都内の渋谷だ。
懐かしい街並みに感嘆の吐息をこぼす。
それもそのはず、この町は二人の出会いの始まりの地でもあった。
逃げてきた場所がここと言うのも何か哀愁を感じてしまう
「あはは、なんでここに来てしまったんだろうな」
「そうね。ここも昔とはもう全然違うわね」
「そうだな。3年前とはだいぶ変わってる。それに人が全然いないな」
3年前までは人が多く徘徊していたこの若者の街も今では警察の巡回が多くなり、事件のことで外出を控えてしまってる人が多く人が少ない。ほぼいないも同然だった。
店もどこも諸事情によりしばらく閉店しますという張り紙が出されてるところが多かった。
やってる所などごくわずかで本来の街の活気がまるでなくなってしまい殺風景であった。
「早いとこ片づけないとまずいわね」
「そうは言うけど現状を理解してるのか? 俺らはディストピアに狙われ、挙句は婚約者共から人間の組織にまで狙われてる。こんな状態ではどうにもできない」
「でも、それはすべてディストピアのせいよ。彼らが仕掛けた策略がこの状態を作った。国土安全保障は異世界の存在の証拠が人間界に広まりこのパニック状態を消したいがためになかったという状況を無理やりこじつける作戦を考え私たちを存在していなかったことにする気なわけでしょ」
「つまりは証拠隠滅で殺しを決行したってわけだもんな。最悪な連中だよ」
「日本政府もそういう考えなのかしら?」
「だとおもうぞ。第一、彼らは日本政府とやり取りをしていたと言っていた。それならばそう考えてると思った方がいいだろう」
「だったら、なんであの時自衛隊は私たちを始末しなかったのかしら?」
あの時と言うのは国会議事堂前の戦闘のことを指してる。
結衣の質問には拓斗は思うようなところはあった。
彼らがどうしてこちらを抹殺行動をしなかったのか。
「たぶんそれはまだその段階ではないと判断していたからだ。あの時は魔道生物の処理に自分たちだけでは対処しきれない状況だと思っていたんだ。それに、こちらが持ってる情報を少しでもほしかったんだと思う」
「だから、国土安全保障は私たちをリゾート施設にまで連れて行って情報を聞きだしていたってわけ?」
「聞きだしていたというかお互いの情報を交換していたんだけどな。まぁ、あちらとしては俺らがディストピアと共倒れしてくれる方がうれしいと考えてるはずだぜ。リゾート施設でも射ち殺すというよりはあれはあきらかに捕縛しようという意図を感じれた」
「え」
拓斗はあの銃撃戦の中で確かに命の危機に陥ってたが妙な違和感を感じていた。国土安全保障の人間が幾度も戦争を経験して来た猛者のはずなのにこちらを一発で仕留め切れずにまごまごしたような形になった結果撃ち合い戦になった。
「だから、少なくとも局長たちの命はまだ大丈夫だと俺は思う」
「それは信じていいの?」
「ああ。すくなからずな。でも、国土安全保障がどちらにしろこちらを殺そうとしてる分安心はしていられない。いずれにしても仲間たちとは合流しないといけない。まずは連絡をする。そろそろ、あっちの状況もどうなった聞いておかないとな」
ビルの裏手に隠れながら携帯を取り出して通話履歴からイリアの番号にかけようとした時だった。大きな揺れが始まる。一瞬、自分の体に起きた立ちくらみのような異常かと思ったが違う。
それは地盤を揺るがすような大きなもの。周りの景色全体を揺れ動かし、次第にあちこちのビルの窓ガラスが割れ瓦解を始めた。
地割れが起き始めて悲鳴があちこちから上がった。
建物から出てくる多くの人や建物から上がる火の手から逃れるように建物の上の階から突き飛ばされるように堕ちる人までいた。
最悪の災害が引き起こった。




