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英雄魔女の旦那  作者: ryuu
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新たな敵勢力

 国土安全保障省の人物である、アンドリューの指示により拓斗たちは手配された黒のバンに乗って事件現場に移動していた。

 その事件現場は、東京の練馬区にある某リゾートプールだ。

 集団感電死事件があった場所であり、拓斗たちの調査の見解でそれは魔道生物によって引き起こされたことだとわかっている事件。犯人は『ディストピア』連中と指示をしたのはフォルフィッツ卿で間違いはないだろうこと。理由としては国会議事堂で言っていた『実験』ということにかかわるのであろう。

『実験』の意味も、おおよそ『ディストピア』の思想である自分らの理想郷を作る上に必要な下地を形成するための破壊工作。

 そのことを考えて説明し拓斗は事件のおさらいを自分らの見解に基づいた結果を交えてアンドリューにしていた。

 地図上において、その施設には人間界の力の源の集合地点の一つとなっていること。

「力の源」――それは古来より、神話にも伝わってきてる言葉で表現すれば「レイライン」と呼ばれるものになる。

 数多くの場所で起ってる事件も「レイライン」であり、『ディストピア』はそのレイラインを『ディストピア』らが作った『オーブ』通称、魔力製造機によって支配を行い、まず日本の首都たる東京から支配する腹積もりなこと。どうして、日本の首都東京を責めているのか。

 それはどの世界においても地球と言うのは力の環境に優れた地形であることでもあり、その中で一番特筆なのが日本であるからだ。


「日本は力の宝庫とも呼べる場所です。この場所を拠点として魔道生物の生み出しに世界征服のための武器の製造を始めれば世界は終焉を迎えるでしょう」


 特に彼らが日本の首都を狙ったのはどの国においても首都は中心地。そこから責めるのがセオリーだからなのと、国会議事堂があるからだ。


「国会議事堂には転送装置があります。俺たち局員が来るための重要な装置です。装置は一部が乗っ取られると自動停止することはしってますね? 彼らはそのことも狙いでしたのでしょう」


 そして、国会議事堂にある転送装置を乗っ取るための計画として行われたことが交通管制センターの爆破。

 これは『ディストピア』にとって要の計画だったと言える。ここを爆破して東京の交通の機能を停止し警察機関をパトロールに重点的に職務を動かさせて事件に当たるのをこんなにさせて『ディストピア』の計画に支障がない存在とさせる行為。

 そして、交通機関がマヒしたことで世間の人は不安に思い外出をしなくなって、家に引きこもればさらに魔道生物の導入で騒ぎを起こしやすくなるし大掛かりな仕掛けもできる。


「大掛かりな仕掛けの一つとしてマスコミにまぎれることです。国会議事堂に爆破の作戦としてマスコミに扮して内部に潜入していたに違いありません。外部は民間人が少なく出回るのはマスコミ関係者くらいでしょうし服装をマスコミ関係者にしていれば誰も疑いはしません。何よりも警備が手薄な状態であればなおさら」


 さらに補足説明をする。

 交通管制センターにおいての事件の裏。

 爆破したのにタワー自体は倒壊せずに残ったのはまだ軽い爆破程度で官制センターの機能だけを奪う要因にした意味。

 それは来る局員と日本の防衛大臣を抹殺することにあった。その場所をわざと餌にして罠として利用したのだ。局員が調査をしに来た際に内部にスパイを配置し局員がだいたいの調査を行うように仕向ける。

 その間に『ディストピア』は国会議事堂に爆破物を仕掛ける手はずを整えておくのだ。


「案の定、俺らは罠にはまりました。爆破により被害をこうむり死にかけました。結果としてわずかに動ける警察が出動し国会議事堂の警備はさらに手薄な状態へ。防衛大臣が死んだことで日本の防衛網は穴だらけでしょう。そして、国会議事堂も爆破された上に転送装置まで壊され機能を失っています」


 国会議事堂の爆破の意図、装置爆破と政治家の抹殺、レイラインの中枢形成であることを伝える。

 そして、マスコミや報道関係者を呼び寄せて世界に『魔道生物』という化け物を報道させ『異世界』の存在を示唆させる所業を行うことにあった。


「しかし、不思議なのが報道の速さです。俺の部下、イリアの話では局が総出でマスコミのカメラをすべて破壊して報道をやめさせています。それに彼らも報道活動を行うよりも逃亡に徹していたようでした」


 ならば、なぜ、『魔道生物』と局員の戦闘映像が流出されたのか。

 それは内部によるスパイを疑うほかない。


「そうか。私の方でも情報を一つ。日本の自衛隊が出動したのは何もキミタチが促したことで出動してくれたわけではないのだ。それ以前に自衛隊には謎の伝達文通が届いてた」

「なんですって!?」


 アンドリューは膝もとに置いたノートpcの画面を見せてきた。

 そこには伝達文通のコピー画像があった。


『7月の某日、国会議事堂を爆破する』


 そう書かれていた。日付は不明な上に時間も書かれてはいないのでいたずらと思える様な手紙だった。


「日本政府もこの手紙はいたずらだと思い破棄したようだった。だが、交通管制センター倒壊によって防衛大臣が死亡したことで政府は自衛隊を国会に出動させたが到着するのが遅れ死亡したわけだ」


「なぜ、あんな場所で会合を開くような真似をするんだよ……。いや、そもそもなぜ政治家が全員出席をすることに? 防衛大臣が死亡したことであそこまではならないのが今までの日本政府でしたよね」

「それも調査のうえで分かったことだが、脅迫文章が書く政治家に届いていた。身内を人質に取られたものだ。数日よりも前からだ。防衛大臣の死亡は多くの政治家が知っていたことだった。だが、死亡するとはだれもが思っておらず死亡したことで脅迫文章が本物であるとわかったらしいな」


 結衣が右手を挙げて脅迫文章の提示を促した。日本の総理大臣の脅迫文章だった。


『身内の死が見たくなければ某日、防衛大臣の死亡後に国会議事堂にて緊急招集会議を開け。全員集めねば妻や娘もろとも殺す』


 また、某日だ。これではいつ殺されるのかすら分からないが予定としては知っていたのだろうけどいたずらと考えられても仕方ないのだろうけど、2度も来たのだから疑うくらいしてもよいだろうに。


「この文通が来た時には警察も政府も各地で起っていた不可解な事件に取り掛かりっぱなしであった。それによりそのような文通に惑わされてる場合ではないということだったようだ」

「なるほどな……」

「さて、ここだな」


 アンドリューがスモーク窓で見えないはずの車の窓を見てそう言う。

 車は数分ほど走っていたようだったがようやく目的地に着いたようだった。

 さっそく、全員が降り、事件のあった某リゾート施設を見上げた。人がいればそれは賑やかなりーぞーとなんだろう施設だが今はガランとして殺風景だった。


「人っ子一人来ていない上に立ち入り禁止線のテープか」

「まだ、毒素の検査を行ってる途中らしい。集団感電死は今までの例にない特殊な事件だったからな。何が原因で引き起こったのかすらわからないし特殊な細菌か毒でも含まれてたのではと言うことで調査がされている。だが、今では無意味だと理解している」

「だろうな。なんせ、毒でも最近でもなく動物が引き起こしたというか人が起こしたんだから」


 黄色のテープを超えて入ると無残な人の焦げ跡が辺りに散らばっていた。

 さっそく、端末にメモをしていく。イリアは歩き回って焦げあとを写真に収めていく作業を行っていた。


「イリア何かわかったか?」

「さぁー? ただッスねまた例の花があったッスね」

「なに?」


 拓斗はイリアのもとへ歩み寄りその手元を見てみる。確かに例の花が落ちていた。


「この花一度調査したほうがいいな。だけど、研究部門はもう局にはないんだよな。どうするか」

「そればらば、国土安全保障の研究チームが調査を引き受けましょう」

「ん? だけど、これは異界の花だ。大丈夫か?」

「ええ。これでも国土安全保障は他世界にも接触経験がありますので多少なりとも知識はあります」

「なるほど……」


 試験管ビンに入れた花をアンドリューに渡してアンドリューは自分の部下に渡した。

 そのまま歩いてアンドリューは思い出したように口火を切りだした。


「今回この事件を起こした犯人の狙いはあなた方の破滅ですか? それとも世界を支配することですか?」

「どちらもだ。第一、俺ら、局を破滅するなら最初から局を狙えばいいはずだ。ここまで大掛かりにやったのは両方だとわかるだろう。さっきも破壊だと言ったはずだと思うけどな」

「言ったのはあくまで東京を支配しようとしてることだけですよ」

「そうだったな。だけど、もう東京は支配下に置かれてるも同然だ。今奴らは神奈川に移動してるかもしれないがな。それで、アンドリューさんがココに連れてきたのはその手立てを探すためだろう?」

「ええ。事件現場に見落としがある可能性もあります。それと――」


 カチャリどこから拳銃の引き金に指をかける音が聞こえた。それは後ろからも前からもそして、遠方からも。


「ここに来るまでに俺らは誘導していた上に情報を聞きだしたか。まぁ、わかってたことだが弁明を言うと俺らはまったく今回のテロには関係ないぞ。第一、わかってるのか? この場で局員を射殺したとこりで『異世界』の情報漏えいは防げない。第一、『ディストピア』をどうする?」

「上はまず『異世界』の情報が漏えいしたことを危惧しました。ですので、その発端から潰すことにしています。『ディストピア』など後でどうにでも出来ますしね」

「ハハッ、ふざけた世界だな。まったく」


 ゆっくりとその手を掲げあげて拓斗は背後を振り返った。

 銃声が鳴り響くと同時に拓斗の周囲に広範囲の透明な壁が形成された。

 他の全員も同様だった。


「結界というやつですね。ですが、魔術に対しての手段はあるのですよ!」


 その時、結界にひびが入る。

 クモの巣状にひびが広がり結界が砕けた。

 結衣たち武装部隊は自力で銃弾から逃れる手段を用いて魔法を行使したが、希にイリアい拓斗は魔法を扱えない。

 銃弾の雨にさらされる。防弾制服が身を守る。希は結衣がとっさの判断でかばいに行けたが拓斗たちは自力でせねばならない状況。

 拓斗とイリアは頭をブレザーで覆い隠し身を守る。

 わずかに手を銃弾が掠める。結衣たちがまわりを殲滅するのを待つだけでは意味がない。


「イリア、俺が壁になる。お前は結衣たちのサポートを頼む」

「なッ! 正気ッスか!?」 

「正気だよ。今はそれしかない」


 刻一刻と制服の効果も意味をなさなくなり始めた時だった。誰かが「なんだあれ!」と叫び声をあげた。途端に駆動音が耳に聞こえて爆音が響いた。


『ぐぁああああああああああああああ!』


 リゾートプール施設のウォータースライダー内に隠れていた人を巻き込み破壊しながら円筒形の宇宙船のようなものが突っ込んできた。

 それは拓斗たちの眼前で停止した。


「こ、これは……」

「緊急用次元用船……」


 イリアの言う通りそれは局にある次元を行き回、いろんな世界を横断するための船。

 なぜ、そんなものが突然空から降ってやって来たのかわけがわからずに唖然とした。船のコクピットハッチが開き、国安全保障の者たちが一斉に銃口を向けた。


「あたたたっ、さすがに久しぶりな操縦は無理があったかしら」

「きょ、局長!?」

「イリナス局長!?」


 拓斗と結衣の声が重なり、船の操縦席から顔を出した局長は朗らかに笑いながら「あいかわらずなかよしですね。いきもぴったりかしらね」などと言う。


「な、なんで緊急用の船なんかに」

「いったい何があったんですか!?」


 その質問の答えはすぐにわかった。

 局長も後ろを振り返り顔面蒼白だ。


「拓斗特別事務担当官長、結衣武装部隊長は今すぐ逃げなさい! 彼らが来るわ!」

「は?」

「か、彼らって?」


 リゾート施設の空の空間が歪み黒い輪が生まれた。そこから、円筒形のフォルムをしたきらびやかな船がいくつも出てくる。


「いいから逃げなさい! 彼らは英雄魔女、結衣武装隊長の婚約者候補たち!」

「は? はぁ!?」


 拓斗は思わず結衣を振り返る。結衣もぶるぶると知らないとばかりに首を振った。


「例の情報が漏えいしたことで英雄魔女の旦那を偽装したあなたを狙って英雄魔女の婚約者候補が怒りで暴動を始めたのです!」


 まさかの衝撃的事実だった。

 この事態に引き起こっていいようなものではない。しかも、よりにもよって日本に局長は連れてきてしまったのかよ。


「くっそっ! 結衣逃げるぞ!」

「そ、そうはさせません。あなた方の抹消を行い異世界情報の漏えいはすべて消し去るのです」


 そう言ったアンドリューの背中に一隻の船の光線が放たれた。

 その船から怒りの声が飛ぶ。


『てめぇが英雄魔女の旦那を気取った野郎だな! 射ち殺せぇええ!』


 一気にリゾート施設は戦場の嵐となった。アンドリューは必死で逃げ伸びてこっちを睨んでいる。拓斗は光線の雨の間をかいくぐり結衣の手を引いてその場から逃げ出した。

 武装部隊とイリアや希のことも気がかりだったがまずは逃げることを専念に考えるのだった。

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