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英雄魔女の旦那  作者: ryuu
16/28

報道騒動 

 日が落ち沈み、明るい青空が朱色に変わり始めるころ。

 内部の転送装置場所の無残な状態の確認および記録を終え、外の部隊の援護に慌てて向かった。

 しかし、拓斗たちが慌てる必要もなく外では戦闘は終わり、戦後の後処理に明け暮れていた。


「あ、拓斗さんたちっす!」

「もう、遅いって感じですよぉ~。ウチらだけで片づけちゃいましたですよぉー」

「ミルフィアさん! 拓斗さんたちも頑張って内部の鎮圧にあたってたんだよ。そういうこと言うのはダメだよぉ」

「などと健気にラブな拓斗さんを擁護するミリアちゃんはかわいいなのです」

「りっ、凛ちゃん!」


 いつもの和やかな雰囲気を感じながら拓斗は内心ほっとしながら4人のもとに合流する。


「あれ? 希ちゃんとイリアはどうした?」

「あー、あの二人ならあそこで日本政府の人と話をしてるっすよ」


 サルアが指さした後ろの方で黒のバンのそばで黒い制服を着こんだいかにもお堅い役職についてそうな40歳過ぎの男性と険しい顔で口論してる二人の姿を見つけた。

 結衣と目配せ合いながら二人のそばに結衣と伴い近づいていく。


「あの、ウチの部下2名が何かそちらにお手間を取らせたでしょうか?」

「ん? 誰だね君は?」

「そちらこそ、名乗っていただきたい」


 拓斗の視線に臆せず政府の役職の男性も睨みかえしてきた。

 すると、懐から名刺を取り出し拓斗は丁寧にその名刺を受取る。

 国土安全保障司法省なる文字。

 アンドリュー・鈴木・ウェインと名称は書かれていた。


「なんで、国土安全保障の者がここ日本に来てる? あんたらの居場所はアメリカ政府だろう」

「なんでとは不思議なことをいいますね。私どもは日本政府の機能停止に伴いわざわざ海を越えて日本を助けに来てあげたのですよ。そして、今回の不祥事の責任問題に大きくかかわるこの二人を尋問していたんです」

「こんな場所でか?」

「ええ、急を要しますし今すぐ次の現場に向かわねばなりません。ですが、頑固として同行をしないのでね」


 そういってアンドリューの視線が希とイリアに向けられた。二人は助けを懇願するまなざしで拓斗に向けていた。


「して、あなた方はどちらで?」

「あんたが尋問すべき二人だよ。その二人の上司とでもいおうか」

「なるほど、つまりは局の人でしたか」

「わかっただろう。二人を解放してやってくれ」

「わかりました」


 そういったところで拓斗と目線を交わし二人はそそくさとその場から離れていく。

 アンドリューの視線はそこでこちらに向き煙草を取り出して口にくわえ「さて」と話を切り出す。


「今回の問題を局はどういう対応をしているのか甚だ疑問ですね。まさか、日本国内にあなた方の存在を広げる要因になりかねる事態が勃発しているんですよ」

「知ってる。だからこそ、こっちも今早急に対応をしている」

「早急に対応? 手遅れじゃないですかね。例の怪物は全国ネットで放送され、日本の東京で起きていた不可解な変死事件の犯人がその怪物の仕業であったとされています。今じゃ日本国民はヒステリックを起こして反発デモが起きてもおかしくない。それに日本でテロを起こしてる犯人はあなた方に起因しているうえに彼らは世界を牛耳るという噂まである」


 どうやら、彼ら国土安全保障はだいたいの事情を把握したうえで今回の行動を起こし日本の助けはただの建前で自国を守るために早急な対策を打って出るためにこちらに追及問題を押し付けに来たらしかった。

 それ以上に彼の説明で驚かされたことは魔道生物が全国ネットによって報道されてしまったことだ。

 つまりはこれは彼の言うように局の存在が公に明かされかねない事態を呼ぶ。

 日本政府も機能していない今隠ぺい工作は難しいだろう。


「あんたの言うとおり事態はもう手遅れかもしれないが犯人には一人心当たりがある。早急にそいつを捕縛すると言う作戦を今考えてる」

「それはいつですか?」

「それはここでは話せない。さっき、あんたはどこか連れてこうとしていたな。そこで、話をしないか?」

「ふむ、いいでしょう。では、こちらにお乗りください」

「あーっと、待ってくれるか。同僚も全員一緒だ。もし、非常事態に遭遇した場合俺だけでは対応が難しい」


 そう説明しながら拓斗は遠くで自衛隊と協力のもと戦後処理を行う6人に視線を向けた。

 アンドリューが険しい顔つきになった。


「そう怖い顔をしないでくれ。彼女たちはただの部下ってわけではない。ある意味では俺のボディーガードでもある」

「それは私たちもお疑いで?」

「そうだな、あんたみたいな腹に何かを隠してそうな奴は信用できないんでな」

「ふふっ、いいでしょう。もし、非常事態が起っても対処できるのは今この日本にはあなた方だけでしょうしここは了承しましょう。では、もう一台車を手配しますので少々お待ちを」


 アンドリューとの交渉が終わってから後ろの結衣に振り返る。


「結衣、どうだ? 局と連絡は?」

「さっきから連絡をしてるけどだめ。早く転送装置の件を伝えたいのだけどね」

「そうか。でも、なんかいやな予感しかしないな」


 転送装置は他国にも存在するが転送装置とはすべて連結した状態にあるのだ。

 転送装置が一つ壊されれば自動的に他の転送装置も機能を停止させると言う自己防衛システムが組み込まれてある。

 テロ対策のためにそうされてあり他国の転送装置も今は使用ができない。

 どちらにしても今帰る手段はないのだ。だからこそ、その事態は早急に局長に連絡して対策を聞かねばならないが連絡がつかなかった。


「もう、一体どうすればいいのよ!」

「落ち着けって。今テロの対策にあたれるのは俺らだけだ。早急にまずは目先のことから対処していこう。連絡はとりあえず後回しだ。宿は例のあの男アンドリューに相談して手配してもらえばいいさ」

「そんなことできるの?」

「できるだろう。あいつも俺らがいなきゃ困るわけだしな」

「そう……」


 気分が沈む結衣の顔を見て悲痛な気持ちになり拓斗は彼女の身体を抱きしめた。


「不安になるなよ。結衣は強いんだろう。それに俺がしっかり補佐する」

「ありがとう」


 安堵したような息遣いを感じ取る。


「た、たくとさーん!」


 突然、何処からともなく慌てたようにサルアが叫び声をあげながら慌ててこちらに走って来た。

 そのあとを他の5人もついてきて拓斗は眼を瞬く。


「おい、どうした?」

「これ、見てください!」

「あん?」


 サルアが局専用端末の画面を見せてくる。その画面には局内ネットワーク専用の情報番組が映っていた。

 局内でもこうした専用の情報共有エンターテイメントや番組は存在する。

 今、サルアが見せてきてるのはその情報番組の中でも特に局の誰もが目にするものである。

 そこで、報じられていた文面に拓斗と結衣はおもわず口元を押さえ、拓斗に至っては自分の失言が招いた事態に後悔を伴い慟哭する。


『本日未明、匿名からの情報により『英雄魔女』の異名で知られる最上結衣と局内で『武装部隊、特別事務担当官長』である最上拓斗が偽造の夫婦であったことが判明し――』


 6人の疑心の眼差しが突き刺さり結衣も言葉を模索した。

 拓斗が叫び続けているので自分が何かを言うしかなかった。

 言いかけた時には遅く端末から連絡が入った。


『やっと、電話できた。結衣武装部隊長! あなたの偽造の婚姻がバレたんだけどどうなってるのか説明してくださるかしら! 先ほど放映された番組の情報はどういった状況でそうなってるの! こっちでは私に問い詰めが殺到状態』


 結衣の端末にかかって来たのは局長からの連絡だった。

 事態の状況説明を求めた早急な連絡。

 確かに局長から連絡は来てほしかったがこの手の話題でまさかかかってくるとは思いもしなかった。

 結衣の両親は現在他界しているために局長が結衣の実質的保護責任者となってるので婚姻などの件は彼女を介して結ばれることや直接結衣に来ることがしばしばあった。

 だが、今回の事態に応じて結衣が日本に取り残された件を知ってるからか、局長に婚姻偽造の件が殺到してるのだろう。


「きょ、局長すみません。私の不注意で情報が漏れてしまいました」

『ふ、不注意って何! こっちはあなたたちを帰還させるための対策やテロの支援策を講じようともできない! 婚姻偽造のことで問い詰め状態。私の立場が危うくなってる』


 一つの犯罪に加担をすればおのずとそうなることだろう。

 しかし、これも結衣自身が招いたことでありただ申し訳ないという気持ちだらけだ。


「婚姻の件はこちらでどうにかします。局長は直接後で私本人から事態の説明を報道すると伝えてください」

『あなたそんなことしたらどうなるか――』

「わかってます。のちのちにバッシングを受けた後に何かしらの罪に問われて最悪奴隷にされることだってあるでしょう。ですが、覚悟の上です」

『ちょっと、考え――』


 結衣はそのまま端末の通信を切って頭を抱える。

 そのまま、急いで先ほどフォルフィッツ卿のボディーガードマンと戦った現場に急いだ。

 キラリと煌めく小型の金属機械。盗聴器だろう物体が落ちていた。


「結衣」


 後から追いかけて突いてきた拓斗が深く頭を下げた。


「すまない。チョーしに乗って俺があんなことを口走ったから」

「いいえ、私も不注意が――」

「いや、全面的に俺が悪い。報道は俺が受ける。俺が結衣を無理やり偽造婚姻させたことにすればいい。罪はすべて俺がかぶれる」

「何を言ってるの!」


 拓斗の胸倉をつかみあげ結衣は拓斗の身体を揺さぶった。

 拓斗は目線を反らしたままに乾ききった嘲笑をした。


「だって、あの時に俺があんなことを言わなければよかったんだよ」


 6人組の足音が聞こえ、結衣と拓斗は後ろを振り返ると6人とも気付いたようにきまづい表情を見せていた。

 どう声をかけ、自分らはどうすればいいのかと迷っている。


「わるいな、6人とも。報道の通り俺と結衣は結婚していない」

「えっと、マジなんスか?」

「なんでそんなことしたんですかぁ~?」

「な、何か理由があったんですよねぇ」

「気になるなのです」


 イリアと希も後に続けて食いつくような瞳を向けた。

 拓斗は結衣の代わりに先に説明をしようとした。

 そう、自分が無理やりに彼女を好きで過去の因果で報酬として婚姻させるような真似をしたと。

 だけれど――


「私がお願いしたわ。拓斗にね婚約者のしつこい懇願にうんざりで「私と夫婦になってほしい」っってね。拓斗は快く了承したわ」

「な、何を言ってるんだよ結衣! それは違うぞみんな。俺が昔結衣を助けた報酬と称して結婚を願い出たんだ。だけど、彼女が拒んだから偽造でもいいからと――」

「違うでしょ拓斗! あのときあなたは『恋人になってほしい』といった。婚姻を勝手にしたのは私」

「いや――」

「二人とも黙ってください!」


 拓斗と結衣の二人の喧嘩を押し黙らせたのはいつも冷静で怒ることなどない希だった。


「二人がどういうことであれ私の大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんにかわりはありません。二人が結婚してようがなかろうが今は関係ないですよ。今回の件は私が情報かかりとしてどうにかします。今二人はこの日本の東京から引き起こり始めてるテロをどうにかしてください!」

「希……」

「希ちゃん……」

「わかりましたか!」

「「はい!!」」


 希の剣幕に圧倒された二人はおずおずと従った。希はさっそく端末を取り出して局長と険しい顔で話をしていた。


「いやーすごいっすノゾミさん。なんせ、自衛隊や日本政府に緊急の事態を連絡したのは彼女ですもん」


 そっとイリアが拓斗隣にきてそう伝えてくれる。


「自衛隊が早急に来れて魔道生物を倒せたのもイリアさんの早期伝達のたまものっす」

「そうなのか」

「ええ」


 確かに妙なことだった。自衛隊がいくら強力なテロ対策部隊であっても異世界の生物を相手に早期解決できるほどの力はない。なによりも、周辺の住民もいつの間にやらいないし、聞く話によると報道陣やマスコミなどの一般市民の被害は最小限に抑えられていると聞いている。

 それには早期な準備が必要だったはずだ。

 その要因が彼女なのだろう。彼女があらかじめ事態をまるで理解していたように速めに手立てを打っていたのだろう。


「おかげで助かったわけか」

「感謝っす」

「だな」


 車の駆動音がほどなくして聞こえ始める。全員してそちらに目を向ければ数台の黒のバンが数台国会議事堂の門前に止まりアンドリューが歩いてこっちを手招きしていた。


「みんな、これから少し移動がある。付き合ってくれるか。こんな嘘まみれの俺を」

「そんなこというの禁止っすよ」

「ウチらはいつだって拓斗さんと隊長を信じてますからぁ~」

「わ、わたしもですぅ」

「必死で食いつくミリアちゃんかわいい」

「り、凛ちゃん!」


 いつものような4人の態度におもわず結衣と拓斗は涙ぐんだ。

 そうして、最後に――


「拓斗特別事務担当官長、私もいくらなんでも婚姻偽造程度で信頼を無くすとかないっす。どこまでもついてくっす。結衣武装部隊長にも同じっす」

「イリア、ありがとう」

「感謝してるわ」


 最後に希が電話を終えたらしく一息ついて言った。


「お姉ちゃん、お兄ちゃん。婚約者共には今流れてる情報に関しての記者会見をテロ事件後に先延ばしした。さすがに、そこまでしかできなかった。ごめんなさい」

「いや、何を言うのよ希」

「ああ、十分だ。ありがとう。これで局長も大分動いてくれるはずだ」


 そう思えばさっそく局長から連絡が来て日本の自衛隊の指揮官と話をしてるという連絡が入った。


「自衛隊の指揮って誰だ?」

「あとで会う必要があるわね」

「だな。まずは国土安全保障さまからって感じだが」

「おい、急いでくれるか。事態は一刻を争うんだ」


 アンドリューから急かされて拓斗たちは急いで黒のバンに乗り込んだ。

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