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英雄魔女の旦那  作者: ryuu
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内部スパイと国会議事堂爆破 後編

 真っ先に飛びだしたのはイールのボディーガードマンの青年。

 長身痩躯の赤髪のイケメン猫耳男。

 人間界のそれも国会議事堂の前で報道陣が近くに集まってると言うのにもかかわらずその姿を人間ではない、猫又ねこまたびとである正体の特徴的猫耳を隠そうともせずに攻撃を仕掛ける。

 鋭い俊足の蹴りがこめかみを狙う。拓斗は日々の訓練においての動体視力で見切り、その足を捕える。


「っ!」

「ボディガードにしたらちっと鍛え方が足りないぞ!」


 捕縛した足を離さずに拓斗はイールのボディーガードマンの顎先に向け拳を振り上げる。

 しかし、拳が少しかすめた程度で終わってしまう。

 彼が身を反らした上に軟体動物のようなしなやかな動きで体重を支える軸足を蹴りの攻撃に使い拓斗の注意をそちらの足にそらした。

 拓斗も思わぬ奇襲に拳の軌道がずれたのも大きな要因だった。

 拓斗の頬をわずかに斬れて血がほとばしった。


「くそっ!」


 彼は軽やかに身体を躍らせて元の戦闘態勢の構えをとった。まるで、武術のそう、カンフーの構え。

 拓斗は頬の傷から流れる血をぬぐい、腰から銃を取り出す。

 そのまま流れる様に視線を後ろに向けて気付く。

 研究部の奴らがいない。


「くそっ、逃した」

「イール様の邪魔はさせませんよ」

「イール様ねぇ……あんなクズによく従うなぁ。あんたって男も」

「ッ! イール様の侮辱は許しません」


 イールのボディーガードマンは地を蹴って踏み込み、掌底打ちを放つ。

 狙いは顎先。

 目で捕えていたその攻撃はわずかに首を傾けさせて回避を成功させる。カウンターぎみに拓斗は大腿部に銃弾を二発撃ちこんだ。


「あがぁ!」

「悪いな。丸腰相手の男に武器を使うとか反則な真似して」


 うずくまった彼の眉間に銃口を押し付け問いただす。


「ここで何をする気だ? ただ日本の政治家どもを一掃したかったとかだけが理由じゃないだろう? 転送装置の乗っ取りか? 俺たち局の奴らを足止めすることか?」

「……」


 一切口を割らない彼の無傷の右足を撃ち抜く。激痛にうめき声をあげて立てない状態になる彼を睥睨して見下ろす。


「さぁ答えろ!」


 一刻の猶予もない。


「答えるものですか。私はイール様にこの命を救ってもらった恩義があるのです。貧乏で親を亡くした私が路上でごみあさりを行ってる時にあの方は優しく私に手を差し伸べてくれて助けてくれた。私はそれ以降あの方につき従えた。そして、あの方の野望に私はただ協力するのみ」

「野望? それはなんだ」

「ふふっ、今にわかりますよ」


 その時だった。どこからか悲鳴と絶叫が聞こえ、爆発音と銃声窓鳴り響き始めた。

 いったい何事かと視線をそちらに送った隙にボディーガードマンは拓斗から銃を奪い取ってこちらに銃口を向けた。


「っ!」

「形勢逆転ですね。さぁ、死んでください。イール様のためにも」

「それはさせないわよ!」


 聞き覚えのある女の声が上空から聞こえた。

 声に続けて火炎の球が飛来しボディーガードマンを吹き飛ばす。


「ぐあがぁあああ!」


 燃え盛る火に包まれボディーガードマンがのたうち回る。

 あまりにも哀れな姿。


「拓斗大丈夫!」

「ゆ、結衣!? おまえ、怪我は?」


 飛翔魔法によって空からやって来たのは結衣だった。

 先刻の交通管制センターの爆撃にあい重傷を負っていたはずの結衣は体中の痛々しい包帯が例の武装部隊用の漆黒の防弾防刃繊維の制服の裾からのぞき見える状態で地上に降り立つ。


「平気よ。大分眠っていたけどさっきどうにか目を覚ましたのよ。それよりもこれはどうなってるの? 外では大変な事態よ。魔道生物が報道陣とマスコミや警察に襲いかかって大騒ぎなんだから」

「なにっ!?」

「今、武装部隊が警察と自衛隊の協力のもとで鎮圧にあたってるけど時間はかかるわ」

「そ、そうか」


 自衛隊もこの事態を見てやはり動きだしたらしい。

 耳を澄ますと空にはヘリコプターの音が確かに聞こえた。


「つか、その中で飛翔魔法を使って誰かに見られなかったのかよッ!?」

「私を誰だと? 英雄魔女の最上結衣よ。視認阻害の魔法を重ねがけしてるから問題なしよ」

「そうか」


 じゃりと砂を削るような音が聞こえ二人して目の前に向き直った。

 ボディーガードマンの男が炎にくるまれながらも悠然とした笑みを浮かべて銃を手に握って震えながら向けていた。


「やっとだ。イール様の魔道実験計画が始まっているんだ! これでイール様の作った魔道生物はこの人間の世界に恐怖として伝播して広まる。今頃はイール様はもう一つの実験のために転送装置の根幹を手にしてるはずです、ぐふふ!」

「なに? どういういみだよそれは?」


 死に瀕して狂ったかのようにイールの狙いを語る彼に問いを返すも答える代わりに飛ばす銃弾。

 二人の足もとで散ったためにこちらは動くこともせずただ沈黙をした。


「黙ってください! あなたたちはここで私の手で粛清するのです! イール様あなたのために私は死ねて幸せです」

「とんだやろうね、フォルフィッツ卿もそうだけどこいつもそうね。フォルフィッツ卿とは結婚しなくて正解だったかしらね」

「あはは。俺とも結婚はまだしてないだろう」

「今その話をしないでいいでしょ」

「そうだな」


 ニヤケながらも注意をしながら後ろに下がる。


「あいつの相手は任せるぞ」

「ええ。サポートお願いできる」

「りょうかい」


 そういうとさっそく拓斗はポケットから取り出したのは一つのチョーク。

 床に文字を描き出す。

 それは幾何学な文様であり、人間が用いる言語ではない。

 そう、それは他世界の言語。


「くひひっ、いい情報得ました。あなた方まさか婚姻をしていないとは。つまり、夫婦ではなかったということですか?」

「今から死ぬあなたにはそんな情報知られたとこでどうってことないわ」

「さぁ、どうでしょうか」


 結衣は飛びだしざま手の平に集中するように竜巻が生み出されていく。ボディガードマンが銃を撃ち放つも後ろから拓斗が指示を飛ばした。


「結衣、弾丸はこちらで防ぐ! そのまま左斜めに向け風の砲撃!」


 武装部隊、『特別事務担当』という役職は武装部隊の補佐がメインの役職となる。

 それは調査においてもその記録および武装部隊と一緒になって調査することはもちろんである。

 では、戦闘においては拓斗たちのような役職はどういう役柄か。

 ――相手の動きを観察しもう一つの目となって指示を飛ばすことと的確な魔術サポートを行う。

 今放たれた銃弾は、拓斗が足場に描いた幾何学な文様から発生した霧状の弾幕が触手のように上昇していき結衣の周りを蛇のように回って弾丸を受け止めた。

 結衣は指示を飛ばされたとおりに左斜めからの右手に込めた風の砲弾を打ち込む。

 通常だったら敵は回避なり防衛なりすることがあるがここで武装部隊の『特別事務担当係』の役割がかかわる。


「くっ、動けません」


 霧が弾丸を受け止めたと同時に散って、今度はボディーガードマンの身体を霧が痺れさせて麻痺させたのだ。

 砲弾は横っぱらを撃ち抜き派手に宙へ浮き上がる。

 止めに結衣の腕から放つ灼熱の放射の魔法が彼を焼き焦がした。

 焼け死んだ死体を拓斗が速やかに霧によって飲み込ませ異次元の空間に飛ばす。

 跡形もなくそこには何もなかったかのようになる。

 特別事務と言うのは戦闘面においても事務の面においても優れた優秀な局員。

 特別というのは魔力をもたぬ人が魔術と言う技を用いて戦地に赴く武装部隊を支援する係であるからという理由からつけられる呼称だ。

 普通の事務担当とは違う所はここに存在した。

 死体処理なども特別事務の役目なのだ。


「結衣、この場所はもう大丈夫だろう。転送装置に急ごう。もし、イールのガードマンが行ってたことが本当なら転送装置が使えなくなるどころか俺らは局に戻れない一生」

「そうね。行きましょう」


 慌てる様に二人で転送装置のある国会議事堂地下に向かった。

 だが、時すでに遅かった。

 突然として巻き起こる大きな地震。

 全員が悲鳴をあげて今度は何事かと周囲を見渡す。

 国会議事堂の裏庭で天突くように伸びる光の線が見えた。

 次第に光は細く縮みこむ。


「結衣、今のは!」

「おそかった。転送装置が機能を停止したのよ」


 辛辣な一言を告げた。

 あとで転送装置の場所に向かえば、装置管理関係者の無残な死体と機能を停止した装置がそこにあるだけであった。


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