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星奈・それでも星は輝き続ける

ラストエピローグはオール会話文です

(星、綺麗だね、スター)

『確かに綺麗だが、屋根の上は危なくないか?』

(平気だよ。いざとなったら変身すればいいし)

『そんな考えをしては駄目だ。今すぐ降りろ』

(そう言わないで。今は、ちょっと)

『なんだ?』

(もう中学生になってさ、晶乃とお兄ちゃんが恋人になって、私もちょっと、なんていうか、のすたるじーな気持ちになっているんだよ)

『ノスタルジーは郷愁、昔を懐かしむ気持ちだ。分かっているか?』

(……うん、あってる)

『何を懐かしんでいる?』

(昔)

『……だろうな。はぁ』

(馬鹿にしないでよ! 分かっているよ、昔を思い出してさ、色々思ったの)

『何をだ?』

(スターのこと。いつも私のことを思ってくれて、助けてくれて)

『目の前にか弱い少女がいれば助けるのが、私の騎士道だ。当然のことだ』

(おー、格好いいね)

『よく言われる。これでも騎士でありながら科学にも通じた天才と称されたのだからな』

(凄いよね、スターは。それに引き換え私は……)

『君は凄い。自分の守りたいものを守ってきた』

(……でも、最近は悲しいことが多いのに、それをどうにもできていない)

『君は君の守りたいものを守れるが、君自身を守るのが下手だからな。』

(それってどうしたらいいの?)

『さあな。いろんな方法がある。今は、君が他の人を守り、他の人、千佳や晶乃が君を守っている。今のままでも立派な答えの一つだよ』

(でも、それでいいのかな?)

『他人を頼ることは当然のことだ。一人で生きる人間など、そうはいない』

(よく言うもんね。人は一人じゃ生きていけないって)

『私はそうまでは思わないがな』

(えー? 否定するの?)

『人は本当に強い生き物だ。一人で生きていける人もいる。私はそう思う』

(でも、思い返してみると、みんなみんな一人じゃ大変だったよ。千佳ちゃんも晶乃もお兄ちゃんも啓吾さんも、みんなさ……)

『ハーミットの老人や玲子は一人でも生きる強さがあったと思う。まあ、種類は違えど本質は似ていた』

(どういうこと?)

『共に狂気的だったと思う。かたや悪に、かたや善に傾倒していたが、その強すぎる意志は狂気と似ている』

(……ちょっと分かるかも)

『一人で生きるにはそれだけの強さが必要なのかもしれない。何者にも負けず、押し通す強さは誰にも理解されないだろう。一人で生きるとは、その孤独に立ち向かう必要がある。だから星奈、そんな強さは必要ないと私は思うんだ』

(私も考えたくないな、そんなの)

『それでいいさ。君はそれでいい』

(…………)

『…………』

(星、綺麗だね)

『ああ』

(スターってさ、どんな人だったの?)

『私か? どんな、とは?』

(えっと、いろんなこと)

『うーむ、君に見せている姿こそが私なのだが……、そうだな、では一から話そう』

(うん)

『ジルベリール王国騎士団の隊長兼王妃警護長、それが私の役目だ。王国の民を守り、姫……エンプレスを守るのが私の仕事だった。』

(エンプレスって、あの? っていうかー、っていうかー、の人?)

『……まあ、そうだ。あれはあれで、今までの人生の中では君とマジシャンくらいには印象深い人間だった。……死んでしまったがな』

(やっぱり、悲しいの?)

『……正直、分からない。私が命を懸けて守るべき人間だったが、彼女が王国を危機に陥れた。憎くもあるが、どこかで死んでしまったことを悲しんでいるのだ』

(……)

『……よく困らされたものだが、死んだ後も私を困らせるとは、本当にじゃじゃ馬王妃様だ』

(……好きだったの、エンプレスのこと?)

『……さあ。王に対しても堂々と接する彼女を身の程知らずと思うが、どこか関わるのは恐れ多い感じだ。けれど不思議と親しみやすい雰囲気もあった』

(好きなんだね、エンプレスのこと)

『……さあな』

(素直じゃないんだから)

『……彼女がどれほど私に危害を加えたかも知らずに、よく言う。……本当に分からないんだ』

(……へー。他の好きな人とかいないの?)

『他にってな……。まあそうだな、マジシャン殿は素晴らしいお方だ』

(そういうのじゃなくってさ)

『ふむ、そうだな。星奈、君も好きだ』

(……え?)

『なんにでも一生懸命なところは本当に応援したくなる。まっすぐ正しいと思うほうに向かって頑張り、みんなと共に勝利を勝ち取ろうとする姿は……』

(ちょ、ちょ、ちょっと待って! 急にそんな……)

『君が聞いたんじゃないか。私も君のようになりたいと思う』

(て、照れるなぁ)

『別に照れることもないだろう。女同士なのだから』

(あは、あはは……え?)

『どうした?』

(女同士?)

『何か引っかかることがあったか?』

(うん?)

『なに?』

(……スターってさ、男の人だよね?)

『……』

(スター?)

『……』

(な、何とか言ってよ)

『……なあ、星奈』

(……な、……なに?)

『私と君も随分と長い付き合いだ。三年前、君が私を拾った日、私は君のことを小さな女の子だと思い、私のことを変な玩具のように思った奇妙な仲だったが、私は君のまっすぐな想いに惹かれ、一心同体で死ぬかもしれないような戦いを乗り越えてきた』

(……)

『私も人間で弱音を吐くこともあったかもしれない。間違ったことを言い、君に諭されたかもしれない。逆に私が君に注意したことも何度もあった。互いに理解し合えない時がありながらも、確かな絆が生まれていたと思っている』

(す、スター、怖いよ……)

『こうやって好きな人の話をしたり、自分でも忘れていたような女性の心を刺激されたような気分で、本当に君とは良い関係を築くことができたと思っている』

(……うん)

『さて星奈、私の性別が、なんだって?』

(……スターはさ、騎士なんだよね、ナイト様)

『ああ、女騎士というのは私の世界では珍しくなくてな』

(科学者だって言ってた)

『玲子も女の科学者だろう?』

(……えー、声低くない?)

『……星奈、今の私の気持ちが分かるか?』

(なんか、ぐつぐつと煮えたぎっている感じがする)

『星奈ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

(ご、ごめんなさーい!!)

『全く君という奴は! 私のことを男だと思っていたのか! なんだか無性に腹が立つ!』

(だ、だってスターって男っぽいんだもん……)

『だろうな。騎士だからな』

(……じゃあ、さ、スターってマジシャンのことを……?)

『彼は尊敬できるが、生憎魔術師と騎士は相容れない。そもそも私は国と結婚しているのだ、今更男とどうこうしようというのはない』

(え!? じゃあ女性!?)

『エンプレスに誘われたが断ったさ。女色の趣味はない』

(へー、そうなんだー、へー、スターって、へー……)

『大層ショックを受けているようだが、私の方がショックを受けているからな。忘れるなよ』

(は、はい)

『……』

(……)

『……星か』

(ど、どうしたの?)

『夜空に輝く数多の星は、地球に光が届いているのに、既になくなったものもあるという』

(なくなった星の光が今見えているってこと? 凄いね)

『ああ。人にも同じことが言えると私は思う』

(い、いきなり何の話?)

『いやな、星には思い出があるんだ。生きている人、死んでしまった人問わず、今まで出会った様々な出来事に』

(何があったの?)

『特定の何かもあるが、今も同じことだ。君と言う今ある星が、私にはたまらなく可笑しい』

(な、なによそれ!)

『知っているか、星奈? 星は数えきれないほどあるが、大きさや色が違い、同じ星は一つもない。君は私にとって、大きく輝く一番星だ』

(ほ、本当にどうしたの?)

『……元の世界に戻る術を見つけた』

(えっ!? ほ、本当に!?)

『ああ。だが失敗すれば命を失うだろう危険な手段だ。方法だけ残しておきたいが、誰も誘わず単独で行いたい』

(ちょっと待って、そうしたらスターは……)

『ああ、君とは二度と会えなくなるかもしれない』

(……そんな)

『言っておくが、止めても無駄だ。私の世界は全ての王を失い、きっと混沌の中にある。元騎士の私だができることがあるはずなんだ。だから、行かせてもらう』

(……やだ、やだよ!)

『やだじゃない! ……分かってくれ』

(分からないよ! 突然だよ、そんなの、そんなの……)

『方法自体は既に見つけていた。君が中学生になったこの節目に、じっくり話したいと思っていた。衝撃の事実も分かったことだ。これを機に……』

(いや! 折角スターが女の子だって分かったのに! これからもっと甘いものとか綺麗なものとかのお話したいのに!)

『星奈、君にはみんながいる。大丈夫だ、私もあの星のように君を見守っている』

(そんなの分からないよ! スターが一緒にいて、こうやって私と一緒にお話ししてくれなきゃいや!)

『……星奈、きっと君は私がいなくても大丈夫だ。みんなが支えてくれる』

(やだ、そんなの……)

『私は笑顔で見送って欲しい。……頼まれてくれないか?』

(……や、やだよぉ……)

『…………………………』

(…………………………)

『……星奈』

(……絶対にスターじゃなきゃダメなの?)

『……ああ』

(……また)

『ん?』

(……また、会えるよね?)

『…………分からない』

(……そこはきっと会える、って言うところだよ)

『そ、そうか』

(そうだよ)

『……』

(……スター)

『なんだ?』

(私もスターのこと大好きだよ。最初はいつも怒ってて嫌なおじさんだなぁって思ってたけど、いつもいつも私のこと心配してくれて、それで焦っていっつも私の名前を呼んで叫ぶの、面白かったぁ)

『それは……ぐむ』

(……また会えるよね)

『……ああ』

(よし! じゃあ……行ってらしゃい!)

『……また会おう、星奈』

(うん……)

『……』

(……)

『……』

(スター……)

『……』

(スター?)

『……』

(……またね)

『……』


天海星奈 9歳 身長133㎝ 5月5日生まれ

 明るく正しく楽しい女の子。星の髪飾りがお気に入りでいつもつけている。

 兄に似た元気いっぱいの恋する女の子であったが、スターを手に入れ、軽い気持ち半分熱い正義の心半分でフールに挑んだことから運命が大きく狂う。

 暴力や悪には真正面から戦うが、自分をいじめる存在に対しては最初の対応がずさんだったため全然気にせず、ちょっと心を病ませるくらいしかしていない。が、千佳や晶乃の協力もありいずれはなくなる。

 スターと別れた後は普段通りの様子でありながら、時に周りの人間を驚かせるほど老成した様子を見せることもあった。スターから出るチェンジャーの反応が消えたために正式に普通の人間として生きることとなり、学校生活は穏やかなものとなる。

 晶乃、千佳とはずっと仲良くあり続け、晶乃とは同じ大学に進学する。社会学、人権学について学び、チェンジャーでありながら人になった稀有な例であり、差別をしないようにする過去の発言を重視され、世界中の様々な組織から依頼され、差別撤廃のために尽力する。

 大学在学中に啓吾に告白するも、この時点で市議会議員になっていた啓吾はスキャンダルを恐れ断り、星奈もそれを認めた。ただこの時は晶乃と千佳にかつてないほど迷惑をかけて泣いた。散々に泣いた。現実は非情である。

 

 スター

元はとある王に仕える騎士であり、エンプレスの警護係になるも裏切られた後、その国を率い新たな王になった女騎士。

 長い金の髪を後ろに纏めた見目麗しい女性であり、エンプレスの警護長になったのも愚王が見た目で判断したとされる。

 実力は危惧されたが、確かな実力とカリスマ性があり、国を率いた後は見事に平和派の武力派としてその地位を確立した。

 無事異世界に戻ることができるも、既に数多くの王が乱戦をする世界となっており、自分の国は亡くなっていた。

 そのため傭兵身分として正義を掲げる国で戦いを続け、傍らに星奈達の世界と結ぶ魔術の研究に励む。

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