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 それでも、先生が来るまでまだまだ時間があった。

 だから、爆睡してる裕也ゴミをほっといて亜織と話すことにした。

 もちろん、自ら進んでこの毒舌女と話したいわけじゃない。 命が幾らあっても足りなくなるだろうし、そんな趣味もない。

 ただ単に、話さないといけない事があるだけだ。

 こいつと好き好んで話す奴なんて精々裕也むしけらぐらいだろ。

 …………別に、ツンデレじゃねぇぞ? いや、本当に。

「亜織、お前この部活で何するつもりなんだ?」

 自由部、この謎の部活で何やるか正直俺はまだ決めてない。 精々、この二人と適当に過ごすって程度にしか考えていない。

 いや、俺が考えるまでもなく裕也が考えてるんだろうけど、この爆睡野郎に頼り過ぎると俺が疲労死する。 最悪、ヤクザの事務所に突撃することになる、経験したから言える。

 自分の事は自分で。 出来る限りだけどな。

「そうね、世界征服かしら」

 真面目な顔して答えた。

 この部活、俺以外マトモな人間いないのか。 いないんだろうなぁ……。

「冗談よ、なんでも鵜呑みにするんてあなたはスポンジなのかしら?」

「スポンジ!? なんで!」

「なんでも吸収するからよ」

 お前の野心を吸収してやろうか?

「私を吸収したいだなんて卑猥ね。 今すぐ国連軍に攻められて死になさい、この腐れ雑魚」

「黙れ、本当に黙れ、お願いだから今すぐ黙れ」

 キレる、というより呆れる、疲れる。

 裕也との会話は本題が進まないが、こいつとの会話は本題が進まない上精神的に辛い。

「そうね、素直に昼寝をしたいわ」

「家でやれ」

「あなたは自由って言葉の意味がわからないのかしら? 私のやる事も自由よ、あなた程度に自由を犯されたくないわ」

 こいつに聞いた俺が間違いだった。

 裕也と一緒に寝ればよかった。

「まあ、それと裕也の役に立てれば嬉しいわ」

「あっそ」

 挙げ句の果てにこれか、本格的になったら俺部活辞めるぞ、息苦しい。

「安心して、そこまで盲目になるつもりは無いわ」

 どうだか。 中学の時からこれだからいいんだけど。

 この銀髪毒舌の女は、どういう脳内神経をしたのか、裕也にぞっこんらしい。

 中学の時から目の前で鈍感策士との恋愛ラブコメを繰り広げてたりする。

 結局、告って無い訳だが。

 ついでだ、聞いとくか。

「亜織はどうしてこいつに告らないんだ? この馬鹿、多分気付いてないぞ」

 正直気になった、どういう気持ちなんだろうか。

 結構重い話したつもりなのに亜織は微笑みながらあっさり答えた。


「裕也の事が大好きだからよ」


 ここまで正面から言われると、もうどうしようもない。 笑えも挑発も出来ない。

 それほど、真摯な言葉だった。

「大好きってのは、告白したいとかそういう義務が発生するものじゃないのよ」

 俺がどんな顔をしていた判らないが、俺の顔を見かねた亜織は説明を続けた。

「裕也が居て、私が居て、大和がいる。 裕也はこの環境が好きなのよ、まあ後一人欲しがってるけど」

 なるほど。

 とはまったく思わなかった。

 何言ってだこいつ?

 というのが感想だった。

 アホらし。

 とすら思った。

「いや、それは裕也の話だろ?」

 聞く事にした。

 聞くっていいよね。

「裕也は三人の環境が、いや四人がいいのか。 とにかくそんな環境が好きなのは俺もわかってるが、それはお前が裕也に告らない理由じゃないだろ?」

「理由よ、無能」

 まあ、今回ばかりは反論する気もないけど。

「好きな人が嬉しい、それが片思いの本懐じゃないかしら」

「まあ、言いたい事はわかるけど。 それでも、片思いって両想いとか恋人になりたいもんじゃないのか?」

「あなた、何時になくしつこいわね。 まさか、裕也をNTRしようとしているのかしら?」

「黙れ腐女子」

「なら黙るわ、この話はここで打ち切りでいいかしら?」

「ごめんなさい、俺が悪かったから話を続けてください!」

「五百円よ」

「持ってけクズ女!」

 財布から百円玉四枚、十円玉九枚、一円玉を十枚掌に乗っけた。 せめてもの仕返しだったりする。

「両想いになりたい。 でも、相手が喜んでこそじゃないかしら? 私は裕也と付き合いたいけど、洗脳はしたくないのよ」

 口先三寸でね。

 付け足した。

 うーん……

 まあ、こいつが言い包めるってのは俺の暴力行為と一緒なのか。

 人の心を足し算引き算する交渉人、好きな人の心なんて文字通り秒殺で落とせるって事か。

 なら仕方ないか。

「とにかく」

 亜織がまとめた。

「そろそろ先生が来るわよ、裕也を叩き起こしたらどうかしら?」

「お前は好きな相手が殴られる事にはなんにも感じないのか……?」

 好きってのもわからない。

 部活でやりたいこともまったくわからないが。

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