(25)
完全に戦いは終わった……と思う。
というより、終わっている。
たとえハンマーが倒れて無くて今すぐ俺を倒す為に作戦を練っていたとしても、戦いは終わっている。
俺が戦えない。
異常に、尋常じゃないほど痛い。
左手吹き飛んでるんだし。
というか、死にそう。
策もまとまらない。 足元がしっかりとしない。
誰かに後ろから押されるだけで死にそうだ。
まあ、見る限りハンマーは動けない、だろう。
多分、大丈夫だ。
トドメを、刺しに行こう。
十五メートル、目算だがそこまで歩くのに二十秒かかった。 その間に、三回吐血した。
どうやら、ハンマーの一撃で内臓を痛めているらしい。 右手を盾にする意味があったのか怪しい。
完治が保証されていなかったら、永遠に向き合うレベルの怪我だったのだろう。
まあ、一度死んでいる以上、もはや何を言おうとも今更って感じだが。
吹っ飛んだ先のハンマーは完全に動けなさそうだった。
ほっといても死にそう、だと思った。
それでもトドメは刺すが。 それが、殺し合いの礼儀だ。
畜生、左手が痛い。
いや、左手は吹き飛んでるんだった、左手の付け根って言うべきか。
「どう……してだ…… どうして……お前はあの体勢から攻撃が出来た……?」
喋れたみたいだ。
死ぬのに疑問を解消したいのか。
付け根は痛くて死にそうなのに答えないと駄目なのかな。
まあいい、死に行く者へのせめての情けぐらい与えるべきか。 これも、殺し合いの礼儀だ。
アホらしくて仕方ないが。
「お前は勘違いしていたんだよ。 本来なら俺が跳び蹴りをした時、もしくは創造した刀が二本って所で姉ちゃんとの違いに気付くべきだったんだよ。 姉ちゃんは刀を四本縦横無尽に扱うが、俺は
二本の刀と足刀での四刀流だったんだよ。
これがお前の勘違いだ」
「な……!?」
ハンマーは唖然としてる。
「本当の冥土の土産だ。 四刀流ってのは秋山一族の技ではあるが一子相伝では無いんだ。 秋山一族の伝承の中には、姉ちゃんみたいなスタンダードタイプは勿論、俺の両親のように二人で一人、そもそも開祖は戦場で相手の刀を奪っては切っての繰り返しだったらしいからな。 つまり、四刀流と言うスタイルを受け継いでいるだけで、振るう技はどの代もオリジナルなんだよ」
残ってる右手で、冷静な自分を総動員して刀を一本創る。
ハンマーは自分の死を悟ってか、笑い始めた。
「冥土の土産ありがとうよ、お礼に俺も一つ教えてやるよ。 秋山季花が囚われている結界、あの中には俺ほどではないが創造会の戦闘員が大量にいる。 秋山季花が倒れ次第、大量に出てくるぜ、精々気をつけるんだな」
ハンマーの最後の言葉に、俺は痛みを堪えて笑いながら答えた。
「無用な心配だよ、まったく」
そうして、俺はハンマーの首を斬った。
ハンマーの身体が消えていった。
これが消滅って奴か。
それに伴って、空間が消えていった。
痛みで意識が消えるギリギリの瞬間、俺はおでこへの優しい感触と、左手が再生していく奇妙な感覚があった。




