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 ハンマーは面倒くさがり屋だが、決して馬鹿じゃない。

 だから、俺がこれ以上小細工を打たないように右手で頭、左手で足を狙った。

 飛んでかわしたら、上半身が持っていかれる。

 しゃがんでかわしたら、下半身が持っていかれる。

 実際、これでハンマーは決まったと考えただろう。

「あ?」

 だから、ハンマーは驚いた。

 まさか、俺にスレッジハンマーが当たらないなんて思っていなかったのだろう。

 そして、俺からの反撃が自分の身に当たるなんて予想すらしていなかったのだろう。

 小細工しかなかった俺から、まさか二つのスレッジハンマーを掻い潜って飛び蹴りが来るなんて思ってはいなかったのだろう。

「何をした!?」

 ハンマーが混乱しているのに対し、俺はどんどん冷静になっていた。

「飛び蹴りだよ、ご都合主義に任せてな。 ここは天壌だぞ?」

「ふざけんな! お前にそんな力があるかよ!」

「確かに、今の俺じゃ勝てない。 未来の俺でもお前の運動神経を超える事はできないかもしれない」

 少し、それでも吹っ飛んだハンマーを見下して言った。


「だけど昔の、全盛期の俺なら勝てる」


「なにを言ってやがる!? どうして今の攻撃をかわせた!?」

「おいおい、騒ぐなよ。 少し考えればわかるだろうけど、俺が正解をやるよ。 冥土の土産のサービスだ、喜んで聞け。


 俺の想像付加クリエイトオプションは、昔の俺の力だ。


 お前なんかに話さないといけないのも悲しいが、話してやるよ。 俺の精神的外傷トラウマは両親に斬られた事じゃない。 両親を斬り殺すような力を俺が持っていた事だ。 俺の想像武器は姉ちゃんの想像に漏れず二本の刀だろう。 胸には罰の傷がある。 だが、二本の刀で恐ろしかったのは自分が切られる事じゃない、大切な両親をなんの躊躇いも無く斬り殺した事なんだよ。 さて、なんか質問はあるか?」

 完全に黙っていやがる。

 さっきの俺か。

「なんかもう、どうでもいい。 とにかく潰してやる」

 体制を立て直してハンマーは俺に向かってきた。

 余裕でかわせはする。

 だが、埒が開かない。

 だから。

創造クリエイト

 胸の傷が疼く。

 古傷が疼く。

 まったくもって、思い出したくない。

 気持ち悪くなってくる。

 こんな事、なんで思い出さないといけないんだか。

 疲れる。

 精神的に。

 きつい。

 倒れそうだ。

 まったく、戦う理由も戦闘スタイルも言い回しも全てが全てアホらし。

 だけど。

 それでも。

「俺は助けるって決めたんだよ、戦い続け、背負い続ける女子を」

 こんな精神的外傷トラウマを背負い続けるって躊躇しなかった奴を。

 何があっても背負い込むような奴を。

「そんな奴を、俺は見捨てない」

 俺は背負おう、戦い抜くアイツを。

 俺は、二本の刀を創り出した。

 武器を手に入れた。

 小細工でもフェイントでもない、俺の斬り札。

 スレッジハンマーと刀の打ち切り合いの始まり。

 ハンマーは俺に何度目か忘れたが、突進をして来た。

「四刀流[咲]!」

 左手で持っていた刀を投擲し、距離を詰めた。

「投げるしか能がねぇのか!」

 ハンマーに当然のように防がれる。

 だが、自分で確認をした。

 技の速度の向上を。 一撃の攻撃の重さを。

 どうやら、小五の時の俺の方が身体の使い方をわかっているらしい。

 小五の才能に今の身体能力と経験、これが俺の今の武器だ。

 ハンマーに肉薄し、右の刀を思いっきり突いた。

 身を翻しかわそうとしたが、ギリギリ胸を掠めた。

「……くっそ!」

 それに対し、ハンマーは右のハンマーを俺の肩を狙い振るった。

「くっ……」

 躱し切れなかった。 衝撃をほとんど逃がしたが、それでもあたった。

 鈍い痛みが残る。

 折れてはいないが、ひびは間違いなさそうだ。

 肉を切らせて骨を断つ。 これ以上無く、諺の通りじゃないか。

 まったく、アホらし。 結局この攻防だってあいつの覚悟で押し負けただけじゃないか。

 それでも、ハンマーは俺の攻撃が掠めたことに明らかに驚き、狼狽した。

 とんでもない身体能力に、攻撃をする力。

 これからどういう展開になるか想像したのだろう。

 だが、一見状況は変わったように見えるがまだまだ俺の方が分は悪い。

 多分、身体能力は今の俺のほうが少しは高いだろう。

 ならば、武器だ。

 俺は二本の刀。

 ハンマーは二つのスレッジハンマー。

 刀は掠っても致命傷を与えられないが、ハンマーは掠っただけで戦闘に差し障る。

 さっきの攻防がそれを証明している。 右手、このひびの入った肩を動かすなら、明らかに反応は遅れるだろう。

 おまけに、その威力に必要な重さをハンマーは感じていない。

 長期戦で、俺はこの戦いには勝てない。

 短期戦ですら、勝てる可能性は五分もいかない。

 決めるなら、さっきの攻防で決めるべきだったのだ。 肩が動かしづらい、これは致命的過ぎる。

 このままでは勝てない、二本の刀では。

 二本じゃ勝てない。

 ならどうする。

 四本使えばいいだろ。

 だから、四刀流なんだろ。

 ハンマーと距離を取り、俺はハンマーに提案した。

「おいハンマー、まどろっこしいから次の打ち切り合いで終わりにしようぜ」

 ハンマーは警戒しつつ攻撃の手を緩めた。

「次の打ち切り合い? おいおい、お互い一撃必殺の技なんてねぇだろ?」

「様子見は終わらして、本気で潰し合おうって言ってんだ。 持てる力を全て使ってな」

 潰す。

 という言葉に明らかに反応していた。

 「相手が好きな言葉、もしくは多用する言葉を会話に自然に混ぜたら、自分の好きな方向に持っていける」だなんて、何時だったか亜織が言っていた。

 こんな戦闘の時ですら一人じゃない。

 裕也の策も、亜織の交渉も、夏霧の回復も全て俺の味方だ。

「いいぜ、次が最後だ。 最後に全力で潰してやる」

「来いよ、刻んでやる」

 ハンマーは左手のスレッジハンマーを突き出してきた。

 左下にしゃがみ、かわした。

 居合いを決めるために。

 だが。

「潰れろ!」

 突き出したハンマーを左下に振り下ろした。

 二段構え、じゃなくて俺の複合技のぱくりか。

 戦闘中に戦闘相手の技を奪うか。

 本当に、油断ならない。

「四刀流[閃]!」

 振り下ろしてきた左手を、俺は斬り落とした。

 人の身体を、しっかりと切り落とした感触。

 久しぶりに思い出した。

 だが。

「左手は端から捨ててるんだよ!」

 本命は右の一撃だった。

 しゃがんだ事が完全に失敗、二段構えどころか三段構えだった。

 相手なのに、一瞬尊敬をし、それ以上に恐怖を感じてしまった。

 まさか、自分の手を捨てるなんて前提でかかって来るなんて。 その覚悟が、攻撃を受けた瞬間の怯みも無くしたのだろう。

 本当に、肝が据わっている。 敵で会わなければ素直に尊敬していたかもしれない。

 なんて、そんな現実逃避にも似た思考が俺の行動を一瞬遅らせた。

 ここからもう片方の手で居合いをおこない右手を斬り落とすことは明らかに不可能だった。

 なら、どうする。

 決まっている。

 仕方ない。

 殺される前に、殺すだけだ。

 俺は、居合いをおこなった方の剣を捨てた。

 想像は消えてなかったので、床に落ちた。

 そして、

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

 左手でハンマーを止めた。

 止めた、と言うのには明らかに語弊がある。

 完全に潰れたのだから。

 痛みで武器は消えた。

 もう刀も出せない。

 いや、痛みで意識すら混濁する。

 だが、のたうち回る前にやらないといけない事はある。

 死に到る前に。 戦い続けている内に。

 ハンマーには攻撃を受けても攻撃し続けるという覚悟があった。

 俺に無いのか?

 ふざけるな。

 俺は守るんだろ、死なず、死ぬまで。

 ハンマーは左手を斬り落とされても戦うんだ。

 なら俺だって、左手を潰されようと戦うんだ。

 生きる為に。

 もう、逃げない。

「っっっっっっ四刀流[真]!!!!」

 ハンマーの衝撃で身体を捻り、右足から蹴りを、足刀を決めた。

 ハンマーは、まるで昨日俺が喰らったように、確実に肋骨は粉砕し臓器に刺さり、そして吹っ飛んだ。

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