(23)
寝てんじゃねぇのか、ハンマー。
降りてみたら、スレッジハンマーも持たずに椅子に座って目を瞑ってぼーっとしていた。
フェイントか?
このまま襲いたいのはやまやまだが、喋りかけてみよう。
カウンターなんて喰らったら洒落にならない。
「おい、ハンマー馬鹿、やってきてやったぞ」
「………ん、ああ、逃げた雑魚か、待ちくたびれたぞ潰す」
なんか、奇襲したら勝ってたような気がする。
死ぬほど勿体無い事をした気がする。
いや、比喩じゃなく。
実際命懸けだと言うのに。
「さっさとかかってこいよ、お前なんか寝ぼけてても勝てるんだよ」
寝ぼけててもって今言ったよな?
寝てたか? 寝てたのか!?
なんなんだこいつ。
朝まで二階に居たら案外姉ちゃんが助けに来てくれたんじゃねぇの?
さっきの灯裏さんの発言本当なんだろうな?
というか、ハンマーを倒すなんて決心が恥ずかしくなってきた。
「もしかしたら人生最期の頼みをお前にする、なんか悪役っぽい事言って」
「あ? 何言ってんだ狂ったのか糞餓鬼」
ごもっともで。
さあ、シリアスに行こう。
このまま死んだら、笑い物にすらなれない。
「ハンマー、なんでお前ヒーラーを狙ってるんだ? 場合によっては戦わないで済むぜ」
勿論、ヒーラーとは夏霧の事だ。
情報は出来るだけ伏せておこうっていう魂胆なんだが。
乗ってくれるかな。
「おいおい、何他人事のように話してるんだ。 今はお前も狙われているんだぜ?」
予想通り、なのかな?
「は? 俺を? 狙われる心辺りなんてねぇよ」
「わかってんだろ、面倒くせぇ。 狙う理由は想像武器を持ってるからだ」
ビンゴ。
「想像武器を持ってるからなんなんだよ、俺なんて使った事ねぇぞ」
「あー、えーと、あーーー」
ハンマーは面倒くさそうに頭を掻いた。
「もう面倒くせぇ、俺達の情報はここまでだ、冥土の土産サービスも終わった事だ潰す」
スレッジハンマーを創造した。
おーけー。
俺達なんだな。
とっても洒落じゃない情報だが、どうやら狙いは俺と夏霧らしい。
同時に狙われた方が守りやすい。
「かっこよく決めさせろ。
四刀流、秋山大和 これより刻む」
「いいな、それ。 かっけぇよ。
創造会、大串健人 徹底的に潰してやる」
本名か、それが。
わかったよ、大串健人。
お前を刻んでやる。
「ま、とかいいつつ、最初から道具に頼るわけなんだよな」
閃光弾。
ポケットに一つずつ。
先手必勝。
「四刀流[雨]!」
必要以上に大きく言った。
夏霧の足跡を聞こえなくするために。
それ以上に、倒すために。
右手の剣で、全力で突いた。
「糞餓鬼、大声で言ったら目を潰した意味ねぇだろ?」
が、普通にかわされた。
「四刀流[突]!」
ベルトから鞘を抜き取って、殴りかかった。
「鞘を合わせて四刀って言うつもりか? 予想通りだよ」
ハンマーが笑ってる。
確かに安直だったか。
普通にかわされた。
持っていた鞘をハンマーに投げて、俺は一旦距離を置いた。
くっそ、やっぱり強い。
今の俺じゃどう足掻いても勝てそうにない。
諦めるわけでもないけど。
「おいおい餓鬼、それで小細工は終わりか?」
「ああ、生憎これで全部出した」
持っていた閃光弾は全て使い切り、木刀は二本ともハンマーに破壊され、日本刀一本鞘一本。
これで、小細工によるフェイントはもうできない。
だから。
「だから、一刀で相手してやる」
「は、万策尽きた時の苦し紛れはかっこよくねぇぞ!」
ハンマーは突っ込んできた。
スレッジハンマーを持っているとは思えない速度で。
「じゃあな、餓鬼!」
スレッジハンマーの一撃を。
昨日と同じく、俺の脇腹を狙って。
俺を殺す為に。
それに対し、俺はとても格好つけた反撃を行った。
まず、残った方の鞘をハンマーの顔面に投擲した。
これをかわされるのは予想通り、そして、仰け反ってスレッジハンマーの軌道が脇腹から頭に行くのも。
俺は、しゃがんだ。
しゃがみ、スレッジハンマーの下を掻い潜った。
これこそどんなバトル漫画だ。
「四刀流複合技[突風]!」
突いた。
ハンマーはかわしきれず、少し掠った。
俺はその瞬間、さっきの鞘と同じように投擲した。
死ね。
「………ッチ!」
これまでよけられた、どんだけ運動神経いいんだよ。
掠るだけか、ここまで不意打ちをして。
本当に、もう策は尽きたと言うのに。
掠り傷、一つだなんて。
あーくっそ、滅茶苦茶強いな。
アホらしい、本当にアホらしくてくだらない。
「………驚いたぜ、まさか俺の勝ちが確定する前に傷を負うなんてな」
「は? 勝ちが確定? 寝言は消滅してから言え」
「強がりを言うんじゃねぇよ」
笑みを濃くした。
「お前、今武器を一個も持ってねぇじゃねぇか。 さっきのがお前の正攻法か? それで武器を全部失ったらお前の負けなんてすぐそこじゃねぇか」
「…………」
「実際、お前はよく頑張ったと思うぜ? 創造会の中でも屈指の実力者である俺に傷をつけるなんてよ。 計画が最終段階に入ってなきゃ案外スカウトされてたかもな」
「…………」
「おい、なんか言ったらどうだ? そんな秘密をベラベラ喋っていいのかとかいわねぇのか? もしかして、チビッちまってんのか?」
「…………」
「反応無しか、つまんね。 もういい、潰れろ」
…………………………………………………………………気持ち悪い。
こんな気持ち悪さも戦う為には仕方ないのか。




