(21)
「残念ながらお前は戦うし、その女の子を守ることも出来ないぜ?」
扉をくぐった直後、突然真上からスレッジハンマーが振り下ろされてきた。
ほとんど無意識で日本刀を取り出して、スレッジハンマーの柄に刃をぶつけ押し合う事でを俺は対応した。
しかし。
「なんでそんな動けてるんだ、糞餓鬼。 お前は死ぬか死ななくても一生物の怪我をしたはずなんだけどな!」
そのスレッジハンマーの持ち主は。
「ハンマーだと!?」
天壌市市役所、入口の正面に立っていたのはハンマーだった。
スレッジハンマーを両手に携えて。
「夏霧、外に逃げろ!」
「無理だよ大和君、ここに入ってから扉が開かない!」
「は!?」
後ろを見てみると、確かに自動ドアはまったく動かない。
停電か?
いや、明かりはついてる。
ハンマーは埒が明かないと判断したのか、後ろに下がった。
「ここがお前等の死に場所だ、なんて言い方は臭いか。 ここで簡単にルールを説明しよう。 この空間は想像武器<クローズ・エリア> 名前通り、閉められた空間だ。 いや、現実世界ってわけじゃないぜ? 現実世界の模造品、空間を同じようなのをもう一つ作ったって話だ。 今、地球上にある天壌市入口は普通に営業中だし、俺やお前等は地球上にも宇宙にもどこにもいない、他の空間ってわけだ。 抜け出したいか? 方法は一つ、お前等が俺を殺すか、俺がお前等を殺すってだけだ。 以上、親切なルール説明だよ!」
言い終わった直後、ハンマーは再び俺に目掛けて凄い速度で走ってきた。
元からの運動神経か。
昨日、スレッジハンマーで殴られた箇所が疼く。
完治はしている、つまり恐怖か。
「四刀流[閃]!」
だが、それで行動が鈍る等という事はなかった。
二本の刀での同時に居合い切り。
決まった、と思った。
「馬鹿が!」
ハンマーはそれを対応した。
右手のスレッジハンマーを前に突き出し、居合いを防いだ。
そして、左手のハンマーで俺を仕留めようとした。
「ッチ!」
俺は右手の刀を鞘に戻し、左手の刀をハンマーの顔面に投げつけ行動を遅れさせ、夏霧の手をとってカウンターの方へと向かった。
「うろちょろ動く餓鬼だな!」
ハンマーは躱した刀を確実に破壊し、こっちに向かってきた。
畜生、破壊さえされなけばいくらでも突破口に出来るかもだったのに。
いや、素直に刀一本の事態を気にするか。
「いやいや、まったく。 てめぇのお姉さまは刀を四本持ってたぜ? 四刀流ってそういうもんじゃなかったのか?」
ハンマーは余裕そうな笑みを浮かべ訊ねてきた。
「馬鹿が、言うわけねぇだろ」
「お前はまだ勝ち目なんてあると思ってんのか?」
ハンマーはさらに笑みを濃くした。
「実戦経験が違うんだよ、お前とは。 雰囲気では、想像武器は出せそうだが、それすらも出来ない。 こんな中でお前に勝ち目があるとでも?」
「舐めんな!」
俺は飛び出し、ハンマーの方へと向かった。
もちろん、キレたからなんて理由じゃない。
夏霧が、単に邪魔だった。
一人の方が、戦いやすい。
守る物は必要だ。
だけど、守る物は近くに無い方がいい。
「四刀流[線]!」
飛び込むと同時に、俺は居合い切りをした。
「芸のねぇ奴だな!」
当然のような、ハンマーに防がれた。
が。
一瞬だけ、隙は出来た。
ここが賭けだ。
全力で、手を広げる。
「死ねよ、四刀流発展技[無限]!」
姉ちゃんの奥義の名前。
俺は出来ない。
フェイントだ。
だが、昨日辛酸を舐められた姉ちゃんが使っていた発展技、その言葉に一瞬動きは止まった。
俺はポケットの中に入れていた閃光弾をハンマーに投げつけると同時に、夏霧を連れて二階へと逃げた。
敵前逃亡じゃなくて、一時撤退と言うか。




