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「春川君って思ったより色々考えてる人だったんだね」

 帰り道。

 いや、市役所に向かってる以上帰り道なんて言えるかどうかはわかんないが。

 俺は夏霧と一緒に帰ってる。

 ついでに、亜織と裕也は常に一緒に帰ってる。

 ボッチじゃない、ただの気遣いだ。

 亜織に言わせたら余計なお世話らしいけどな。

 いや、そもそも家の方向が真逆って事もあるんだが。

「あいつは策士だからな。 俺や亜織と違って色々と哲学的なんだよ。 俺が考え無しってのもあるけどな」

「亜織ちゃんは口先器用なんじゃないの?」

 俺らは灯裏さんの言うとおりに自由部で散々時間を潰し、少し遠回りだが大通りを歩いている。

 灯裏さんの言う事に逆らうほど自殺志願じゃないからな。

 いや、そもそも姉ちゃんの指示だっけ?

 一応日本刀が入ってるバットケースは何時でも取り出せるように気を配ってるけどな。

「口先だけ器用だ。 嘘吐きで詭弁家の扇動者他諸々なんだ。 それだけで考えが無いってことなのかな?」

「他諸々って………」

「肩書きが多すぎるんだ、あいつは。 肩書きってより三人称? とにかく、話すたびに他の言葉が思いついて言いたかった事は忘れる感じ」

「どれだけ多いの!?」

 驚いてる。

 普通は有り得ないのかな。

「もしかして、大和君にも二つ名とかあるの?」

「俺にはねぇよ」

 笑いながら言った。

「姉ちゃんだろ、そういうのがあるのは」

「季花さんかぁ……」

人類最強ハイエンドなんて姉ちゃん以外名乗る奴なんていねぇよ」

 でも誰が決めたんだろう。

 自称だったら痛可愛いなぁ………。

「大和君、顔がにやけすぎて気持ち悪いよ」

「安心しろ、姉ちゃんの事考えてただけだ」

「警察と市役所、どっちに連絡した方がいいのかな?」

「両方共にすんな」

「あ、心療内科とかかな?」

「病気扱いかよ!」

 あんまりだ。

 そうだ、そんなことより聞かないといけないことがあった。

 亜織直伝の話題逸らしだ。

「想像武器って、どうやったら消えるんだ?」

「え?」

「いや、だからさ。 例えばハンマーが出したスレッジハンマーはあの後どうなったんだ? まさかハンマーが持ち帰ったのか?」

 想像付加でそこまで重くは無いだろうけど。

「多分持ち帰ってはいないかな。 想像武器は創造者の意識が向かなくなった時点で消えるんだよ、って季花さんが言ってたよ」

 なるほど、姉ちゃんが言ってたのか、間違いがない。

 しかし。

「姉ちゃんなぁ……」

「大和君は季花さんが心配なの?」

 夏霧は心配そうに聞いてきた。

「いや、自分の心配だよ。 姉ちゃんを敵に回しても良いって奴に狙われたなんて考えたら、登校中にエンカウントする世紀末どころじゃねぇなって」

「暴走族も心配するべき案件だと思うけど………」

 常識なんて知りません。

 あ、そうだ。

「そういえば、なんで夏霧は姉ちゃんの事知ってるんだ? もしかして、助けてもらった事とかあるのか?」

「あるよ。 先週の事だったかな。 春休みだったから町にお散歩に行ってたら突然襲われてね。 なんだっけ、季花さんはギロチンとか呼んでたっけ? まあ、駆けつけてくれて速攻で倒しちゃったんだよ」

「流石姉ちゃんだよ……」

 と、俺の中で姉ちゃんが神格化されそうだった時。

 考え無しの俺が無駄に閃いた。

「ちょっと待て、それってもしかしてハンマーとかエリアの仲間だったりするのか?」

「え、なんで?」

 夏霧はポカンとしている。

「さっきの裕也の理論で言うなら、ここは事故誘発地帯なんだろ? 確かにお前が個別に狙われるってことも充分にありえるが、組織があってそこからお前に対して刺客が差し向けられてるって考えるべきなんじゃねぇのか?」

 わけのわからなさそうな顔をしている。

 まだいまいち理解してないのか、こいつ。

「ハンマーを倒したってお前は狙われるって事だよ」

 言い方を優しくするべきだったと後悔した。

 恐怖で泣くよな、普通。

 追われているとき、あそこまで取り乱していたんだし。

 しかし、返答は違った。

「別に、それぐらい仕方ないよ」

「は?」

 一瞬、聞き間違ったのかと思った。

 何を言っているのか理解できない。

「お前は狙われ続けるんだぞ? それぐらいなわけねぇじゃん」

「大丈夫だよ、だって」

 夏霧は、とても魅力的な笑顔でいった。


「守ってくれるでしょ、大和君が?」


 はぁ……

 なんだろ、笑いがとまんね。

 こいつは会って2日目の男子に何を言っているんだか。

 守ってねえし、守れてもねぇし、そもそも俺が死にかけたっての。

 なんの信頼だよ、重い。

 まったく、アホらし。

 これが、こいつの覚悟か。

 人を信じ、自分の運命を受け入れる。 たとえ、何があろうと自分が人を信頼できるなら、死ぬまで、死んでも信頼し続ける。

 そんな覚悟、女子じゃなくても見捨てられるか。

「俺が生きてたら、俺が死ぬまで守ってやるよ。 それでいいのか、自由部員?」

 やっちゃったよ。

 また裕也にからかわれる。

 また亜織にこき使われる。

 ま、いいか。

「まあ、どうせ戦うことなんてないんだろうけどな」

 笑いながら、夏霧と天壌市市役所の自動ドアをくぐった。

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