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「そうか、大和は僕達を死にかけても助けてくれるんだね。 まさか、君がここまでツンデレだったとは、ニヤニヤが止まらないよ」

 恥ずかしいのを我慢して、必死に夏霧と登校した俺は教室に入った途端に笑われた。

 さっきよりも恥ずかしい。

「なんで知ってんだよ!!!」

 一発蹴った。

 勿論本気では無い。

「大和、僕が天壌市の防犯カメラを全て閲覧自由って事を忘れているんじゃないのかな?」

 こいつありえねぇ。

 だいたい、その理屈は全てを同時に確認しているって事と同義だぞ?

「あ、ついでに言っておくけど、多分季花さんも見てると思うよ」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 恥ずかしい、アホらしいほど恥ずかしい!

 もうなんなんだ、なんであんな事言っちゃったんだ俺。

 調子に乗ったのか。

 それとも、格好つけたのか。

 もう駄目だ、死にたい。

 決心なんて心の中でしてろよ。

 今の俺なんて、ただの誇張野郎じゃねぇか。 行動してから言え、全て。

 裕也はある程度俺を弄って満足したのか、恥ずかしがっている俺を放置して夏霧に話しかけた。

「やあ、夏霧さん。 僕は春川裕也。 自由部に入らないかい?」

「よろしくお願いします!」

 夏霧は目を少女漫画のヒロインのように輝かせてお礼をしていた。

 お前が入ろうとしている部活は輝かしい少女漫画じゃなくて痛々しいラノベだぞ。

「騒がしいわ」

 落ち込んでる俺、勧誘する裕也、変なオーラを出してる夏霧の騒がしさで亜織が起きた。

 寝れたのかお前。

「大和、私の事死ぬまで守ってね?」

「まさかの追撃!?」

 しかも死ぬまでって!

 どこまで使い潰す気だよ!

 なんでこいつら守る為に命張らないといけないんだ!?

 …………あれ、なんでだっけ。

 やべぇ、思い出せない。

 そもそも、理由あるのか?

 駄目だ、思い出すな。 こいつらを敵を思いかねない。

「初めましてかしら、夏霧さん。 私は冬町亜織。 クラスメイトとしても同じ部員としてもよろしくお願いするわ」

「……別に、昨日のHRで自己紹介したんだし初めましてじゃないと思うんだけど。 よろしく、亜織さん」

 なんでこいつら、夏霧が自由部入ること前提?

 どんだけ自分の勧誘能力に自信があるんだよ。

 俺が言えたことでも無いけどな。

 なんて、自己紹介が終わった時、亜織の携帯に電話がかかってきた。

 学校ではせめてマナーモードに。

 亜織は電話相手の名前を見るなり面倒臭そうな顔をして電話を切り携帯の電源を切った。

「おい、誰からの電話だよ?」

「あら、あなたは人権という物を知らないのかしら? ああ、あなたには無いから知らないのかも知れないわね。 ごめんなさい、大和風情を私同列に扱ってしまって。 あなたみたいに、日本語を理解することで精一杯の虫ケラは人権なんて知らなくて当然よね。 ごめんなさいね、あなたみたいな希望なんて何一つ抱けない虫ケラに過度な要求をしてしまって。 精々、私の盾として頑張ってね」

「俺の人権を知れ!」

 まさかこいつ、これを弄るネタにするつもりか?

 本気で自殺するぞ。

 なんて思ってたら、今度は俺の携帯のバイブ機能が動き始めた。

 携帯の画面には「冬町ふゆまち灯裏あかり」って出ている。 なるほど、さっき亜織に電話したのはこの人か。

 通話ボタンを押した。

「もしもし、ご無沙汰です」

『いふいふ~、じゃないよ~。 亜織ちゃんに電話出てもらえなかったんだよ~』

 面倒臭い。

 電話に出てもらえなかったのは話し方が悪い。

「亜織に代わりますね」

 とか言って亜織に俺の携帯を渡そうとすると全力で嫌そうな顔をしてる。

 目が本気で嫌そうだ。

『いいよ~、別に。 元から大和君と姫美ちゃんへの連絡事項なんだから~』

「……なんで亜織に電話したんですか」

『これを口実に亜織ちゃんとお話したかったんだよ~』

 …………おい。

 このシスコン、大丈夫か?

 やばい、敬語が抜けてた。

「俺と夏霧に連絡ってなんですか?」

『ああ、えっとねぇ~


きーちゃんが行方不明になっちゃった~』


「……はい、どういうことですか?」

『落ち着いてね、大和君~』

 灯裏さんのお陰で沸騰した頭が冷めかけた。

 灯裏さんだったから落ち着いた。

 沸騰させたのも灯裏さんだけど。

 とんだマッチポンプだ。

「どういうことですか?」

『突然だよ、突然~。 大和君のきーちゃんと自由部への愛の告白を見て照れちゃったきーちゃんをからかってたら突然居なくなっちゃったの~』

 …………微妙に冷静じゃなくなった頭が少し恥ずかしくなって落ち着いた。

 しかし。

「姉ちゃんに何が起きたんですか?」

『わからないけよ~。 きーちゃんが「よし貴様、最後の言葉はそれでいいな」って立ち上がって私に斬りかかろうとした直後、急に消えちゃって~。 最初、私が死んじゃったのかと思ったよ~。 机の上の私達宛ての資料を見るに、どうやら「エリア」って人の仕業らしいよ~』

 エリア。

 空間制作者だっけ?

 想像武器クリエイトウエポンか。

『でねでね、きーちゃんが居なくなった後の対応パターンがいっぱい書いてあるの~。 今のパターンなら普通に学校で待機、出来るだけ最後まで部活に参加、帰宅時は家に帰らず市役所に泊まれだってさ~』

「わかりましたけど、その後はどうすればいいんですか?」

『その後って~』

 とても怪訝そうな返事をされた。

「明日以降です」

『明日以降?』

 当たり前の事を言うように、灯裏さんが言い捨てた。


『大和君は、まさかあの人類最強ハイエンド、秋山季花が一日以上も敵に自由を赦すと思うの~?』


「…………仰るとおりで」

『わかったならもう通話は終わりだよ~。 さっさと電話切ってSHRに備えてね~。 じゃ、亜織ちゃんによろしく~~』

 電話は終わった。

 夏霧と亜織が心配そうに、裕也がニヤニヤしながらこっちを見ている。

 まったく、ポーカーフェイスを習得したい。

「お姉ちゃん、なんだって?」

 亜織が心配そうに聞いてきた。

「よろしくだってさ」

 間違いなく、間違っている返事をした。

 これこそ、俺の戦いだ。

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