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想像武器の四刀流 一話 市役所決戦  作者: 山石 光軍
ファーストコンタクト
12/29

(11)

 生きる死ぬと言う問いは、俺にとっては答えが出ている話だった。

 小学五年生の時、俺は死に触れて親を殺した。

 しっかりと、俺の手で。

 お父さんの心臓を刀で刺し、お母さんの腹を刀で横一文字に薙いだ。

 そして、お父さんとお母さんは俺の胸に罰を刻んだ。

 死ぬも殺すも紙一重。

 違いなんて、そこで終わるかそこから続くかしかない。



「気がついたか、大和」

 朦朧と、変な夢を見て起きたらそこには天使………じゃなくて姉ちゃんが居た。

 気遣ってくれる姉ちゃん、すげぇ可愛い、天使だ天使。

 天国かとすら思った。

 それでも、これより優先して聞かないといけない事があった。

「姉ちゃん、ここはどこ? あと、俺死にかけたはずなんだけど、なんでこんな……?」

 骨折が治ってる、綺麗サッパリ、これ以上なく。

 まるで、最初から骨なんて折っていなかったかのように。

 時計見たら九時回ってる。

 二時間前ぐらいか、折れたのは。

 ほっておいて完治する時間じゃない。

「ここは天壌市市役所治安維持室だ。 順を追って説明してやる。 その前に、自己紹介してやれ」

 姉ちゃんがそう言うと、後ろに控えていた女の子が出てきた。

 …………あやふやながら、突然木刀を首に付けて脅した記憶があるんだが。

 気のせいだったらいいなぁ……。

「初めまして、天壌高校二年、実は同じクラスの夏霧なつきり姫美ひめみです。 助けてくれてありがとうね」

 可愛いな、さっきは俺も焦ってたから観察出来て無かったけど。

 ……ぶつかったから焦ってたってわけじゃないよな? まさか、本当に俺は木刀を初対面(とも言えないが)の女子に押し付けたのか…………? 忘れよう。

 凄すぎる姉ちゃんが隣にいるから気付き辛いけど、巨乳だ。 それこそ亜織と比べられ物にならないほど。

 胸から目が行った事がばれて姉ちゃんに睨まれた。

 容姿も綺麗だ。

 姉ちゃんや亜織のように静かな綺麗さじゃなく、溌溂とした周りを安心させそうな雰囲気を持っている。

 童顔と言える顔に、すごくよく表情の変わりそうな笑顔。

 そして目。

 ハンマーのように、その目には深い悲しみが刻み込まれているようだった。

 しかし、そんなことよりも夏だ。 夏が来た。

 裕也、お前が探してる子が居たよ。

 これがお前の言う天壌の必然力なのか?

「俺は秋山あきやま大和やまと。 どういたしまして気にするな、助けた気がしないけどな」

 自己紹介、そして自虐。

 実際、俺がやった事なんて夏霧の後ろを取り(曖昧なぼやかし)、ハンマーに挑んで一瞬で返り討ちにされただけだ。

 自分の実力を思い知った。

「さて、姉ちゃん。 説明してくれよ。 スレッジハンマー創りだしてスレッジハンマーを持ってるとは思えないような速度で動いてたぞ。 いったい何者だよ。 このままじゃ不安で夜もゲーム出来なよ」

「不安ならゲームをやらなければいいだろうに………」

 姉ちゃんに呆れられた、なんか嬉しい。

 姉ちゃんに反応して貰えるだけで一回一回大喜び出来る俺は中々単純なのかもしれない。

「まず説明しよう。 あのスレッジハンマーを創りだした能力、あれを想像武器クリエイトウエポンと言う。 ここまで大丈夫か?」

「………流石天壌市、この認識で問題が無いならな」

「よし、続けるぞ。 あれは精神的外傷トラウマとそれを背負った時に繋がる傷を持つ人間が出来る。 理屈はわからんし、調査してもわからんだろう」

「説明簡単過ぎないか!?」

「姫も出来るぞ」

 ……はい?

「うん、私も出来るよ」

「なんか本当に天壌狂ってるな!」

 なんだ、この不条理感。

 俺、さっき死にかけてたよな?

 あれ実はギャグだったんじゃねぇの?

「じゃあ夏霧も、スレッジハンマーとか出せんのか?」

「呼び捨てるの早くないかな……?」

 いいだろそんぐらい。

 夏霧さんだなんて、呼びにくい。

「私は出せないよ」

「なんだよつまんないな」

「命の恩人になんて言い草!?」

「は?」

 命の恩人?

 助けたの俺だろ。

 いや、だから助けてないけど。

 殺されかけたけど。

 それ以上に殺しかけたけど。

「大和、死にかけてたお前を助けたのは姫の<想像クリエイト>だぞ?」

「そうなの?」

「そうよ、私ほど珍しいのなんて他にいないのよ? 回復の<想像クリエイト>なんて」

「<想像クリエイト>って一人一種類しか出来ないの?」

「ああ、<想像クリエイト>は個人の精神的外傷トラウマの内容で決まる」

 なるほどなるほど。

 木刀なくしたしちょうどいいな。

「で、姉ちゃん。 どうやったら出せるんだ?」

 気楽に聞いてみた。

 その瞬間姉ちゃんは辛そうな顔をした。

 自分の大切な精神の根幹を揺さぶられたような。

 今までの努力が、すべて崩れ去ったような。

 「何を言っているんだ?」

 ここで知らない振りをして、後で夏霧にでも聞いておけばよかったのだろう。

 しかし、それが出来なかった。 頭がボケていたとしか言い様がない、蘇った後だ。

 「だから、俺も多分想像武器クリエイトウエポン出せるだろ? 傷も、精神的外傷トラウマもあるんだから」

「お前はやらなくていい」

 俺の言葉を遮るように言った。

 姉ちゃんにしては珍しく、下を向きながら。

「どう言う事だよ姉ちゃん、出せないとあのハンマー馬鹿にリベンジできねぇぞ?」

「しなくていい」

「なんでだよ」

「お前が、ハンマーと戦う必要は無い。 第一に、私がいなければお前も姫も死んでいただろ」

「………でも。 って、姉ちゃんがハンマーを逃がしたのか?」

 ありえねぇ。

 姉ちゃんが相手を逃がすわけが無い。

「敵がハンマー一人ではなかった。 エリアが混ざっていたんだ」

「エリア?」

「空間製作者だ、人を逃がす事しかできない、一人ではなんにもできない雑魚だ」

 姉ちゃんの口が汚い。

 怒ってるなぁ………。

「でもそれなら、余計俺に教えるべきじゃないか? 姉ちゃんが入れない所でハンマーと戦う事になったら今度こそ俺が」

 死ぬかも知れない。

 そう言おうとした。

 言えなかった。


 姉ちゃんが、泣いていた。


 そして気付いた、俺が今姉ちゃんに言おうとしていた事が。

「お前が」

 いつも通り、泣いていてもいつも通りの口調だった。

「戦う必要は無い。 全て私がやる」

「………でも」

 でも。 なんだ、何が言えるんだ、俺は。

 ひたすら逃げ続けてきた俺が、今一体何を言えるというのだ。

「…………想像武器クリエイトウエポンの発現方法は一つ、武器を、そして自分の精神的外傷トラウマを思い出すことだ」

「!?」

 姉ちゃんは苦々しく言った。

 そして、ようやく理解できた。

 姉ちゃんが何を嫌がっていたのかが。

 俺を、死なせるのが嫌だったのか。

 俺を、戦わせるのが嫌だったのか。

 それも、あるだろう。

 だけど、一番は


 俺に親殺しを思い出してほしくなかったのだろう。


 そのために、戦っててくれたのを俺は知っているのに。

 本当に、何が姉ちゃんを守るだ。

 何時から、なにから、どうやって守られているかも知らないくせに。

「わかったか。 とりあえず、今日は家に帰れ。 そこで私たちの話に置いてけぼりになってる姫と一緒にな」

「……姫の家って近いのか?」

「今日から、家が姫の家となる」

「はい!?」

 どういうこと!?

「朝言っただろ、家に一人増えると。 姫の事だ。 ハンマーの事で色々と不安を抱えているだろう、優しくしてやれ」

「忘れてた……」

 そうだ、そんな話もあったな。

 今日が濃すぎたせいでまったく覚えてなかった。

 夏霧のほうを見ると夏霧も驚いてた。

「季花さん!? 私これから同学年の男の子と一緒に暮らすんですか!?」

「市役所住みはもう人がいっぱいなんだ、受け入れられる所があるなら受け入れてもらうに限る。 姫も、私の家なら良いと許可を出さなかったか?」

「季花さんは一人暮らしだと思っていました! だいたい、同学年と一緒に暮らすなんて貞操が心配です!」

「安心しろ、大和はチキンだからそのような事は万が一にも起こらない」

 精神的に死んだ、たった今死んだ。

 俺って姉ちゃんにそんな風に思われてたのかよ……

「でも……」

「今なら、私の布団を使っていいぞ」

 なにそれ、凄く羨ましい。

「本当ですか!?」

 そして夏霧、どうしてお前そんなに喜んでるんだよ。

 姉ちゃんのファンか?

 俺の敵か?

「ああ、嘘はつかない」

 目の前の光景で混乱している俺に、姉ちゃんは話しかけた。

「じゃあ、よろしく頼むぞ。 私は仕事で今日は帰れん」

「………わかったよ」

 まあ、いいか。

 夏霧には聞きたい事もあるし。

 こんな事があった後で思うのもどうかと思うが姉ちゃんに頼まれるのは嬉しいし。

 二度と、姉ちゃんの涙を見ないためにも裕也の作戦通り夏霧には部活に入ってほしいし。

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