(9)
唐突だが、俺の制服改造について話そうと思う。
いや、そんなに凄い改造じゃない。
俺の学校、天壌高校は古臭い事にも学ランが制服だったりする。
俺の学ランは少しブカブカだ。
太股辺りまで完全に隠れている。
だから俺は、学ランの脇の下からズボンまで、小型だが木刀を二本仕込んでいる。
刀が二本あれば基本負けるはずが無い。
さて、現実逃避をせずに状況を確認しよう。
十字路で女の子とぶつかった。
ここまではいい、謝れば済む問題だ。
問題は、俺が反射的に背後へと周り、首筋に木刀を押し当て、女の子の左手に関節技をかける一歩手前だと言う事だ。
通行人が見たら通報する、俺だったら不審者を殴る。
やべぇ、捕まる。
姉ちゃんに捕まる。
このままの状態で人質にしようかな、この女の子。
「突然なにをするんですか!? 市役所に行くよ!? それより訴えるよ!?」
「ごめんなさい!」
無理だ、拘束し続けるとか無理だ。
精神的に辛い。
拘束されている方が辛くても、拘束する方だって辛いんだ。 ……我ながら、なんて頭のおかしい一言。 亜織のようには行かないな、やっぱり。
とりあえず拘束を解いた。
「あなたはなんて事をするの!? ありえないよ!? 逃走中なのに!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
謝り倒そう、姉ちゃんに報告行ったら困る。
ん?
ちょっと待て。
「逃走中?」
「そうなの、狙われているの! このままじゃ殺されるの!」
…………中二?
「よしわかった、病院に行こう」
有耶無耶にしよう。
ビビらせて変な設定が今出来たんだとしたら姉ちゃんからの処刑は免れようが無いけどな。
「病院なんていったら被害が増えるでしょ!」
駄目だ、言ってる事がわからん。
どうしようもない。
「どこに行きたいんだ? 俺が付き合ってやるよ」
付き合ってやるか、その後逃げるけど。
「市役所に連れてって!」
「嫌です」
ふざけんな。
姉ちゃんがいるだろうが。
「早く! 治安維持室に行かないと!」
「治安維持室!? 今お前治安維持室って言ったか!?」
突然、信憑性が増した。
天壌市市役所治安維持室。
天壌が天壌である要因、不思議な出来事、介入できない警察の代わりに犯罪の捜査、防止。
全てを請け負っている組織だが、どこにでもいる普通の高校生が知れる筈のないレベルで存在の情報自体を隠している。 普通の被害者にだって警察のフリをする。
未知な力で命を狙われている少女ぐらいしか知ることの出来ない名前。
ギャグじゃないのか?
「早く! 追いつかれる!」
「ちょっと待て、事情説明してくれないか?」
「してる暇が無い!」
「最高責任者の電番持ってるから、呼べばすぐ来てくれる関係だから説明しろ」
「季花さんと知り合いなの!?」
初めてまともに話聞いてもらった気がする。
「ああ! 姉ちゃんの愚弟だ。 だから事情を言ってくれ、警護ぐらいならしてやれる!」
初めてなんか考える顔になった。
少し落ち着いたのかな。
「わかった、移動しながら説明するね。 出来れば、一緒に来て欲しいけどお願いできるかな?」
「ああ、請け負ってやる。 市役所までだけどな」
さっき背後を取った人間の言葉じゃない。
それでも、話が落ち着いた。
そう思った瞬間。
「そんな暇は無いな」
古傷が疼いた。
今からが、戦いだと言うように。
逃げ続けてたものに、とうとう追いつかれたように。




